復活3
レナの突然の宣言に、ハンス、アンドレ、エリザが声を揃えて言った。
「「「ダメ!」」」
「そう言われると思ったわ」
ハンスが大きなため息をついて言った。
「元々無鉄砲な性格だとは思っていたけど、ここまでとは思わなかった。君がリエーキへ行ってしまったら、ルイーズはどうするんだい」
「いや、ハンス。こうして相談をする様になっただけ成長したと思うよ」
「そうですわね」
「何よ、三人で人を考えなしみたいに言わないでよ」
話も聞かずに一斉に反対されたレナは、肩を落とした。
「おや、今までなさってきた事を考えれば、そう思われても仕方ないと思いますが」
「エリザ、あなた最近ベルに似てきたわよ」
レナの憎まれ口にも顔色一つエリザは変えなかった。
「それはそうでしょう。私と兄を育てたのはベル様ですから」
「これはエリザの勝ちだな」
アンドレが大笑いした事で、この話は頓挫してしまった。
しかし、エヴァがオクサナと店に戻った事で、店から生活拠点を城に移すべくアルセンがやって来た事で、事態は大きく動いた。
アルセンまでがリエーキに行くと言いだしたのだ。
「アルセンと一緒に行くなら良いでしょ?」
レナは食い下がったが、アルセンに拒否されてしまった。
「今は以前の様なリエーキではありません。私の力は微塵も及びませんし、ジョアンは今も私を追っている。返って危険です」
レナが言い出した時は大笑いをしたアンドレも、流石に難しい顔でアルセンに聞いた。
「その危険な場所にあえて戻ろうとするのは、王の座を取り返すつもりなのか?」
「それはありません。タルメランが来るのを恐れて待つだけなら、自分から行こうと思いまして」
「私もそうなの! このまま指を咥えて、待ってるなんて嫌なの」
「気持ちはわかるけど……」
ハンスはそう行って腕組みをしたまま、考え込んでしまった。
ギードだったら、どうしただろうか。ハンスは自問した。きっとレナと同じ考えだっただろう。しかし、あの時と今では背負っている責務が違い過ぎる。
「二人とも、一人で何とかしようとするのはもう止めよう」
まさかハンスの口から、そんな言葉が出るとはレナには想像もつかなかった。
「ハンス、あなた本当に変わったわね。ああ、悪い意味じゃないわよ」
レンの言葉にハンスは思わず赤くなった。
「それはきっと、守るべき家族と果たすべき責務があるからだよ。私も同じだった」
アンドレは、レナの結婚相手がハンスで本当に良かったと心から思った。何かと勝手に暴走するじゃじゃ馬娘を止める事のできる、最高の相手だ。多少の後ろ暗い過去も、今の情勢では良い経験とも言えるかもしれない。
「この事は、もう少しじっくり話し合って決めよう。先延ばしにするんじゃない、皆で協力するために話し合うんだ」
「きょうりょく……」
アルセンにとって、人とじっっくり計画協力して物事を進める事は初めてだった。しかし、それは一人で立ち向かうよりも心強く、何倍もの力が出せそうな気がした。
ジョアンの城からすこし離れた場所にある小さな城が、タルメランとファビオのリエーキでの拠点となった。しかし、タルメランの殺意の魔力をまともに受けたファビオは、相変わらず意識がないままだった。
このままでは衰弱して死んでしまう。そしてどうやらファビオ自信がそれを望んでいる様にも見える。時間がない。
数日前から城では、ジョアンの寄越したメイドが働いていた。
大して強くはないが魔力を持った少女だ。ただの人間の娘でもファビオは随分と元気になったのだから、今度も元気になる筈だ。
城ではジョアンが母リリーの不機嫌な態度に、ほとほと参っていた。
事の発端は昨夜突然タルメランが現れた事だ。
リリーは大喜びで迎えたが、タルメランの言った一言に凍り付いた。
「間も無くファビオが目覚める。目覚めた後、ファビオは真の魔人国を取り返すべく行動を始める。ジョアン喜べ、お前も仲間にしてやろう。ファビオの配下に付け。良いな」
それだけ言い残し、タルメランは去って行った。
「ジョアン、今タルメラン様は何と仰った?」
「真の魔人国を取り返す、と」
「そこじゃない!」
リリーがイライラと歩き廻り始めた。
「ジョアンをファビオの配下に? 魔人皇族の血を引く私の息子に、ファビオの配下に!」
リリーのプライドはズタズタに切り裂かれていた。その魔人族の王がタルメランである事は、忘れてしまっているようだ。
そして、その怒りの矛先がジョアンに向き始めた。
「ジョアン、何故直ぐに嫌だと言わなかった!」
「母上、言葉を挟み間も無かっではないですか」
ジョアンは一人で考えたかった。
タルメランは確かに、真の魔人国と言った。では、ここリエーキは何なのだ。
次話も、よろしくお願いします。
(タルメランに進言。急いでは事を仕損じる)




