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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
愛しさの19歳
248/271

約束18

 ここを拠点としたのは間違いだったかもしれない。

 まさかここまでファビオが過去への郷愁にとらわれるとは思いもしなかった。もっとしっかりとファビオを説得しておくべきだった。

 一刻も早く、ファビオが何かを決心する前に事を始めなければ。

 タルメランに焦りが生じ始めた。

「ファビオ、我が国を我が手に取り戻した暁には何か一つ願いを叶えてやろう」

 この言葉に多くの魔人達がタルメランの手に落ちてきた。

「レナを妻にしたい」

「そんな容易い事を」

タルメランの笑い声に、ファビオは自己嫌悪に陥った。

 何と馬鹿げた事を。これでは、聞き分けのない子供のようじゃないか。そんな事でレナが自分の妻になる事を受け入れるとは思えなかった。

 レナに会いたい。レナに相談がしたい。本当にタルメランと行動を共にしていて良いのかと。

 城の様子を探ろうにも、鉄壁でもあるかの様に様子が全く伺えない。

「ファビオにも見えんのか」

 タルメランはレナの産んだルイーズの様子が知りたかったが、同じく鉄壁で囲まれているかの様に、知る事は出来ていなかった。

「誰か魔力が強くて使えそうな者を探さなければな」

 タルメランには心当たりの者が居た。


 城に張り巡らせた魔力の壁を突破しようとする魔力がある事に、レナは気付いた。

「ファビオかタルメランが様子を伺おうとしているわ」

 レナの言葉に、カーラが真っ青になった。

「私でルイーズ様をお護りできるでしょうか」

「大丈夫、まだ壁には手すら付けられていないから。それにカーラ、あなたなら大丈夫。ベルのお墨付きだもの」

 そうは言ったものも、今夜にでもハンスに魔力の追跡について話さなければ。慎重にしなければ、追跡する事でこちらの手の内を知られてしまう事もある。


 その夜が明けきらぬ早朝、エヴァは何時もより早く目が覚めてしまった。

 隣室のアルセンはまだ眠っているようだったので、起こさない様にそっと下の店へと降りて行った。


 アルセンが目覚めると、下の店から妙な気配を感じた。

「エヴァ?」

 隣室のエヴァに壁越しに声を掛けたが返事がなかった。まだ眠っているのかもしれない。

 外はまだ薄暗い。こんな時間に何故下から人の気配が? 泥棒か? 

 人間の泥棒程度、アルセンにとっては全く怖い相手ではない。

「誰かいるか?」

 エヴァに怖い思いをさせない様に、静かに退治しなければ。

 キッチンに灯りが点いている。

やはり、エヴァなのか。ここまで来てやっとアルセンは気付いた。部屋にいるにせよ、キッチンに居るにせよ、エヴァの気配がするはずなのに、しない。これは、エヴァが居ないのではなく、魔力を持った者が気配を消しているのだ。

「やぁ、やっと気が付いたかアルセン」

 そこには老人と青年が立っていた。青年の腕の中には、恐怖で目を見開いたエヴァがいた。

「ジャ、ジャン……」

 エヴァが恐怖に震える声でアルセンに語りかけた。

「ジャン、私は大丈夫だから言いなりになってはダメよ」

 懸命に恐怖に耐えてはいるが、声と身体の震えは止まらなかった。

「少し静かにしてもらえんかの」

 タルメランがエヴァを一暼すると、エヴァは声が出なくなった。

 パニックなったエヴァは、ファビオの腕の中で暴れ始めた。

「エヴァ、大丈夫だから落ち着いて。必ず助ける」

 アルセンの言葉にエヴァは大人しくなった。

「さてアルセン。今日はお前を誘いに来たのだ」

 エヴァが、首を横に振り始めた。

 行ってはダメ!

「話なら聞く。だから、その子を離してくれないか」

 ファビオに語りかけたが、ファビオはアルセンから目を背けた。


 アルセンを仲間に入れると聞かされたのは、店の前だった。

「アルセンとは、前リエーキ国王のアルセンですか?」

 タルメランは満足そうに頷いた。

「そうだ。元国王をお前の配下にと思っておる」

 アルセン国王を配下に!

 ファビオの虚栄心が頭をもたげた。しかし、アルセンはジョアンが血眼になって探していたが見つからなかった筈だ。

「行方不明なのでは?」

「なぁに、この店だよ」

「ここは……」

 エヴァの店だった。

次話も、よろしくお願いしいます。

(早くエヴァを助けてあげて!)

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