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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
愛しさの19歳
221/271

誕生1

 アルセンとエヴァが、城に到着したのは、夜も随分遅くなってからだった。

 城の中は昼のように人が行き交い、あちこちで話し声がしていた。

「こちらへ」

 メイドが通してくれた部屋には、アンドレが落ち着かない様子でぐるぐると歩き回っていた。

 エヴァとアルセンに気がつくと、ほっとした表情を見せた。

「アルセン王にエヴァ、よく来てくれたね」

「すみません、こんな時間になってしまって」

 エヴァは未だにレナの父が国王だという事に戸惑いを感じていた。

「いや、来てくれて良かった。何だか落ち着かなくてね。レナの側に居たかったんだが、邪魔だとベルに追い出されてしまったんだよ」

「順調なんですか?」

「それが、ここに居ては分からないんだよ。エヴァ、ちょっと様子を見てきてくれないか?」

「分かりました。持って来たお菓子も渡したいし」

 エヴァは、廊下で待機していたメイドにレナの面会を申し出た。

 直ぐに迎えが来て、エヴァはレナの元へと向かった。


 エヴァがレナの産室に案内されると、部屋の前ではカーラと数名の女達が待機していた。

「どうぞ」

 扉が開き、エリザがエヴァを招き入れた。

一瞬、カーラの時の惨状を思い出し胸が潰されそうな気分になった。あの時の様に、部屋中が血の臭いで充満していたら、耐えられる自信がなかった。ふと、振り返るとあの時瀕死だったカーラは皆に見付からないようエヴァに手を振っていた。

 エヴァも、小さく手を振って部屋の中に入った。


 中の様子は、エヴァが想像した物とは違いレナが部屋の中をウロウロと歩き回っていた。

「レナ?」

 その様子は、先程同じように部屋を歩き回っていたアンドレにそっくりだった。

「エヴァ! 来てくれたのね!」

 部屋にはエリザの他にオクサナとベル、そして城付きの医者がレナの様子を見守っていた。

「歩き回って平気なの?」

「平気も何も、何だかじっとしてられないの!」

 ふと、部屋の隅を見るとハンスがソファで転寝をしていた。

「お菓子持って来たけど、食べられる?」

「もちろん!」

 エリザが受け取り、お茶の準備をしに部屋を出て行った。

「あ、楽になった」

 レナは、やっと足を止めてハンスの隣に座った。

それでも寝ているハンスの姿にエヴァは驚いた。

「ハンス起きないわね」

「そうね、こんな所で寝たら風邪をひくわね。ハンス、起きて!」

 レナの声に、ハンスは飛び上がった。

「産まれた?!」

「もう、まだよ。そんな所で寝られたら気が散るから部屋に戻って寝てちょうだい」

「でも……」

「ベル、ハンスを追い出して」

「承知しました」

「分かったよ」

 ベルに睨まれたハンスは、慌てて部屋を出て行った。

 入れ違いにエリザがお茶とお菓子を運んできた。

「んー! エヴァのお菓子はやっぱり美味しいわ!」

 エヴァが持って来たお菓子は、あっという間にレナの胃袋に収められてしまった。


 暫くして再び陣痛の始まったレナは、部屋をウロウロと歩き始めた。

「時間も遅いですし、お部屋を用意しましたので、そちらでお待ち下さい」

 エリザがエヴァに言った。

「うん、エヴァそうして。お店忙しかったんでしょ?」

 レナにも勧められて、部屋で休む事にしたが、そこはアルセンと二人部屋だった。

「私は他の部屋に行くよ」

 アルセンが部屋を出て行こうとしたが。

「ここにいて」

 エヴァの言葉にアルセンは足を止めた。

 自分が物凄く大胆な事を言った気がしたエヴァは、慌てた。

「ほら、お店じゃゆっく。話も出来ないから、こんな時に話ができてらな、と思って」

 そんなエヴァの様子を、アルセンは愛おしくてたまらなくなった。

「じゃぁ、夕方途中になったエヴァの昔の話を聞かせて欲しい。そして、私の昔の話も聞いて欲しい」

 アルセンは、そっとエヴァの手を取った。

「そうね、そうしましょう」

 エヴァはその手を握り返した。

次話も、よろしくお願いします。

(とうとう始まったレナのお産。男の子かな?女の子かな?)

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