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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
愛しさの19歳
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反撃9

「ハンス先に行って!」

 レナの言葉にハンスはアンドレの執務室へと走った。

 レナは走り去るハンスの背中を追った。しかし、ハンスの背中が城の中へと消えたその時、足がもつれた。


 ハンスが執務室の扉を開けると、アンドレは机に突っ伏した状態で意識を失っていた。

「誰かっ!」

 ハンスの声で、城の灯りが一斉に灯った。


 アンドレは、使用人達の手で運ばれ、寝室で意識を取り戻した。

「昼あたりから目眩がしていたんだが……」

「少しお疲れがたまっていたのでしょう。何日かお休みになれば、良くなります」

 ハンスが、駆け付けたオクサナを見ると、オクサナは『大丈夫』と頷いた。

 やっとその時になって、ハンスはレナの姿が見えない事に気が付いた。

 アンドレに気付かれないよう、そっと寝室を出て、一人東屋の方へ走った。

 庭に出て直ぐに、レナの履き物が片方だけ転がっているのを発見した。


 直ぐに霊安堂、地下、ありとあらゆる場所を探したが見つからず、朝になってもレナが戻ることはなかった。

「タルメラン王でしょうか……」

 エリザが唇を噛んだ。

 何故何も気付かなかったのか。自分は王室の方々を守る為に城に居るのに。もし、兄だったら防げた事態なのかもしれない。

「エリザが責任を感じる事はないよ。直前まで僕がそばにいたんだ。あの時、レナを一人にするんじゃなかった」

 レナを守れなかったハンスも、エリザと同じ気持ちだった。

 昼になっても、レナの居場所を突き止められなかった。


 お腹空いたわ、朝食はまだかしら。

 レナは空腹で目が覚めた。

 ふと無意識にお腹に手をやって思い出した。確か庭で転びそうになって……。

 慌てて起き上がると、そこは見た事もない部屋だった。

「ここはどこ……」

ベッドから降り、窓の外を確認しようとした。

「お目覚め?」

 扉が開き、ファビオが面白そうに笑いながら入って来た。

「ファビオ?!」

「久しぶりレナ」

 抱き締めようとするファビオの腕から、後ずさって逃げた。

「そんな足元も確認しないで動くと、また転ぶよ。ああ、そのお腹じゃ足元も見えないか」

 ファビオは、レナを気の毒そうに見た。

「ファビオ、ここはどこ? 私に何をしたの?」

 レナのきつい口調に、ファビオは心外とばかりの表情になった。

「酷いな、そんな言い方。転びそうになった君を、俺は助けたっていうのに。ここは、母さんの部屋だ」

「じゃぁ、ここはファビオの家なのね」

「そうだよ。レナも来た事があったね」

「ええ。本当に助けてくれてありがとう。じゃ、私は城に戻るわ」

 レナが部屋から出ようとすると、ひとりでに扉が閉まり何をどうしても開かなくなってしまった。

「ファビオ、開けて頂戴」

「駄目だよ。開けたら城に戻ってしまうんだろ? 何の為にここに連れ出したか分からないじゃないか」

 ゆっくりと近付いてくるファビオに、恐怖を感じた。

「怖がらないでレナ。どうして怖がるんだ。あんなに愛し合ったじゃないか」

「そ、そうだけど」

「俺は強くなって戻って来た。君を迎えに来たんだよ」

 レナは、ファビオに抱きしめられてしまった。

「邪魔なだね。これ。出してしまおうか?」

 ファビオは、レナの大きなお腹を指差した。

「何を言ってるの?」

「ごめん、冗談だよ。でも、今の俺なら何でも出来る。魔力、ずいぶん強くなっただろう?」

 レナも気付いてた。

 ファビオの魔力は以前とは比べ物にならないほど強くなっている。もしかするとレナよりも強いかもしれない。レナがファビオに恐怖に感じたのはこの魔力せいだった。

「そうね……」

「本当に大きなお腹だ」

 やっとファビオから解放されたレナは、力なく先程まで寝ていたベッドに腰掛けた。

「帰らせて。お願い」

「駄目だ」

 ファビオも、レナの隣に座り、レナの腰に手を回した。

「レナの腰からお尻のラインが美しくて好きだったのに。そのお腹の物はいつ出てくるの?」

「そんな言い方しないで」

 レナは、ファビオの手を振り払おうとしたが、腕を掴まれベッドに押し倒されてしまった。

次話も、よろしくお願いします。

(ファビオ何か変わっちゃったね。動物好きの好青年だったのに。力は人を変える)

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