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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
愛しさの19歳
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反撃8

 レナは夢を見た。

 身体が軽くあれ程辛かった腰痛も消えていた。無意識にお腹に手をやると、膨らみが消えていた。

「え?」

 すると、手に小さな手が触れた。

「産まれたのね!」

 その手の主を抱き上げようとするが、どうにも重くて持ち上がらない。顔を見ようとしても、何だから薄暗くてよく見えない。

「レナ、やっと迎えに来たよ。思ったより早く来れた。ほら、その子から手を離して」

 ファビオの声だ。

「駄目よ。この子の手は離せないわ。私の子だもの」

「何言ってるんだい。その子はタルメランに差し出すんだろ? だった、今その手を離しても同じだよ」

 薄暗い中、もう一本手が現れた。

 ファビオの手だ。

「ほら、レナ。僕の手を取って!」

 ファビオの手がレナの手を掴もうと迫って来る。

 この子を守らなければ!

 レナは、子供の手を掴んだまま走り出そうとするが、子供が頑として動かない。

「逃げなきゃダメなの。私と一緒に逃げるのよ!」

 レナは姿のはっきりしない子供に向かって叫んだ。すると、今度は子供がレナと手を繋いだままものすごい勢いでファビオの手から逃れるように走り出し、レナの腕は紙切れのように千切れてしまった。

「!!」

 驚いて手を見ようとして、目が覚めた。

「どうしたのレナ。腕を眺めて。何かあった?」

 まだ外は薄暗く、レナが突然腕を上げたのでハンスが驚いて目を覚ましてしまったようだ。

「ああ、ごめんなさい。起こしてしまったわね。ちょっと夢を見ただけよ。大丈夫」

 レナの言葉にハンスは再び眠りに落ちたが、レナは眠ることが出来なかった。

 今の夢は何?

 お腹はわざわざ確認するまでもなく、幸せの重さを感じられた。

 嫌な夢。

 ハンスの腕にしがみつくように眠ろうとしたが、結局日が昇るまで目は冴えたままだった。


 眠れなかったせいか、身体がいつも以上に重く感じ朝食に食堂へ向かうことすら億劫だった。

 何とか辿り着きはしたが、何時もの半分も食べられなかった。

 とにかく、横になっていようとベッドに潜り込むと、レナの様子を心配したオクサナがレナの診察にやってきた。

「顔色が良くありませんね」

「夜中に目が覚めて、それから寝れなくて」

「何か心配事でも?」

「挙げればきりがないわ」

「それはそうですね。お子様に変わりはないです。王子様か王女様か、知りたくありませんか?」

「ダメ。産まれてくるまでダメなの」

 レナは慌ててオクサナに釘を刺した。


 オクサナと話をしたからか、夢から時間が経ったから気持も落ち着き、少しゆっくりと夢も見ず眠る事が出来た。

 心配したハンスが職務の合間に様子を見に来たが、気持ちよさそうに眠るレナの姿に安心して部屋を出て行った。

 しかし夜になると、また妙な夢を見て目が冴えてしまう。

 いっその事、眠れないなら寝ようとしなければ良いんだ。

 レナはハンスが眠ったのを確認して、庭に出た。

 とても月の大きく明るい夜で、東屋に座ったレナは夜風に吹かれていた。

 ここからは少し遠いが父アンドレの執務室が見える。まだ窓から灯りが漏れている。

「お爺様は、まだお仕事のようね」

 お腹に話し掛ける事は、すっかり日常になっていた。

 月を眺めているうちに、少し眠くなったレナは部屋へ戻ろうと歩き出すと前方からハンスが走って来た。

「レナ!」

「あらハンス、起きちゃったの?」

「目が覚めたら君がいないから驚いたじゃないか!」

「ごめんなさい。眠れないから、月でも眺めようかと思って」

「そんな時は、僕を起こしてくれれば良いから、こんな夜遅くに一人で出歩かないで」

「そうするわ。でも、お父様、こんな時間までお仕事なのね」

 レナがアンドレの執務室を見上げた。

「おかしい。いくら何でもこんな時間に……。行ってみよう」

 レナとハンスは、灯りがついたままのアンドレの執務室へと向かった。

次話も、よろしくお願いします。

(レナの出産が近づいているというのに。今度は何?)

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