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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
愛しさの19歳
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転機3

 薄汚れた姿でアリサが家に現れた日から、ファビオはアリサをメイドとして家に住まわせていた。

 宮殿の王室からの命令に背き、マルグリットと共に親子と偽りコサムドラへ行ってしまったアリサは、宮殿付きのメイドの職を解かれていた。

「両親も私を恥晒しと言って、家に入れてくれませんでした」

 ファビオは、アリサを不憫に思った。

 もし、母マルグリットのメイドとしてこの家に送り込まれなければ、こんな目に遭う事もなかっただろうに。

 自分と歳の近いメイドと生活をするのは少し抵抗はあったが、このままではアリサが路頭に迷ってしまう。いや、既に迷っている。

 自分が手を差し伸べるべきだ。それに、母の事故の様子も聞きたかった。

「申し訳ありません。私、あの時の事は本当によく覚えていなくて」

 アリサも、懸命に思い出そうとしてくれている。

 それに、ファビオにはアリサの自分に対する気持ちが見えていた。

 悪い気はしない。

 父も母も亡くし、愛するレナは他の男の妻になり子供を産もうとしている。

 天涯孤独とは自分の事だと自嘲する日々の中で、思いを寄せてくれるアリサの存在は、ファビオにとっては救いだった。

 少し休みを取っていたスヴェンも戻って来て、仕事上でも心強くなった。


 レナは乳母をしてカーラに決定して欲しいとベルに懇願したが、あっさりと却下されてしまった。

「どうして?」

 カーラなら、力は弱いとは言え夫エリック共々魔人だし、ついこの間子供を産んだばかりなのに、他に何の問題があると言うのかレナには全く分からず、とうとう拗ねてしまった。

「お子様が生まれた時、カーラから乳が出なくなっていてらどうするんです?」

「え、そんな事もあるの?」

 思わぬ理由だった。

「勿論ですよ。子供を産んだからと言って乳が出るとは限らないし、今出ているからと言って、先も出続けるとも限りませんよ。こればっかりは誰にも分からないのです」

「そうなんだ」

「ええ、ですから乳母は、お子様が産まれてから乳母候補の乳を含ませ飲んでくださるかどうかで決まるのです」

「じゃ、今候補にした五人全員のおっぱいをこの子は飲む事になるの?」

 レナは、何だか複雑な気分になった。

「いえ、候補の順位で一人目の乳をお子様が飲めば、一人目に決まります」

「一人目のおっぱいを飲まなければ……」

「二人目ですね」

「じゃぁカーラは一番目の候補にしておいて!」

「それは勿論」

「何だか簡単じゃないのね、乳母を決めるのって」

「それはお子様の成長に関わる事ですからね。当然です」

 やっぱり、母アミラの様に城を出て街で産むという選択肢も用意しておくべきだった。レナは後悔した。街で、こっそり産んで育てれば良かった。

「ダメですよ。アミラ様と同じ事をしようとするのは」

 ベルにはレナの考えている事が筒抜けだ。

「ねぇ、ベルも魔人なんじゃないの?」

「レナ様の考える事くらい、お生まれになった時から見ておりますからね。分かりますよ」

 ベルに睨まれてしまった。

「ねぇ、ベルはお父様の乳母だったんでしょう? 何番目だったの?」

 一瞬ベルの目が泳いだのをレナは見てしまった。

 聞いてはいけない事を、聞いてしまったのかもしれない。

「ルイーズ様は一番目にと仰ってくれたのですが、私は自分の産まれた息子を死なせてしまっていたので、本来なら候補にすらなれないのですが、五番目に」

「そうだったの……」

 突然ベルが誇らしげな顔に変わった。

「でも、アンドレ様がお飲みになったのは私の乳だけでした」

「あら! ベルのおっぱいは美味しかったのかしら?」

「今度アンドレ様にお尋ね下さい」

 そんな事を聞かれても、アンドレが困ってしまうだけだ。

 二人は困り顔のアンドレを想像して、大笑いをした。

 とても長閑な、天気のいい日の午後だった。


次話も、よろしくお願いします。

(そうかぁ、そうだよなぁ)

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