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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
愛しさの19歳
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転機2

 リエーキでは重要職者会議が紛糾していた。

「王、何か仰って下さい!」

「王のご指示が無ければ我々は動けません!」

 口々に重要職者達がアルセンに詰め寄っていた。

 突然、アルセンが立ち上がると詰め寄っていた重要職者達が悲鳴を上げて後ずさった。

「何も怖がる事はない。これでは会議にならない。先ずは議題から決めなければならない」

「はい、ですからその議題を王に決めていただかないと!」

 若い重要職者のジョアンが叫んだ。

 アルセンはため息をついた。

 この重要職者会議はいつから機能しなくなっていたのだろうか。

 国は安泰。そう思い込んでいた。しかし、なんの機能もしていなかった。

 他国の公式行事に参加などした事がなかったアルセンが、国を離れた隙に暴動は起きてしまった。ところが、重要職者会議はただアルセンの帰りを待つだけで何一つ対応できていなかった。

 これまでは国政に関わる全てをアルセンの魔力で行っていた。それが当然の事だと思っていた。

 先ずは重要職者会議から変えていかなければと、行動に移したものの、機能しなくなって久しい彼らを変えるのは容易ではなかった。


 亡き父の職を継ぎ、ジョアンが重要職者会議に出席するようになって二年。

 最初は、ただ国王のご機嫌伺いと、子供の使いの様なこの仕事に驚き戸惑った。しかし慣れとは恐ろしいもので、ここ二年で疑問にすら感じる事も無くなってしまっていた。

「国王の様子がおかしい」

 そう聞いたのは、ここ最近の事だった。ムートルへ侵攻した後、国民の流出が相次いだ事に衝撃を受けたからだと思っていたが、もしかすると国王は、この国を変えようとなさっているのかもしれない。

 ただ何もしない事に慣れきったジョアンは、リエーキという国の未来に不安と期待で胸がいっぱいになった。


 アルセンの手紙には、国の体制を大きく変えたいので、若い重要職者をコサムドラの王室で勉強をさせたいと旨が書かれてあった。

「アルセン王は何をする気でしょうか」

 ハンスは手紙をアンドレに返した。

「分からない。ここ最近の行動を見ると、何かおかしな事をしようとしているとは思えないが……」

 アンドレも判断に困っていた。

「急な話ですし、一度会議で議題に上げてから、私がアルセン王に直接話を聞きに行くというのはどうでしょうか」

 ムートル侵攻の事を考えると、会議でも一筋縄では行かないのは目に見えている。

「そうだな。ハンスに任せよう」

「ありがとうございます」

 アルセンが絡むと難題ばかりが持ち上がる。

「ただ、レナの出産時にはカーラの時に駆け付けた医者をお願いしたいと思っているから、出来る限り穏便に話を進められるよう、私も事前に動いておこう」

「そうですね。よろしくお願いします。それと、この事をレナには……」

「どこからか嗅ぎ付けて面倒な事になるなら、初めから話しておいた方がいいだろうな。ウチの姫様はおてんばだかね。レナの暴走には、この数年振り回されてばかりだ」

 アンドレは笑って言ったが、ハンスは今しかないと思った。

「あの!」

「どうした?」

「私は、そのレナを誘拐したりと……」

「ああ、その事か。あれはギードと言うならず者の仕業だよ。ハンス王子には無関係だ。それに、レナ本人が自分が付いて行ったと言っていたしね。本当に困ったものだよ、怖いもの知らずで」

「本当にそれでよろしいんでしょうか」

「良いから結婚したんだろ? それとも、今にも産まれてきそうな子供も放棄して牢に入るかい?」

 ハンスはこの義父に生涯の忠誠を決めた。


 ハンスが寝室に戻ると、レナが難しい顔をして書類を見ていた。

「どつしたの、そんな難しい顔をして」

「んー、この中から乳母候補を五人選ばなくちゃいけないの」

「なんか意外だな」

「え? 何が?」

「レナは乳母を断ると思ってたんだけど」

「んー、そうなんだけどね。タルメランの事もあるし、念の為に選んでおいた方が良いと思って」

「縁起でもないこと言うなよ」

 ハンスは急に不安になりレナを抱きしめた。その弾みで、レナが持っていた分厚い書類の束が床に散らばった。

「ちょっとハンス。書類がしわになるわ」

「レナ、何処にも行かないで」

「こんな身体で何処に行くっていうのよ」

 レナは笑って誤魔化したが、ハンスが何かを悟ってしまったのではないかと心配になった。計画は曲げられない。

「あら」

 床に散らばった書類の中の一枚にレナの視線が止まった?

「ん? 何?」

「あれ、カーラよね」

 ハンスが魔力でフワリと書類を一枚に浮かせて手に取った。

「夫の名はエリック……うん、間違いない」

「私、乳母はカーラが良いわ!」

「そうだね。カーラなら、僕も安心だよ」

「ベルにお願いしなくちゃ」

「うん」

「ところで、いつまでこうしているの?」

 ハンスの腕はまだレナを抱きしめていた。ハンスはそのままレナを抱き上げて、ベッドまで運んだ。

「どうしたの?」

「なんでもないよ」

 そう言いながら、ハンスはレナの隣に横になりレナの服を脱がせ始めた。

「ちょっとハンス……」

「ダメ?」

「ダメとは言われてないけど……。お腹に負担にならなければ……」

 ハンスが、レナにキスをした。

 今度はレナがハンスのシャツを脱がせ始めた。

「レナに大事な話があったんだけど、後にしよう」

 ハンスは、母になりつつあるレナの身体に夢中になった。

次話も、よろしくお願いします。

(お腹の赤ちゃん、びっくりしちゃわない?)

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