表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/271

試される時3

 カーラの産んだ男の子は、ピエルと名付けられた。

「レナ、良い加減にしないとピエルがレナの事をお母さんだと思ってしまうよ」

 ハンスが心配する程レナはカーラの元に通いつめていた。

「カーラはもう直ぐピエルを連れて家に帰ってしまうのよ? こうして居られるのも今のうちだけなんだから」

 出産時、瀕死になったカーラだったが、ここ最近はすっかり元気になり、自分達の家へ帰る事になっていた。

「それに、私本当にする事が無くて……」

 今のレナは集中力が続かず、本を読むことすらままならない。

「子供を身籠るって、本当に大変ね」

 そう言ってレナは大きな欠伸をした。

「ほら、また眠くなってきたわ」

 ハンスも、今日は会議もなくレナとのんびりと部屋で過ごしていた。

 レナがベッドに潜り込むと、ハンスも隣に潜り込んできた。

「あら、ハンスもお昼寝?」

「僕は眠くはないけどね。レナと居たい」

 そっとレナの髪に触れた。

「本当にギードの頃とは別人ね」

 眠気に耐え切れずレナは目を閉じたまま笑った。

「どちらが本当の僕なのか、未だに悩むことがあるよ」

「どちらも本当の貴方よ。そして、もう直ぐまた別の貴方が現れるわ」

「え?」

 レナば目を開けてハンスの顔を覗き込んだ。

「ハンスお父さん」

「そうだった。でも、ちゃんとした父親になれる自信がないよ」

「あら、私は無事に産む自信がないわよ? ああ、もうダメ眠くて仕方がないわ」

 レナはハンスに抱きつくようにして、あっという間に静かな寝息を立て始めた。


 ハンスの元にスヴェンから手紙が届いた。

 レナが心待ちにしていた手紙だ。それが恋敵ファビオの事なのが、少しハンスを不安させる。

 手紙に目を通すハンスの隣で、レナが不安そうな顔でハンスの様子を探っている。

「そんな顔をなくても大丈夫。ファビオはマルグリットさんの葬儀の後、一生懸命仕事をしているって」

「あの秘密はまだ知らなさそう?」

 あの秘密。

 ファビオの父親のことだ。ファビオの父親はマルグリットの夫ではなく、魔人村で何百年と生き延びているタルメラン王だと言うのだ。

 正直レナもその事については、まだ信じ難いと思っていた。

「どうだろう、ファビオが知っているのかは分からないけど、兎に角、普段と変わりないみたいだ」

「そう。大おば様は?」

「変わらずみたいだよ」

 レナはマルグリットの死について、カリナに聞きたい事が山のようにあった。

「ハンス、貴方はマルグリットさんの死について、どう思ってる?」

「それは、カリナ様が仕組んだとレナは思ってるって事かな?」

「うん……」

「僕もその可能性は否定できないと思ってる」

「このままファビオは何も知らずにいる方が幸せかもしれないわね」

「そうだね……」

 知り過ぎている二人は、思わず黙りこくってしまった。

「もし、ファビオが色々な事を知ってしまったら、どうなるのかしら」

「僕には分からないよ……」

 ハンスは幼い頃に馬車の事故で父と育ての母親を亡くしている。その事故の真相も未だ分からないままだ。

 もしあの事故を誰かが仕組んだのだとしたら。

 獣が生息する森の中、冷たくなって行く両親の側で過ごした恐怖の時間。ふとした時に、そう今のような時に、あの森の中に引きずり戻されてしまいそうな感覚に襲われる。

「ハンス? 大丈夫?」

 レナが様子に気付きハンスの手を取った。

「ああ大丈夫、何でもないよ」

 何時も闇に飲み込まれそうになると、助けてくれるのはレナだ。

「あっ!」

 レナが急に大きな声を出した。

「なに、どうかした?」

 ハンスが慌てると、レナはハンスの手を自分のお腹に当てた。

「え? あ、動いて……る」

「うん! ベルがそろそろ動き出す頃だってだって言ってたのよ!」

「凄い!」

 ハンスは明確に自分の守るべき家族が、ここに確かにいるのだと初めて実感した。

「名前を考えなきゃな」

 手に伝わる幸せな動きに、ハンスの心は浮足立った。

次話も、よろしくお願いします。

(レナとハンスの、ラブリーな時間でしたね)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ