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代償19

 城中は数日前から大騒ぎで準備が進められ、父アンドレも婚約者ハンスも遅くまで準備をしていた。

「私にも何か手伝わさせて下さい」

 アンドレに直談判したレナだったが、あっさりと断られてしまった。

「レナには、王家の子供を宿すと言う何よりの大仕事をしているじゃないか」

 そう言うアンドレの顔は、緩みっぱなしだ。


 迎えた婚姻の儀の朝。

 城の中は昨夜までと違って、静まり返っていた。

 後は、来賓と招待客を迎えるだけ。

 レナが目を覚ますと、いつ部屋に戻ったのかハンスが隣で眠っていた。

「おはよう、ハンス。昨日も遅かったのね」

「おはよう、レナ」

 ハンスは時計を見て慌てて準備をし始めた。

「どうしたの、ハンス。まだ早いわよ?」

「今日は違うんだよ。朝、二人は別々の部屋から出なきゃいけないんだ」

「ああ! そうだったわね!」

 レナも思い出した。

 婚姻の儀の朝は、花嫁花婿それぞれ別々の部屋から出てくるところから始まる。

「ベルとエリザに見つかる前に部屋に戻らないと」

 ハンスは、着替えもそこそこに慌てて部屋を出て行った。

 レナは、ベルがドレスを持って部屋にやってくるまで眠っていて良いと言われていた。

「もう少し寝ましょうね。今日は一日忙しくなるわよ」

 レナは、ハンスの温もりの残る布団に潜り込んだ。


 廊下から聞こえる人の行き交い気配で、再びレナは目を覚ました。

「レナ様、ご準備を始めましょう」

 ベルがドレスを持って入ってきた。

 レナはベルの腕の中にあるドレスを見て溜息をついた。

「本当に綺麗なドレスね」

 ドレスの裾がとても長く、婚約の際に着たドレスとは比べ物にならない。

 母アミラも、このドレスを着てコサムドラに嫁いだのだ。

 エリザもやって来て、レナの本格的準備が始まった。


 レナの準備が整う頃、城には来賓と招待客が続々と到着し始めた。

 来賓にはアルセン、招待客にはエヴァの姿もあった。

 会場は儀式の開始を待ちかねた人達の熱気で暑いほどだった。

 既に会場で、レナの入場を待つハンスは、ベルに言われた通り汗をかかないように、細心の注意を払っていたが、なかなか容易い事ではなかった。

「ほら、汗を拭くといい」

 ハンスの隣では、ブルーノが涼しい顔で立っていた。

「兄さんは暑くないのですか」

「私は主役じゃないからね」

 ブルーノが苦笑いをした。

 その時、会場の扉が大きく開かれた。

 静まり返った会場に、アンドレに手を引かれたレナが入って来ると、その美しさに会場からため息が漏れた。

 会場の一番後ろでは、ベル、クリストフ、エリザ、エリックが隠れるように立っていたがレナが直ぐに見つけ微笑みかけた。

「本当にお母さまそっくりで……」

 ベルが涙を拭うと

「ええ、本当に……」

 エリザはため息をついた。

 エヴァは、レナの姿に目を奪われ、アルセンはそんなエヴァを見ていた。

 大勢の来賓と招待客の間を静かに進み、アンドレとレナはハンスの元にたどり着いた。

 来賓の最前列には、ルイーズが既に涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。

 コサムドラ王室では、儀式の進行は王室の最年長者が行う決まりになっていた。

 アンドレは握っていたレナの手を、ハンスに差し出した。

 ハンスは慌ててレナ手を受け取ろうとするが、その手にはブルーノから借りたハンカチが握られており、慌てたハンスの様子は会場の笑いを誘った。

 たまらずレナも笑い出すと、ブルーノがハンスの手からハンカチを奪い取り、ハンスはやっとレナの手をアンドレから受け取ることができた。

 それを合図に、進行役のルイーズが、ハンスとレナの前に歩み出た。

「では、誓いの指輪を」

 ルイーズが差し出した二個の指輪は、コサムドラ王室に代々受け継がれてきた指輪のうちの二個だ。

 先ずは、王室血族のレナがハンスの指に、続いてハンスがレナの指に指輪をはめた。

 ハンスがレナの指にはめた指輪は、アミラがはめていた指輪、レナがハンスの指にはめた指輪は、ルイーズの亡き夫がはめていた指輪だ。

 これが婚姻の儀である。

 会場に拍手が沸き起こった。

 その拍手に追われるように、ベル、エリザ、クリストフ、エリックは会場の外に飛び出し、それぞれの持ち場に戻った。彼らの大仕事はこれからなのだ。来賓への披露宴。来客の送り出し等々、今日は日が変わるまで仕事に追われるのだ。

 ハンスとレナは、拍手の中会場を後にし、バルコニーに向かった。

 庭には、二人を一目見ようと庭に集まった民が、今か今かと待っていた。

 先ずはハンスが、そしてレナがバルコニーに登場すると、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。

次話も、よろしくお願いします。

(あえてドレスの色は書かなかったのですが、やっぱり白ですよねぇ)

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