代償13
レナは友人を迎える準備をしていた。
「皆さま、お着きです」
「え? 皆さま?」
メイドがカーラの到着を知らせてから数分後、何だか賑やかな話し声が聞こえてきた。
カーラの声だけではない、この声の主は……、
「エヴァ!」
部屋を飛び出したレナは、アルセンの姿を見て足が止まった。
何をしているの?
リエーキに帰ったんじゃないの?
レナが言葉に出そうとした。
「カーラの家にエヴァとエヴァのお友達のジャンがおりましたので、一緒に連れてまいりました」
レナの様子に気付いたエリザが慌てて、レナに状況を説明した。
カーラはアルセンに会った事があるはずなので、アルセンの素性を知らないのはエヴァだけと言うことだ。
「ど、どうぞ部屋に入って!」
なるほど、これは面白い事になりそう。
落ち着きなくキョロキョロしているアルセンを見て、レナは何だか楽しみになっていた。
エヴァ特製新作桃のケーキを食べた後、レナは子供部屋の相談にカーラとエヴァを連れて行った。
「ではジャンに城を案内いたしましょう」
アルセンはエリザのお陰で、若い娘たちから逃れられる事が出来た。
「ありがとう、助かった」
アルセンは冷や汗までかいていた。
「いえ、私が城にお連れしてしまったので」
エリザが冷たい水を運んでくれた。
「エヴァの事、本気なのですね。気持ちはお伝えになりましたの?」
驚いたアルセンは危うくグラスを落とすところだった。
「そんな事! 出来るわけが……」
「あら、意外と意気地なしですのね」
「なっ……!」
アルセンは返す言葉が見つからなかった。
慌ただしい足音がレナの部屋の前で止まって扉が開いた。
「エリザ様!」
若いメイドだった。
「足音! それにノックもなしに入るなんて無礼ですよ」
「申し訳ありません。花嫁の間でカーラが!」
次の瞬間にはエリザは部屋を飛び出し、アルセンもその後を追った。
カーラの陣痛が始まってしまい、空いている部屋に、カーラの出産準備が整えられた。
知らせを聞いたエリックも、駆けつけたが何が出来るわけでもなく、ただオロオロとしているだけで、とうとうベルが部屋から追い出してしまった。
「さぁさぁ、男の人は部屋から出て行ってください。ここは女の戦場になりますから」
出産経験のあるベルは余裕の笑顔だが、痛みに耐えるカーラをただ見守るしかなかった。
「ほらほら、エヴァもレナ様も、先は長いですから、お部屋でお待ち下さい」
「え? 産まれるんじゃないの?」
レナは、今直ぐにでも生まれるものだと思っていた。
「いいえ、これから何時間もかかりますよ。おや、御自分も御懐妊だと言うのに、そんな事もご存知ないとは、お渡しした本を読んでおられませんね。お部屋に戻って、エヴァと二人でお読みになったらよろしい」
こうして、レナとエヴァも部屋から追い出されてしまった。
「レナ、私カーラの赤ちゃんが産まれるまでここに居たいわ」
「勿論いてちょうだい。ジャンにはお部屋を用意させるわ」
レナとエヴァは、レナの部屋へと向かった。
レナはベルから渡された本をどこに置いたのか忘れてしまい、探すのに三十分程かかってしまった。
「あった! 出産を控えたご婦人へ、ですって。これ何十年も同じ本を使ってるわよ絶対」
「そうね」
最初は真剣に読んでいたのだが、段々と飽きてしまった。
「ねぇエヴァ。ジャンって、どんな人?」
「そうね、優しいわよ。とても気遣いをしてくれるの。ジャンの国には珍しい果物が多くて、それをケーキにするのが、すごく楽しいわ」
「そう、良さそうな方ね」
まさかリエーキ国の国王で、しかも魔人だとは夢にも思ってないんだろうな。しかも、結構な性格をしている。何だか私までエヴァを騙しているみたいで、複雑だわ。
「でも、少しおじさんね」
エヴァがそう言って笑った。
次話も、よろしくお願いします。




