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代償12

 会える人には会って、尽きる程話がしたかった。時間は思っている以上に過ぎるのが早い。

 先ずは母アミラだ。魔力を使う事は可能な限り避けているが、コレだけは使わないと話すら出来ない。


「ママ……」

 レナが柩に触れると、アミラが姿を現した。

「レナ、何かあったの?」

母がこの世を去ってから初めての再会だったにもかかわらず、母は驚く事なくつい先程まで一緒にいたかの様にレナを見た。

「うん」

 レナは、少し目立ち始めたお腹を母に見せた。

「まぁ! レナ!」

「ふふ、ママはお婆ちゃんね」

「この手で抱きたかったわ……」

「私もよ、ママ……」

 アミラの頬には涙が伝っていた。


 本当は聞きたい事が山の様にあった。

「今日はダメよ。ここはとても冷えるもの。出産を終えて、身体が落ち着くまでは、もう来てはダメ」

 アミラは、それだけ言って柩に戻ってしまった。

「ママ……」

 確かに、ここは寒い。慌てて霊安堂から出た。

 外の空気は暖かく、レナの冷えた身体を一気に温めてくれた。

「寒かったね。ごめんね」

 レナはお腹に話しかけた。

「ん?」

 お腹の中で何かが動いた気がした。


 ベナエシのルイーズから大量の荷物が届いた。

 レナの懐妊と婚姻の儀の前倒しを知らせる早馬に、レナはベナエシにあるカリナの集めた本を送って欲しいと書いておいたのだ。

「それにしても、大量の荷物だね」

 カリナも驚く程だった。

 メイド達が大騒ぎをして荷を解くと、本は五十冊程で後はルイーズからの贈り物だった。

 中には大量の薬草もありベルを喜ばせた。

「ベナエシにしかない薬草ばかりですよ。早速いただきましょうね」

 ベルはウキウキと薬草を抱えて行ってしまったが、レナはまたあのとんでもない味のお茶を飲まされるのかと思うと、逃げ出したい気分になった。

 知らせを聞いたアンドレもやって来て、荷物を見て渋い顔をしている。

「どうかしたの、お父様?」

「母から届いたあのおもちゃたけど」

「ええ」

「私が用意するつもりだったのにっ!」

 アンドレは本気で悔しがっている。

 この様子だと、子供部屋にレナが準備するおもちゃは必要なさそうだ。

 では、この子に何を残してあげられるか……。

 まだ時間はある。ゆっくりと考えよう。あの五十冊程の本も読まなければ。

 レナは本はレナの部屋に、おもちゃは花嫁の間に運び込む様に伝えて部屋に戻った。


 カーラが城へ来る日。

 エリザは、ベルが手配した馬車でカーラを迎えに出掛けた。

 エリックとカーラの家は城のすぐ側なのに、わざわざ馬車を用意した意味を、カーラの姿を見てエリザは悟った。

「まぁ、カーラ。いつ産まれてもおかしくないわね、そのお腹!」

「そうなんです」

 カーラは笑って答えた。

「ごほん」

 ワザとらしい咳払いが聞こえたので見てみると、何とエヴァと一緒にアルセンがそこに居た。

「ア……」

 アルセン様! と叫びそうになるのを、何とか止めた。

「エリザさん、こちらはエヴァのお友達のジャンさんよ」

 何とかカーラがその場を取り繕ってくれた。

「は、初めましてジャン。私は城のレナ様付きのメイドエリザです」

「うむ、ジャンだ」

 アルセンも、動揺が隠し切れていない。

「エヴァは新しいお菓子を持って来てくれていたのです。一緒にお城に上がってもよろしいかしら。きっと、レナ様もお喜びになるわ」

 アルセンの目が『断ってくれ』と叫んでいたので、エリザは決めた。

「勿論ですわ。エヴァが一緒ならレナ様も大喜びなさいます。ジャン、あなたも是非」

「じゃ、この桃のケーキをレナに持って行きましょう!」

 エヴァも大喜びしているのに、行かないとは言えず、アルセンはジャンとしてレナの前に行く羽目になってしまった。


 ベルの用意した馬車はステップが低く、大きなお腹で足元の見えないカーラでも登る事が出来た。

 これが普通の馬車だと、誰かがカーラを抱き上げるか後ろから押し上げるかしないと乗れないところだった。

 私もいつかこんなお腹になって母になるのだと思っていたけど、そんな日が来ることはなかったわね。

 エリザは、ふと人生の人生を振り返っていた。


次話もよろしくお願いします。

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