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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
147/271

猛進の先12

お越しいただき、ありがとうございます。

 当時まだ幼かったアルセンの父セルゲイが国治めの挨拶にベナエシにやって来たのは確か、リエーキがセルゲイとその父に攻め落とされ翌年だったか。

「リエーキ国王の代理として、ご挨拶に参りました」

 当時のベナエシの国王は義父だったが、夫と共に同席したカリナには直ぐに分かった。

 ベナエシの新しい王の息子は魔人だ。

 勿論大した魔力では無いが……。

 おそらく相手もカリナが魔人である事は、気付いた筈である。

 あの後会ったのは、アルセンが産まれた時だ。あれが最後だったのか。


 流行り病で国王に妻、後を継いだセルゲイ夫婦も何年もしない間に流行り病で続き、まだ二十歳にも満たなかったアルセンが王になたっとは聞いていた。

 まさか、アルセンが父と母を殺していたとは。自分の親を殺すなど、言語道断。

 いや、自分もそう大して変わりはないか。自分の中で芽生えた命を、自分の手で殺したのも同じだ。しかも、父の命綱を村へ送り込まなかった。父がどうなるのか、ある程度の予想がついたのに、だ。

 村が襲撃にあい、全滅したと聞いた時には心底ほっとした。だが、あの父がその程度の事で諦めるとは思えないでもいた。


「ここです」

 レナの魔力と、カリナの存在に怯えたアルセンは一対の墓の前で足を止めた。

 広い墓地にあるのは、アルセンの祖父母と父母の墓だけだった。

「お墓、少ないのね」

 レナはコサムドラにある霊安堂を思い出した。大きな霊安堂の中は多くの部屋があり、王家の者として死を迎えた者に一部屋ずつ与えられていた。

「リエーキは、私の祖父と父が戦で勝ち取った国なので……」

「そうだったの」

 レナは、アルセンの父母の墓の間ににそっと屈み、両手でそれぞれの墓石に手を触れた。

「お休みのところ申し訳ありません。少しお話しをお聞かせください」

その瞬間、アルセンは悲鳴を上げた。

 レナが立ち上がると、見たことの無い男女が立っていた。

「あなたは誰?」

 女の方がレナに聞いた。

「突然申し訳ありません。隣国コサムドラ国王アンドレの娘レナです」

「コサムドラの姫君が、我々を起こしたと?」

 今度は、男がいぶかしげにレナを見た。

「ほら、アルセン、ちゃんと説明して差し上げて」

 レナが、アルセンを振り返ると、アルセンは完全に腰を抜かして地面に転がっていた。


 何とか体制を立て直したアルセンは、国王らしいところを両親に見せようと、使用人に銘じて墓地の近くにテーブルとイス、そしてお茶の用意をさせた。

 使用人達には目覚めた者達は見えておらず、国王が墓地の傍で若い娘とお茶をするようだと、騒ぎになっていた。


「まさかカリナ様までお越しとは……」

 カリナはクマの姿は見せないまま、レナと共にテーブルについた。

 心なしか、アルセンは父母から少し離れな椅子に座っていた。そして一言も発しない。

「何をお聞きになりたくて、わざわざ我々を目覚めさせたのでしょうか」

 母の言葉に、アルセンの肩が一瞬動いた。

「あんた方夫婦が何で死んだかは、全く興味が無いから安心おし」

 アルセンと母は、ほっとした顔をした。

 顔も仕草も、とても似てる。

「では、何でしょうか」

 アルセンは父の方を見ようともしない。

「あんた、私の父を知ってるね」

 カリナの一言で察した。

「あの事件の事でしょうか」

「そうだね、その事件の事を話してもらおう」

 レナにはカリナが興奮しているのが分かった。

「あの事件?」

 ついレナは口をはさんでしまった。

「コサムドラの姫様は、魔人なのに何もご存じないのですな」

 父の言葉にアルセンが声を上げた。

「お前ごときが、レナ姫様の事を口にするな!」

 アルセンは震えていた。

「アルセン、お父様に何て口を利くの」

「レナ姫様は、黙っていて下さい。やはり、殺しても殺し足りない!」

 アルセンが立ち上がった。

 それを制しようと母も立ち上がるが、実体のない身では息子の勢いを止める事すらできない。そして、その表情には恐怖すら浮かんでいる。

「いい加減にして!」

 レナは、アルセンの動くを魔力で封じた。

 しかし恐怖の目が、今度はレナに向けられてしまった。

明日もよろしくお願いします。

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