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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
146/271

猛進の先11

 リエーキ側の国境の村で、乗合の馬車に乗った。

 以前この国へ来た時に感じた違和感は微塵もなく、乗合馬車の中は、皆が意思を持った表情をしていた。

「あんた、この国の人じゃないね」

 隣に座った初老の男性がレナに話しかけてきた。

「はい、コサムドラです。この国に住む親戚に会いに来ました」

 全くの嘘ではない。

「あんたも、この国に住めば良い。コサムドラでは魔人は住みにくいだろう。ここは良い。皆が魔人なんだから」

「そうですね」

 そうなのか、コサムドラに住み魔人の人達は住み難さを感じているのか。

 魔人である事を隠して暮らさなければならないのだから、住安いとは言えないのは当然か。レナは改めてそれに気付いた。

「今の国王は、お若いが本当にいい人なんだ」

 支配されていた頃の事は記憶にないらしい。

「戦争で傷付いた人達を救おうと尽力して下さっているんだ」

 その戦争を仕掛けたのは、その国王なんですけどね。

 思わず言ってしまいそうになるのを、何とか我慢した。




 アルセンは突然訪ねて来たレナに腰が抜けそうになった。

「レレレ、レナ様!」

「ごめんなさいね。近くまで来る用があったので立ち寄らせて頂いたわ。この国も随分変わったのね」

 腰が引けたままのアルセンに、更なる事態が襲う。

「アルセン、あんた好き放題やったらしいじゃないか」

 聞き覚えのある声だった。

「カカカカ、カリナ様!」

「そうだよ、お前の名付け親だよ」

 とうとうアルセンはソファに座り込み立ち上がろうにも、立ち上がれなくなってしまった。それでも立ち上がろうとする姿は、本当に滑稽だった。

「お、お亡くなりになったのでは」

「ごめんなさいねアルセン国王。どうやら私達魔人に何かが起きているようなの。ジャメルも行方不明よ。アルセン国王、貴方何かご存じないかしら」

「え? あのジャメルが!?」

 レナと話している間も、アルセンはカリナの存在を確認しようと、部屋中をキョロキョロと見回していた。

「そんなにキョロキョロしてると、首がとれちまうよアルセン」

 カリナの言葉に、アルセンの動きがピタリと止まった。

「そ、そうですね」

 しかし、今度は身動ぎ一つしなくなってしまった。

「で、私に聞きたい事と言うのは……。ジャメルの行方は私は知りませんよ」

 目だけをキョロキョロと動かすアルセンの姿に、どれ程カリナを恐れているのかとレナは可哀想になっってしまった。

「その前に、お前、ムートルに戦を仕掛けたというのは本当かい」

 とうとうアルセンは悲鳴を上げた。



 最近のアルセン王は、何よりも国民の為を考えて行動なさっている。

 ルートルとの戦の後、多くの国民がリエーキを見捨ててしまった。しかし、国王は見捨てた者達の帰国も快く受け入れた。

「我が国は魔人の国です。どこの国よりも、魔人が住みやすい国にしなければならない」

 どこから漏れたのか、アルセンの身体は傷だらけで、ムートルとの戦で傷付いたらしい。王は民と一緒に戦ってくれていた。 

 ただ最大の懸案事項は、王に妃の居ない事だった。

 その王が、若い女性と前王夫妻の墓の方へ向かっている。

 使用人達は、久しぶりの慶事の予感に浮足立った。

 残念ながら、アルセンと一緒に歩いていたのはレナだった。

 目的はただ一つ。

「アルセン、お前の親に会いに行くよ」

 カリナの言葉に、アルセンが真っ青になった。

「あら、酷い顔をして。まだ何か後ろめたい事でもあるの?」

 アルセンの顔を覗き込んだ瞬間、レナには、両親を殺すアルセンの姿が脳裏によぎった。

「信じられない! 自分の両親を殺すなんて!」

 流石のカリナも言葉が出なかった。馬鹿息子だとは思っていたが、自分の親を殺めるほどとは思っても見なかった。


「まぁ、事の真相は両親から聞けば良いさ」

 墓へ向かうアルセンの足取りは重かった。


明日もよろしくお願いします。

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