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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
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猛進の先6

「レナ、頼まれていたクマのぬいぐるみを作ったよ。大きさはこれで良いかい?」

 ルイーズの手には手のひら程の大きさのクマのぬいぐるみが握られていた。小さな丸い耳、短い手足、とても可愛らしいクマのぬいぐるみが出来上がっていた。

「わぁ、可愛い。さすがお祖母様ね」

「このくらいの物、自分で作れないでどうするんだい」

「お祖母様が作ったクマって事に意味があるのよね」

 ルイーズからぬいぐるみを受け取ったレナは意味ありげに微笑んだ。



 カリナは石に入り込む事で東屋から離れて城に入る事ができ、生きている間に集めた多くの魔人に関する本を再び目にする事ができた。

 が

「レナがいてくれないと、ページの一つもめくれないじゃないか」

「石には手も足も無いもの。そこで!」

 レナは取り出したのは、ルイーズお手製のクマのぬいぐるみだった。

「ぬいぐるみ!?」

 石が叫んだ。

「石より、ずっと良いと思うの。それに、小さいけど、ほら手も足もあるの」

「そうだね、石よりはいいね」

 カリナは石からクマに乗り換えようとした。

「レナ、無理だ。ここでは出入りできない。東屋か墓に連れて行っておくれ」

「あら、ごめんなさい大おば様。私、今からお祖母様と離れた畑へ薬草を摘みに行くの。ほら、ページをめくって置くから、暫くこのままで我慢してちょうだい」

 レナは本のページをめくって部屋を出て行ってしまった。

「まったく、生きていた頃ならあんな無礼絶対に許しはしなかったのに」

 しかし、いくら悔しがっても今は石なのである。

 あのまま眠ったままでも良かったのかもしれない。死んでしまった今、世の中がどうなろうと、魔人皇族や魔人国がどうなろうと、自分には無関係だ。

 しかし、まだ見つかってはいないが間違いなく長年望んだ歴史書がここにある。それに、レナから聞いた不可解な出来事。

 その全てがカリナに目覚めよと言っているように思えた。

「目覚めるも何も、石ではね」

 レナが、めくっていったページは残念ながら、章名が書かれただけのページだった。


 退屈したカリナは眠ってしまった。

 一度永遠の眠りについた筈のカリナが、眠ると言う感覚が正しいのかカリナ自身もよく理解できなかったが、とにかく夢を見た。

 目の前に欲するレナが居る

 ギード、よくやった、さぁレナには申し訳ないが私はまだクタバる訳にはいかないんだ。

 満身の魔力でレナを襲った。

 はずだった。

「ギード!」

 カリナの放った魔力は、レナの前に立ちふさがったギードを通過し、レナに当たった。

 そして、レナに微塵の傷も付けることなく、魔力は跳ね返り再びギードを通してカリナに返った。

 一体何が起きたのか分からなかった。


「あの時の事を、レナに聞かないといけないね」

 目を覚ました石が呟いた。


 薬草を摘みにカーラも同行する予定だった。しかし、日を追うごとに体調は悪化しており、同行は叶わなかった。

「カーラ、どうしちゃったんだろう。もう、ここ何日もまともに食べていないのよ。私が治しちゃ駄目かしら、お祖母様」

 ルイーズに言われた通り薬草畑から、いくつかの薬草を摘み終わったレナは、馬車の荷台に薬草を積んだ。

「おや、こう言う事はレナの力でも分からないのかい?」

 ルイーズが可笑しそうに笑い出した。

「何か悪い病気だと、ああこれを取れば良いのねって何となく分かるんだけど、カーラのは分からないのよ。きっと、凄く良くない病気なんだわ。ここへ連れてきちゃって悪いことをしたわ」

 肩を落とすレナの姿に、ルイーズは益々可笑しくなってしまった。

「レナ、本当に分からないのかい?」

「そうなの……」

 いくら大人ぶっても、こんな事に気づかないなんて、レナもまだまだ子供だ。

「そうだね、連れてきてしまったのは気の毒な事をしたかもしれないね。でもまぁ、出発した時は、本人も分かってなかっただろうしね。こればっかりは、仕方がないよ」

 ルイーズの口ぶりにレナは違和感を覚えた。

「お祖母様は、カーラの病気が何かご存知なの?」

 ルイーズは、ふふっと笑った。

「カーラに子供が出来たんだよ。今、レナが摘んだ薬草は悪阻に良いからね。帰ったらお茶にしてあげなさい」

 レナは、穴が開くのではないかと思うほどルイーズの顔を見詰めていた。


明日もよろしくお願いします。

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