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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
139/271

猛進の先4

「お父様、どうして私に歴史書を見せて頂けないのですか。私は、お父様同様クラザム国復活を願っているのです。なのに、私はクラザム国の歴史すら知らない!」

 13歳のカリナは父王タルメランに詰め寄った。

「カリナ、クラザム復活は我が魔人皇族のとっては悲願だ。ただ、それを一人で背負おうなどと思わなくて良いんだよ。それに、魔人皇族の女の子は、人間の王子と結婚せねばならんのだ」

 カリナは悔しさの余り地団駄を踏んだ。

「誰がそんな事を決めたと言うのです! 私は人間の王子などとは結婚しません!」

「それが決まりなんだよ、カリナ。皆んなが幸せになるんだ」

「私は女になど生まれたくなかった!」

 このまま村を出てやる。

 カリナはタルメランに背を向け全力で走り出した。


 カリナは村はずれまで必死に走った。どうやって息をすれば良いのか分からないほど、息が切れた。

 だけど……

「ここは……どこ……」

 小さな村だ。知らない場所なんて無いと思っていた。

「その山道を下って、ここで産まれた魔人皇族の女の子達は、人間の元へ嫁いでいくのだ」

 振り返るとタルメランが立っていた。

 やはり父からは逃げられない。

「カリナ、お前の嫁ぎ先が決まったよ。ベナエシと言う国だ。我々にとって非常に重要な国」

「私はそんな国へは行きません」

 カリナは山道を下り始めた。

「いや、行ってもらうよ。カリナと大して年の変わらない妹がいるんだ。きっと仲良くできると」

 タルメランが、カリナの腕を掴んだ。

「ベナエシは、今の王家が支配するまでは我々の国だった場所だ」

 カリナは驚いて足を止めた。

「え?」

「だからカリナ、16になったらベナエシへ嫁ぐのだ。そして、われわれ魔人族の復活を手伝ってくれ」

「今すぐ行きましょう、お父様。人間など私たちの力を使えば何てことないでしょう」

 カリナの鼻息の粗さに、思わず笑いだした。

「ここまで待ったのだ。準備をぬかりなくしてからでも遅くないよカリナ」

「そうね、後3年でどんな準備ができるかしら。お父様、私に教えてください。そうとなれば、直ぐに城に戻らなくっちゃ」

 走り出したカリナだったが、先ほど走りすぎたせいか足がもつれ転んでだ。

「いったぁい……」

 それは見事な擦り傷を腕に作ってしまった。

「カリナは先ずお淑やかにならないとね」

 そう言ってタルメランは、カリナの擦り傷に触れた。

「ありがとう、お父様」

 カリナの擦り傷は跡形もなく消えた。



「大おば様、やっぱり魔人国はこのベナエシだったのね」

 カリナが意外そうな顔をした。

「なんで、知っていたんだい」

「歴史書の地図が……」

「ああ、歴史書にあったのかい。じゃぁ、レナ一つ教えておくれ。魔人皇族は国を追われたときの王の名を」

「えーっと、何だったかしら……。歴史、特に人名を覚えるのは苦手なのよね」

 なかなか思い出せないレナに、カリナが言った。

「タルメラン」

「そう! そんな名前、そう間違いないわ。タルメランよ!」

 思い出せたレナは大喜びだったが、カリナは気付いてしまった。

 国を追われた魔人族の王は父タルメランだ。しかし、われわれ魔人族が国を失ってから少なく考えても数百年。同じ名前の別人と言う事もあり得る。

「レナ、歴史書はあの部屋の本棚にしまったのかい」

「そうよ、初めてここへ来た時に大おば様が用意してくれたお部屋をずっと使っているわ」

「あの部屋は、いろんな本があっただろう」

「本棚にしまったら、もうどこのしまったのか分からなくなるくらいにあるわね」

 読みたい。

 13の時から願った事が今叶おうとしている。

 歴史書は私を選ばなかった。いや、違う父が私を選ばなかったのだ。

 しかし、レナは選ばれた。

「これから読みに行こう」

 カリナは東屋から離れ城に向かって歩き出したが、あともう少しと言うところで、何か大きな力で東屋に引き戻されてしまった。


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