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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
138/271

猛進の先3

 ベナエシへ向かう道中、どこかにジャメルの痕跡がないかと気を張り巡らせたレナだったが、何もなかった。

「余り根を詰めるとお疲れになってしまいますよ」

 カーラは心配してレナを手伝おうとするも、直ぐに疲れてしまうのはカーラの方だった。

「私は大丈夫よ、カーラ」

 余りカーラを心配させてはいけない。

 レナは旅路を急いだ。


 ベナエシではルイーズが大喜びで迎え入れた。

「元気なうちにまた会えて良かったよ、レナ。まぁ、婚約中の姫が国を離れる何て聞いた事がないけどねぇ」


 ベナエシに着いて暫くは、建前通りルイーズの元で花嫁修行に励んでいた。

 とは言え。

「どうしたら、そんなに不器用になれるんだろうねぇ。ほらレナ、針目を揃えて……あー、また曲がった……」

 どうしても針仕事だけは上達しなかった。

「でも、お祖母様、お料理は上手になったでしょ?」

 レナは料理には自身を持っていたのだが。

「そうだね、何とか食べられる物ができるようになったね」

 レナの料理への自信は消え失せてしまった。


 祖母の元での花嫁修行にも慣れ始め、少し時間のやりくりが出来るようになったレナが最初に向かった先は、カリナの墓だった。

 やっと本来の目的が果たせる。

 ベナエシに来て既に二週間程経っていた。

「大おば様、お久しぶりね」

 レナは墓に語りかけた。

 カリナの墓は、カリナを慕っていた魔人使用人達の手で常に綺麗に手入れされており、今日も綺麗な花が供えられていた。

 ふとレナは視線を感じて、後ろを振り返った。

 墓から少し離れた小さな丘に作られた東屋にカリナの姿があった。


「大おば様、お休みのところ起こしてしまってごめんなさい」

 レナは、カリナの隣に座った。

「何だい、私が怖くないのかい」

「平気よ。大おば様は、わざわざ私に忠告して下っさた。敵じゃないわ」

 カリナが、ふっと笑った。

「また、お前の血を欲しがるかもしれないよ」

「あら、それならもう大丈夫よ。もう、私の血では役には立たないわ」

「え!」

 カリナが大きな声を上げた。が、聞こえているのはレナだけだ。

「そんなに驚かないでよ。私の年で結婚した子もいるし、それに私婚約したのよ。何も知らないのね、大おば様」

 つい言い訳がましい言い方になってしまった。

「そりゃ、ここで大人しく眠っている事しかできないからね」

「魂だけになるって、そんなに自由じゃないのね」

 レナの言葉に、カリナが何かに気付いた。

「おや、この東屋は誰かが守っているようだね。それも相当強い魔力だ」

 レナがニヤリと笑った。

「私よ」

 勝ち誇ったようにカリナに微笑むレナを見て、カリナは思わず本音が出てしまった。

「ああ、やっぱりどんな事をしてでも、お前の血を頂いておけば……」

「残念でした。もう無理よ」

「本当に残念だよ」

「これで、ここでの話は誰にも聞かれないわ」

「あの方にも気付かれやしないね」

「そうよ、だから聞かせて。今、何が起きているの? 大おば様ならご存知なんでしょ?」

 この子なら、何とかできるかもしれない。

 カリナは大きく息を吸って、ゆっくりと記憶を確認するように話し始めた。


 レナが城を去ってから、ハンスは目の回るような忙しさに見舞われていた。

「本当にレナはこれだけの資料に目を通し勉強をしていたのですか?」

「そうですよ。男の癖に何です。その位で根を上げて」

 ついついベルに愚痴をこぼしては、叱られていた。

 会議に出れば、友好的に迎えてくれる者もあれば、顔では笑顔だか内心面白くなく思っている者もいる。

 ギードだった頃なら、間違いなく喧嘩をふっかけ魔力で相手を怖がらせていたに違いない。

 しかし、もうギードは捨てたのだ。ハンスに戻ってレナと婚約したのだ。

 何としてもレナの代役をこなし、必ず役人どもに一目置かれる存在になってやる。

 やっきになって勉強をしたが、何をどうやっても資料が頭に入っていかない。

 そんな時ファビオから仕事がしたい、そんな手紙が来た。 

 今なら城にレナも居ないし、変な心配もしなくて良い。


明日もよろしくお願いします。

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