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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
136/271

猛進の先1

 エリザがムートルに向かったその日のうちに、ハンスはコサムドラの城にやって来た。

 ハンスはアンドレへの挨拶もそこそこに、花嫁の間へ向かった。

「レナ!」

 しかし、レナの姿はそこにはなかった。

 新婚旅行から戻ったばかりのカーラが、掃除をしているだけだ。

「カーラ、レナはどこ」

 つい強い口調になってしまい、カーラを怖がらせてしまった。

「レ、レナ様ならお母様のところへ……し、失礼します!」

 カーラはそれだけ言うと、逃げるように部屋から出て行ってしまった。



 レナは久しぶりに母の眠る霊安堂、百合の間へ来ていた。城へ連れてこられた当時は、何かと言うとここへ来ていたが、最近では月に二度か三度やって来る程度になっていた。

 ここならハンスも追って来れない。

 ハンスと二人、あの花嫁の間で平然と過ごせる自信がなかった。

「ここなら、安心よね」

 外からハンスとベルの気配がした。

「あら、ベルも居るのね」

 恐らく、怖いもの知らずのハンスが霊安堂に入るのを防ぐ為にベルも一緒に来たのだろう。レナとエリザの計画通り、ベルの病気は少しづつではあるが改善され始めていた。

 レナはどうするべきか悩んだ。まさか、昔の様に、ここで篭城するわけにもいかない。

「ねぇママ、どうするべきかしらね」

 つい声に出して言ってしまった。

 しかし、何も起こらない。

「カリナ大おば様でも出てきてくれたのにな……。そうだ! 大おば様なら何か知っているかも」

 閃いたレナは、急いで霊安堂から飛び出した。

「レナ! 待ってたよ」

 飛び出してしたレナを、ハンスが両手で受け止めた。

「あぁ、ハンス。びっくりした!」

 レナは本当にハンスの事を忘れていた。

「お二人とも、仲がよろしいのは結構ですが、もうすぐお夕食ですよ」

 ベルのおかげで、花嫁の間には行かなくて済みそうだ。


 レナは夕食の席で切り出した。

「お父様、私ベナエシに行こうと思うの」

 同席していたアンドレとハンスの手が止まった。

「え?」

 最初に反応したのはハンスだった。

「ベナエシに行こうと思うの」

 レナは同じ事をゆっくりと言った。

「今は難しいね」

 アンドレは、レナに言い聞かせるように言った。

「そうだよ、レナ。今はレナがここを離れるなんて問題外だよ」

「どうして?」

 引き下がらないレナに、アンドレは完全に食事を中断してしまった。

「どうしてって、レナ。ジャメルもエリザも城に居ないのに……」

「あら、お父様。ハンスが居るじゃない」

「ならば、どうしてレナがベナエシへ行こうと思ったのかを説明してくれ」

 レナも食事の手を完全に止め、話し出そうとしたが、ベルの横やりが入った。

「いいえ、今はお食事をしてください。お食事は終わらなければ、仕事が終わらない使用人達が居ることをお忘れなく」

 ベルの一言で、三人は慌てて食事を再開した。



 場所をアンドレの執務室へ移された。

「ジャメルの事よ」

 レナが切り出した。

 アンドレは最近ジャメルの名を出す事を拒否していた。

「お父様やエリザ達はジャメルが自らの意志で城を出たと思っているみたいだけど、絶対に違うわ。ジャメルは信頼を裏切って去っていくような人じゃない」

「どうしてそう言い切れる」

「お父様こそ、どうしてジャメルを信じないのよ!」

「ジャメルにエリザ、あの二人は最近おかしかった。それに、あの騒ぎだよ。どうやって信用しろと」

 アンドレは頑なだった。

 もう、これ以上レナは黙っていられなかった。

「この城に、何かが居たの」

「騒ぎ? 何かが居た? どう言う事、レナ」

 それまで静観していたハンスがやっと口を開いた。

 やはりこの城で何かが起きたのだ。

「最初はエリザが変だったの……」

 レナは時間をかけて、慎重に話を進めた。


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