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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
130/271

ある魔人の死4

「お疲れが取れないようですね。酷い顔をしてしますよ」

 朝、エリザに開口一番に言われてしまった。

 ジャメルが城を出て行って以来、エリザの性格は益々冷静さを増し、その指摘は、辛辣で間違いがないもので、誰もがエリザから指摘されるのを嫌がった。

「大丈夫よ」

 こうなったら意地である。

 レナは睡眠時間を削って資料に目を通し、国政の勉強に励んだ。

 それに明日はやっと会議のない日。会議の準備をしなくて良いので、ファビオを花嫁の間で会う事になっている。

 会議が終わったら、少し休んでエリザの言う『酷い顔』を何とかしなければ。

 レナの足取りは軽かった。

 


 楽しみな事が待っている時に限って事態は悪い方へと進む。

 会議が随分と長引いてしまった。

 どうして年寄りと言うのは、自分の理解できない新しい事に対して、話も聞かずに反対をするのだろうか。若い高級役人と高齢の高級役人の間で、全く意味のないにらみ合いが続いた。

 会議を終わらせたのはレナだった。

 正確に言えば、レナのあくびだ。

 昨夜も遅くまで勉強をしていたため、寝不足だったレナは不毛なにらみ合いに、つい気を抜いてしまった。

 張り詰めた会議室に響くレナのあくび。

 気が付いた時には、出席者全員の目線をレナが独り占めをしていた。

「ご、ごめんなさい……」

 全員が笑った。

 一番へそを曲げていた高齢の高級役人が大きな声で笑い始めた。

「いやぁ、レナ様を退屈させるような会議では、いけませんな。今日は私が引き下がりましょう」

 無事、会議が終わった。


 会議室の前で待ていたエリザは、中で何が起きたのか知って、鬼のような表情で立っていた。

 どうにかエリザから逃げす方法はないものかと考えたが、何をどう考えても不可能だった。

「大きなあくび、だった様でございますわね」

 レナの荷物を受け取りながらエリザが言った。

「まぁ、姫君を叱らないで上げてください。お陰で私が助かりました」

 そこに立っていたのは、にらみ合いをしていた若い方の高級役人だった。若いと言っても、エリザやアンドレと同世代。レナからみれば『おじさん』なのだが、おじさんの割には端正な顔立ちで少々若く見えた。

「そうでございますか」

 エリザはそう言って、先に歩き出したが、レナにはエリザの耳が紅くなっているのが見えていた。

「エリザ、熱でもあるの? 耳が紅いわよ」

 レナもエリザの後に続いた。


 エリザをからかったツケは、直ぐにやってきた。

「お疲れの様ですから、お部屋でお休みください」

 そう言ってエリザに部屋に閉じ込められてしまった。夕食後、月が出たらファビオが花嫁の間にやって来る。それまでに片付けをしたかったのだが、仕方がない。


 夕食後、急いで花嫁の間に行くと、既にファビオが到着していた。

「ごめんなさい、夕方片付けるつもりだったんだけど」

 散らばった資料をかき集めて片付けるレナを、ファビオは手伝った。

 レナが来る前に少し資料を手に取ってみたが、あまりに複雑な資料で、何の事が書かれているのかすら、分からなかった。

「難しい資料ばかりだね」

「役人のお爺ちゃん達が、わざと難しくしているのよ」

 そう言って笑うレナの笑顔がまぶしかっ

 ファビオの様子にレナが気付いた。

「どうかしたの?」

 ファビオは息をひとつ小さく吐いた。

「今日はお別れにきた」

 資料を片付けるレナの手が止まった。資料を落としそうになったが、なんとか堪えた。

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