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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
122/271

浸入6

 一体何故、今自分は微笑んでいるんだろう。

 エリザは自室で、レナが婚約で着たドレスのサイズ直しをしていた。

 カーラとエリックの結婚式に向けた準備をレナと二人で始めた。レナは使える部屋がないか、様子を伺いに行っている。

 自分には巡って来なかったが、結婚はめでたい事だ。だから微笑んでいるのだろうか。

 そこまで考えたところで、エリザの思考を何かが遮った。エリザはドレスを眺めて「やっぱり綺麗ね」と微笑んだ。


 レナは、一週間後に予定したカーラとエリックの結婚式に使えそうな部屋を探していた。 探しながら、城の中の異変を探っていた。 そもそも、産まれてこの方、魔力を使えなかったカーラやエリック、それにファビオが使える様になった事自体が異変なのだ。

 ファビオ……。大変な約束をしてしまったかもしれない。でも、そのお陰で今こうして前向きに生きられる。


 それは偶然だったのか。

 レナが城の中をウロウロと歩き回っていると聞いたジャメルは、不信に思いレナの気配を探すも一向に見つけられない。エリザは自室にいる様なので、エリザを訪ねた。

「エリザ、姫君が城の中を歩き回っているそうだが、何か知っているか?」

「え?」

 ドレスのサイズ直しをしていたエリザは、兄の異変に気付いた。

「兄さん、それは誰の……」

 分かった、マルグリットだ。あの女、とうとう、兄に手を出したか。

「どうして!!!」

 エリザが、大声を出した。


 何事!

 レナは兄妹の異変に気付き、エリザの部屋に急いで向かった。


 レナがエリザの部屋に飛び込むと、エリザが怒りで震えていた。

「何事?」

「レナ様、兄が……」

 そこまで言ったエリザ、今度は泣き出してしまった。

「何があったの」

 レナはジャメルを見たが、ジャメルも何が何やら、と言った表情で妹を見ていた。

「ねぇ、話してエリザ」

 レナは、ドレスが犠牲にならないうにエリザの手からドレスを受け取り、離れた場所に置いた。

 エリザは、突如キッと顔を上げ兄ジャメルを睨んだ。

「兄さん、マルグリット様はエリー様ではないのよ」

 レナには何の事かサッパリ分からなかったが、ジャメルの顔色が変わったところを見ると、何か思い当たる節があるらしい。

 レナも気付いた。

「え? もしかして、城を開けていた間、マルグリットさんといたの?」

 レナの何気ない一言が事態を悪化させた。

「城を開けていた?」

 エリザが噛みしめる様に言った。

「お前には無関係な事だ」

 今ここで、村の事を言うわけには行かない。

「あの女!」

「そんな言い方をするな!」

「兄さん、あの女は信用出来ない! 忘れたの、あの女の我儘で私達死んでたかもしれないのよ!」

 レナは何をどうしていいか分からず、ただ二人を見ていた。

あの黒い何かが、二人の身体からじわじわ溢れるように現れ、二人の身体を包み始めた。

 城を守る魔人二人がいさかいを起こしている。これはとんでもない非常事態だ。

「ねぇ、二人も落ち着いて」

「姫君、妹と城を頼みます」

 黒い何かに包まれ、ジャメルの表情すら見えない。

「ちょっと、どこへ行くの!」

 あっという間に、ジャメルの気配は城から消えた。

 エリザは次第に落ち着きを取り戻し、エリザを包んでいた黒い何かもエリザの中へと戻って行った。

 あの黒い何かが全ての原因なのは間違いない。しかし、どうすれば良いのかレナにはさっぱり分からなかった。


 城を飛び出し馬を走らせていくうちに、ジャメルも落ち着きを取り戻していた。

 気が付くと、マルグリットの家の前に居た。

「ジャ、ジャメル様?!」

 外出から戻ったファビオと鉢合わせをしてしまった。

「父上の事は残念だった」

「急な事でしたので業務にもご迷惑を……」

「そんな事は気にしなくても良い」

「どうぞ、中へ」

 ジャメルはファビオの案内で家の中へ入って行った。


 マルグリットは、夫と過ごしたこの家にジャメルが居る事に、何か後ろめたさを覚え、それを誤魔化すかのように当たり障りのない会話に集中した。

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