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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
107/271

最初の戦8

サコムドラでは、、会議中の高級役人達が歓声がをあげた。

「ムートル国の民も明るい話題に喜ぶでしょう!」

「隣接する国のうち、コサムドラ、ベナエシ、ムートルの王室が身内となれば、リエーキもこの前のような無茶はしないだろうし、国策としても素晴らしい」

「レナ様もお年頃になられたという事だなぁ」

 諸手を挙げて喜ぶ役人達の中で、ジャメルだけが渋い顔をしていた。

「何だジャメル、何て顔をしておるのだ」

 高齢の役人が、ジャメルの顔を見て大笑いをし始めた。

 その笑いは、リエーキのムートル進行で、緊張続きだった役人達に安息感をもたらし、会議室が笑いに包まれた。



 レナがメイドと親しげに庭に出て来たので、思わず隠れてしまった。

 しかし、次の瞬間ファビオの目に飛び込んできたのは、メイドにきつく抱きつくレナの姿だった。

「!」

 しかしファビオを驚かせたのは、抱きついた事ではない。

 レナが抱き付いたのはメイドの筈だった。しかし、今ファビオの目に映るのは卑屈そうな顔をした男なのだ。

 ファビオからはレナの背中しか見えず、レナがどんな顔をしているのかうかがい知る事は出来なかった。

 今すぐ踵を返して走り去りたい。

 しかし、身体の動かし方を忘れたかのように動く事が出来なかった。


 レナは、ファビオに気付いていた。

 しかし、今はそれどころではない。

「アルセン王ね」

 レナはメイドの耳元で囁いた。

「な、何をおっしゃいます。私は……」

「誤魔化しても無駄。私にはアルセン王、あなたが見えてる」

 メイドの身体がガクガクと震え始めた。

「ど、どうして……」

 男の声だった。

「魔力の違いでしょうね」

 レナは静かに言った。

「こ、この手を離して下さいませんか」

「ダメよ。逃げる気でしょう。私からそちらに出向くつもりだったけど、丁度いい。ここで話をつけましょう」

「は、話とは……」

 レナは腕に、いや目に見えない魔力の力を強めた。

「よくもムートルに攻め込んだわね」

「そ、それはコサムドラの姫には無関け……」

 レナが力を強めた為、最後まで言葉を発する事が出来なかった。

「黙って聞きなさい。アルセン王、あなたの魔力は私の足元にも及ばない。今後、私の大切な物に手を出したら、私はあなたを許さない。それだけは忘れないで」

 アルセンは引き下がらなかった。

「べ、別にレナ姫に許していただかなくてもっ!!」

 レナは更に力を強めた。

「私、まだ自分の力が何処までなのか分からないのよね。でも、まだまだ強められるわ。そうすれば、アルセン王、あなたはこのメイドの身体の中で消滅するんでしょうね。一度やってみましょうか」

「!!」

 アルセンは何とか体を動かそうとするも、ビクともしない。

「約束してくださる?」

 メイドの首がカクンカクンと上下に動いた。

「分かって頂けたら、それでいいの」

 レナが魔力を解いた。


 ファビオには、何が起きているのかわからなかった。

 レナの腕の中で脱力したメイドが意識を取り戻した。

「失礼」

 ファビオの横をエリザが通り抜けた。

 エリザはレナから、自力では歩けないメイドを受け取った。

「エリザ、お願い」

 エリザが全てを悟っている事は分かっていた。

 そして、そのエリザの背後に居るファビオの事も。


 ファビオはハンスに言われた言葉を思い出した。

 魔人。

 膝が震えた。

 震える膝を何とか動かしレナに背中を向け走り出した。

 レナは止める事が出来なかった。

 ファビオは魔人に怯えている。今のレナが何を言っても、ファビオは受け入れないだろう。


 そう、これで良いのです。

 エリザは、自分の心に何か正体不明の黒い物が生まれた事に気付いた。


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