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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
106/271

最初の戦7

 レナは道中状況がが許す限り、馬の手綱を持つファビオの隣に座り、ワザと話しかけてはファビオの頬をつねって遊んでいた。

「もー、やめろよー。危ないからー」

 ファビオもレナに対して緊張する事無く話せるようになっていった。

 しかし、宿では一部屋に宿泊していたが、あの日以降キスどころか手を繋ぐ事すらなかった。

 それは、ファビオなりの誠意だったが、レナには何だか物足りない旅となってしまた。



 マルグリットは、村まであと少しの所まで来ていた。

 もしかすると、この村のこれからの運命は自分が握っているのかもしれない。膝が少し震えるのが分かった。

 近付けば近付く程、懐かしい人達の気配が感じられた。

「マルグリット、早く来て! ずっと待ってたのよ!」

 姉のエリーだ。幼かったあの日のままの声。

 ごめんなさい、エリー。

 先ずは、あの方を訪ねなければ。



 村の中心にある、石造りの小さな城。

 ここに魔人の皇族が暮らしていた。マルグリットが城を目指すと、マルグリットを知る魂達が嬉しそうに手を振ったり話しかけて来る。

 この人達の時間は、あの日から止まったままなのだ。

「やぁ、マルグリット」

 突然姿を現したのは、王の魂だった。

「王様!」

 マルグリットは膝をつき、幼い日この城で教わった王への敬意の礼をした。

「時の止まったこの村に、また来てくれたという事は、見つかったのか?」

「その事でお伺いしたい事があり、参りました」

「なんなりと」

 王の魂は、そっとマルグリットの頭に触れた。マルグリットの姿が、一瞬で消えた。



「マルグリット、顔を上げなさい」

 王の言葉に従い、顔を上げると、そこは長く放置され朽ち始めた城ではなく、生き生きと人々が行き交うあの日以前の城の様子そのものだった。

「王様、これは……」



 すっかり恋人のフリが板に付いたレナとファビオだったが、ベナエシの城に着いた途端、エリザによって引き裂かれてしまった。

 仲良く話すレナというファビオを見たエリザは、眉間に皺を寄せたかと思うとファビオに言い放った。

「例え貴方がマルグリット様のお子様でも、レナ様に対してそんな態度を取るのは御門違いです。身分をわきまえなさい」

「も、申し訳ありません」

 そして、レナに向き直り言った。

「レナ様もレナ様です。今回の戦の後処理が終わり次第、ハンス様との婚約が行われると言うのに」

 レナは、エリザの顔に穴が空くのではないかと思われるほど、エリザを見つめた。

 ファビオは黙って、その場を離れた。

「婚約?」

「そうです。ムートル国王子と、コサムドラ国王女。素晴らしい婚約です」

 エリザの言葉はファビオの耳にも届いた。

 レナはファビオの背中に祈った。

 お願い、振り返って!

 しかし、レナの願いは届かず、ファビオは馬を連れて振り返る事なく去ってしまった。



 レナは、ハンスがレナの事を考えては心を乱し、それがレナに迄伝わったのか、やっと分かった。

 原因は、今回の婚約話だ。

 ハンスが嫌いなわけじゃない。

 でも、静かに去るファビオの後ろ姿が頭から離れなかった。



 それはベナエシに到着して三日ほど経った朝、レナはすぐに気付いた。

 城の中にアルセンが居る。アルセンの気配がするのだ。

 レナは心を読み取られない様に細心の注意を払った。

 アルセンの気配は特に何かをするわけではなく、消えたり現れたりを繰り返している。

 アルセンの目的が分からず、ただ様子を見ることしか出来なかった。

 最初にアルセンの気配を感じてから二日後、とうとうレナは気配の正体に気付いた。

 城で働く使用人の中に、アルセンの気配を感じるのだ。

 レナは強硬手段出る事にした。

 それが上手くいくかどうかは、全く自信はなかったが、やるしかない。今ここでアルセンを止められるのはレナしか居ないのだ。

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