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皇女物語(旧題 Lena ~魔人皇女の物語~)  作者: 弥也
戦いの17歳
103/271

最初の戦4

 ハンスが城に到着した。

「さぁ、兄さん帰ろう!」

 ドミニクはハンスの乗って来た馬車に、自分の荷物を手当たり次第に運び込み、さっさと乗り込んでしまった。

「アンドレ様や、レナ姫に礼を言わなければ」 ハンスが嫌がるドミニクを馬車から降ろしていると、ファビオが駆け寄ってきた。

「ファビオ、この人が僕の二番目の兄さん。兄さん、僕の遊び相手のファビオ」

 ドミニクが嬉しそうに二人の間に立った。

 ハンスにはファビオが何者なのか直ぐにわかった。

「弟を、ありがとう。君も魔人なんだね」

 そう言って、ドミニクを連れて城の中へ入って行った。

 ハンスには分かっていた。ファビオがレナにとって何者なのか。そしてファビオ自信が、魔人である事をまだ知らないという事も。

「男の嫉妬か」

 自嘲するハンスの顔を、ドミニクが不思議そうに眺めていた。



 ファビオには、ハンスの言った事が全く理解できなかった。

 今、ハンス王子はマジンと言ったのか?

 マジンとは魔人なのか?

 君も?

 どう言う事だ?



 息子の様子に気付かないわけがない。

 ファビオが生まれてからは、ファビオの事ばかりを気に掛けて生きてきたのだから。

 ハンス様、なんて事を……。

「レナ様、申し訳ありません。少し体調が優れませんので、帰らせていただきます」

「あら、大丈夫?」

「はい」

 マルグリットはファビオと会わないよう城の中を移動し、ジャメルを探した。



「ギードが、ファビオに?! 何と卑怯な!」

「ジャメル、彼はハンス様よ。リンダ様のお子様ハンス様」

「ですがっ!」

 あやつめ、何が楽しくてマルグリット様が隠し通してきた事を。やはり、あの男は信用できない。そもそも、いつもレナ様を危険にさらすのは、あの男だったじゃないか。

 ジャメルの鼻息が荒くなってきたが、今はそれどころではない。

「お願いがあるの。ファビオをレナ様に同行させて欲しいの」

「それくらい容易いですが…」



「まさかレナ様と二人旅をする事になるとは」

 ファビオは混乱したまま、レナを乗せた馬車の御者として旅立つ事になってしまった。とは言え、元々それほど深く物事を考える性質ではなかったので、王子の気まぐれか何かだろう、と自分を納得させた。

 それにしてもマジンなんて言葉、子供の時以来に聞いた。マジンごっご、いつもアンに負けていたなぁ。

 考え事に集中した為だろうか、馬が機嫌をそこねて急に止まってしまった。

「ファビオ、どうかしたの?」

「馬の機嫌が悪くて、申し訳ありません。なぁ、どうした。機嫌なおしてくれよ」

 ファビオが馬に話しかけると、馬が嬉しそうに、再び走り出した。

「ファビオは馬と話せるみたいね」

 朗らかに笑うレナを見て、ファビオは顔を赤くした。レナを抱きしめた事を急に思い出し、レナを直視できなくなってしまった。

「今日は行けるところまで行って、何処かに宿を取らないといけないわね」

 ただ旅の急ぐ旅の予定を言っただけだったのに、ファビオと二人きり宿に泊まるのかと思うと、レナは胸の高鳴りを感じずにはいられなかった。



「なんと、やはりアルセンは自国の民を魔力で支配していた、という事だったのか」

 アンドレは驚きを隠せなかった。以前レナが、その様な事を言った時は半信半疑だったが、まさか本当だったとは。

「魔力から解かれたリエーキの民の多くがムートルに残り、復興を手伝ってくれそうです」

 ハンスは嬉しそうに言った。

「でもフェルナンドは死んでしまったの?」

 魔人だとか魔力の事は、さっぱり分からなかったドミニクだが、フェルナンドが死んだという事だけは理解できた。色々口うるさい執事だったが、死んだと言われると急に情がわいて来た。。

「フェルナンド可愛そうだね」

 ドミニクは、しょんぼりと肩を落とした。

「さぁ、ドミニク。お世話になったお礼を言って! ムートルに帰るぞ!」

 ハンスはそう言って、ドミニクの背中をポンと叩いた。

 本当は、せめて一目レナに会いたいと思っていた。



 ドミニクとハンスが部屋を出ようとした時、アンドレは思い出した。

「そうだ! 私の母が、ハンス王子とレナの婚約がどうのと言っているのです。また、落ち着かれましたら、話を進めましょう!」

 アンドレの言葉に、ハンスの足が止まった。

 が、返事をしたのはドミニクだった。

「王様、レナが結婚するのは僕ドミニクだよ。間違えないで!」

 アンドレとハンスは、思わず笑いだしてしまった。


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