こちら宇宙探偵事務所
「オラァ、金返せや!」
はぁ、今日も来てるよ宇宙ヤクザ。
早く帰ってくれないかな、ご近所さんに見られてたら変な噂が広まりそうでまいっちまうよ。
ただでさえ客がいなくて毎月赤字、昼間はこうして依頼を気長に待ってるけど夜はコンビニでバイト、挙句の果てにはとーちゃんが莫大な借金残して逝っちまってこうやって借金取りに追われる日々だってのに。
「いるのは分かってんだぞ!顔出せや!」
今時ドラマでもなかなか見ない台詞をよく大声で言えるよ。はづかしさってもんは存在しないのかね。
あと少しでバイトの時間じゃないか、もういい加減帰ってくれないかな。
「プルルルル、プルルルル♪」
おい......まじかよ......。こんなときに依頼の電話か?それともバイト先からか?
どっちにしろ今出たら居留守してたのが奴にばれちゃうじゃないか。勘弁するよ。
もし依頼の電話に出なかったらどうなるんだろ...。
「受付時間中に電話をかけたのに出ませんでした。もう使いません。」
「個人でやってるってサイトで見たから電話したのに出ないとかありえない。信用できない悪徳探偵です。」
「事務さえ雇ってないのか?この貧乏探偵が!」
うわぁ...炎上間違いなしじゃないか。そんなこと書き込まれたら本当に潰れちまうよ。
じゃあバイト先からだったら...?
「バイト君?今日は早く出勤してもらいたかったんだけど出ないって事は無視と受け止めて良いかな?代わりはいくらでもいるんだからもう今日は来なくてもいいよ。」
「この前の収支合わせられなかったよね?うちはバイト君にもそういう責任をきちんと持たせていく方針だから。電話には出ないし最近の若者はどうなってるんでしょうね。」
うわぁ...ブラックバイトだったの忘れてたー...。
出なきゃ損しかないな!出よう!男は勇気や!
「こちら宇宙探偵事務所。」
「オラァ、金返せや!」