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6.5,お市、乙女心爆発中


「長政、京の土産は……むむ?」


 長政の帰宅を知り、土産をいただくべく彼の私室へとやってきた阿久。

 しかしそこに長政の姿は無く、代わりに1人の少女が佇んでいた。


「あ、長政様の姉上様ですね」

「……誰じゃ? と言うか、長政は何処いずこか?」

「私はお市と言います。尾張の領主の妹です。長政様は厠です」

「尾張の……ほぉー……尾張の姫君が、何故この近江に?」

「長政様に付いて参りました」

「……まさか……長政、この姉を出し抜き結婚を……!?」


 ぐはぁ、と血を吐きそうな勢いでその場に倒れ伏す阿久。


マリアだけでなく……愚弟と侮っていた長政にすら、私は負けると言うのか……!」

「何故に激しく動揺してらっしゃるのかはわかりませんが、私と長政様はまだそういう関係にはございませんよ?」

「……まだ、と言う事は、そなたにはその気が……?」

「はい。段階を踏み、いずれは長政様の方から婚姻を申し入れてくれる様に仕向ける所存です!」

「……? 何故、そなたから婚姻を申し入れ様とはしないのじゃ?」

「私としては愛を囁くより囁かれたいのです……!」

「ああ、そういう……」


 抱きしめるより抱きしめられたい乙女心と言う奴か。

 婚期を逃しかけてこの手の余裕が無い阿久には、もう理解できない心理である。


「ところで、長政のどこが良いのじゃ?」

「全てです」


 本気の即答だった。


「……聞き方を変えよう。長政に惚れたきっかけは如何様な?」

「その溢れんばかりの優しさに加えて……長政様の外套に包まって寝たあの夜は、野宿とは思えぬ程の安心感がありました」

「安心感?」

「はい。長政様の匂いに包まれていると、まるで幼少の頃、母の胸の中で眠っていた時の様な安らぎを感じたのです」

「はぁ……」

「確信しました。私達はきっと、前世の前世くらいから魂的に惹かれあう仲なのでは無いかと」


 あ、この子ちょっとヤバい子かも知れない。と阿久は1歩後退。


「それに今考えてみれば、私が迷い飢え死にしかけた所に長政様が団子を持って通りかかったなんて奇跡、最早運命としか……!」

「そ、そうか……運命の相手に出会えて、良かったのう」

「はい! 私は今、幸せの絶頂です!」




「あれ、姉上? 何故男用の厠の前に?」

「長政……どれだけ好機があってもだ……頼むから、私が結婚するまで絶対に結婚してくれるなよ」

「一生独身はちょっと……うごふぅ!?」



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