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10.5,義輝、備える

「……何処か、ここは」


 白くてやたらもふもふした大地。

 亜麻色の空、何か丸っこい不思議な飛行生物達。


 この世のモノとは思えぬ光景が広がるその場所に、義輝は立っていた。


「余は、確か……」


 松永久秀の手により……


「ここは、極楽の類か……?」

「正解でーす」

「!」


 上空から、やたら可愛気のある声。


 義輝が上を見上げようとした瞬間、それは目の前に落下して来た。

 すごい勢いだった。その衝撃で白い大地が少し弾け飛び、風圧が義輝を煽る。


「……!?」


 目の前に降ってきたをは、多分、女子。

 でも何かすごく筋骨隆々としている。小麦色の肌が余計に筋肉質な感じを演出している気がする。

 胸部と腰部のみを巻布で隠していると言う、本来なら「はしたない」と思える服装。

 なのにその見事な腹筋を始めとする諸々の筋肉のせいで、いやらしさが欠片も無い。

 もうその肉体美は素晴らしいとしか言えない領域。

 1種の芸術である。


「ようこそ、足利義輝様ですね」


 唖然とする義輝へ向け、空から凄い勢いで舞い降りた筋肉少女が優しい微笑みを浮かべる。


「……こ、声と体が見合っとらんの……」

「あら、まずそこに突っ込むんですか? 余裕ありますねー」


 可愛らしい声で笑いながら、上腕筋を見せつける様な体勢を取る筋肉少女。

 よく見ると、少女の背には鶴の様な白い翼が。

 筋肉の主張が強すぎて全く目立っていないが。


「お主、一体何者か……?」

「私は天使、ヌッファエルとお呼びください」

「ヌハ……?」

「ヌッファエルです。ワンモア」

「わんもあ……?」

「ああ、日ノ本の人って英語通じないんですよね。表現には気をつけなきゃいけない訳ですか。面倒ですね」

「な、何かすまんな」

「そんな日ノ本のお方では私の本名は呼び辛いでしょう。そうですね……『エルたそ』とかどうでしょう」

「何か嫌だ」


 頑張ってヌッファエルと呼ぶ事にする。

 とにかくだ。


「ヌッハヘル殿」

「ヌッファエルです、もしくはエルたそ」

「………………」

「エ・ル・た・そ」


 どうやらそっちの方で呼んで欲しい様だ。


「……其方そなた

「……逃げましたね」

「とにかく、其方、天使と言うたが……まさかここは本当に……」

「極楽ですよ。あ、誤解されがちですが、あの世はここだけ、地獄とか無いですよ」

「左様か」

「あれ、あっさり信じるのですね」

「ああ、まぁな。死を疑い様が無いくらい惨い殺され方をした」

「それはお気の毒に」


 何のつもりか、ヌッファエルが義輝に腹筋を擦り付けてきた。


「……気持ち悪い」

「酷い! 慰めの筋肉祭りを!」

「何だそれは……」

「辛い死に目に遭った者を癒す、私なりのサービス……気遣いです」

「いらぬ」


 割とマジで。


「うぅ……まぁ、良いです。とりあえず私は仕事を遂行します」

「仕事?」

「はい、死してここへ来られた方に極楽を案内するのが私の役目です」

「案内がいるのか、それは助かるな」


 ふむ、と少し義輝は考え……


「早速ですまんが、極楽でも栗饅頭は買えるのか?」

「はい、現世にある大抵の食べ物はありますよ」

「それは良かった」


 信長には早死したらぶっ殺す、と言われていた。

 極楽でまた殺されてはたまった物では無い。


 遠い未来になるだろうが……信長がこちらに来た時、少しでも機嫌を直せる様に備えておこう。


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