問題の大きさは関係ない。
「濱中君、今日は仕事終わりなんや。残業せえへんの?」
「林さん、会社から残業すんなって通達が来たんでしてないんですよ。無理に仕事を終わらせるから、
休憩時間なんてないですよ。こういう時は人って人と比べたがるから、待遇みたいなそんな些細な事
でも文句や愚痴が出てくる。出勤時間が遅くても同じ時間で帰らされたら、早くから出勤している人に
文句を言ったりしてます。早くから出勤して有難うって気持ちは皆無ですね。会社もそんな人に感謝
なんてしてなくて、むしろ定時を保証しているのだから有難いと思えって言わないにしてもそういう
言動に出てきてますからね。どこが景気が回復してるんでしょうかね。消費税をあげて給料が変わらず
生活して、パートさん達の日々のストレスを聞かされる。本当にこんなんで、会社って成り立って行け るもんなんですか。」
「濱中君、これは僕の見解なんやけどね。多分成り立たないやろね。すぐ辞める方がこんな暗い状態の
会社で心まで吸い取られる事はないと思う。残ったとしてもパートさんにしてみれば、いいや社員に
してみても、気を使いながらの言動や行動になってしまうからね。」
「今と全然変わらないじゃないですか。今だって気を使ってパワハラって言われないようにとか、
特定の人に贔屓しているように見せない工夫とか、結構、どんな会社もやってる事やと思いますけど
林さんが言いたいのはそういう事じゃなさそうですね。」
「そう、今の環境よりももっと悪くなった状態で同じ言動や行動になってるって事、こんな状態で
誰かがパートさんがちょっとしたきっかけで腹が立って、裁判するって言ったら会社は負けるやろうね
ただ、今は変な意味で牽制しているだけやねん。フランス革命の本当の恐ろしさは、国王一族を
ギロチンでかけた後、自由とは分からないで市民が好き勝手に暴れた十数年の間が本当に怖い
規模の大小はあるけど、一度暴発すると、それ以上の力で抑えるか、新しいルールを作るか
それそのものをなくしてしまうかしか、方法はないと思う。会社で言えばなくしてしまうって
言うことは、パートさんの会社にもそんな考え方はないから、新しいルールを作る事になるか、より
厳しい制約を課すかって事になる。そうやって何人か辞めさせてまた同じような運営になる
今の地方自治がそのまま会社に反映されてるだけで、変わらないって印象がより強くなって、終いには
自分さえ良ければいいと言う風になっていく。今はそんな時代じゃないかな。」
「林さんがそこまで考えてる人やって思いませんでした。音楽好きで、賭け事はしないし、飲み会に
参加してはらないので、正直、食えない人やなって思ってました。何か目指すものはあるんですか。」
「今は、何もないよ」
更衣室から出て帰宅する準備をした。
濱中君になんで素直に地方議員になって政治を立て直すって言えなかったんだろう。まだ恥ずかしさが
あるから言えなかったそういうのも事実やし、当選する実感の様なものが無いから言えないのか。
自分にまだ自身がないからってのが正解やろうって考えた。
明日は、リーダー研修やから、中家部長に話せる機会がある。濱中君の話も最もやけど、実際
会社のトップにいる人はどんな考え方を持ってるんやろう。




