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04 白羽の矢

 中庭は静かで日当たりがいい。

 ぼんやりと過ごすには最適な場所だ。

 女神の彫像が抱える水瓶から綺麗な水が流れる様子を見ながら、コスモスはごろりと花の上に寝転がる。

「本日も良い昼寝日和ですね」

 空は青く、雲は白い。

 太陽は穏やかに地上を照らし、花々は鮮やかに咲き乱れる。

 木の葉が揺れ、鳥の囀りを聞きながら夕方まで寝て過ごすのが日課になりつつある。

 コスモスは待っていることしかできないとは言え、穏やか過ぎる日々にこれでいいのかと首を傾げた。

「ねぇ、聞いた? 最近は出ていないんですって」

「知ってるわ。神官兵が毎日がっかりしているものね」

 うとうとしていれば聞こえてくる修道女の会話。コスモスがそちらの方へ顔を向ければ、ベンチに座った二人の修道女がいた。

「がっかりされてもね……」

 そう呟いたコスモスは困ったように眉を寄せる。

 無機物だろうと、有機物だろうと、大抵のものはすり抜けられると知ってから面白半分でわざとすり抜けたりして遊んでいたコスモス。

 何も感じない者もいれば、ハッとしたように周囲を見回す者もいる。悪寒を感じて震えだす者もいたりと迷惑な事をしながらマザー以外に自分を認識できる人物がいないかと探していた。

 完全に恐怖を与えてしまったかと思っていたが、幸福の予兆とされているというのは予想外だった。

「神官兵ばかりずるいわよね」

「しょうがないわ。最近は静かだけれど、マザーが時折一人で楽しそうに話しているようね」

「噂が大きくなってしまって、驚いちゃったのかしら」

「そうよね。もしかしたら怖がらせてしまったのかもしれないわよね」

 偶然が重なっただけの出来事なのに、これほどまでに期待されてしまうと静かにしていたくなる。がっかりした様子で溜息をつく二人に悪いなと思いながらコスモスは溜息をついた。

「盛り上がりすぎているものね。最近は特に」

「精霊のいたずらも頻発していたもの。つい興奮してしまったけれど、怯えて消えてしまうかしら」

「そ、それは非常に困るわね。ソフィーア姫の邪魔をしてしまったのだとしたら……」

 そこまで言うと二人は同時に噴水の女神を見つめる。目を伏せて水瓶を構えた女神は何も言わず柔らかな光を受けたままそこに佇んでいた。

「私達の責任になるのかしら……で、でもそんな事で消えてしまうわけないわよね?」

「どうかしらね。精霊は繊細で気まぐれと言うから。とにかく、大人しくしていましょう」

「もちろんよ」

「用もないのに礼拝堂へ行ったり、マザーの執務室を遠くから覗いたりする貴方は特にね」

「えっ、やだ、私そんな」

 慌て始める修道女に冷ややかな視線を向けるもう一人の修道女。

 無言の視線に堪えかねた彼女は「ごめんなさい」と叫ぶようにして走り去っていった。

 その様子を見ていたコスモスは、何となく近くにあった花を残った修道女の隣に置いてベンチをトントンと叩く。

「あら?」

 驚いた顔をした彼女は周囲を見回していたが、花を手に取るとその花に祈りを捧げるように目を伏せた。

「精霊様、いらっしゃるのでしたらどうかソフィーア様にお力をお貸しください」

 期待するような精霊じゃなくてごめんなさい、と謝ったコスモスはその場に居づらくなってふわりと屋根の上に移動した。

 周囲の景色が一望できる鐘楼へと行き、先ほどの言葉を思い出す。

「精霊様、か。ただの霊なのに悪いことしたなぁ」

 何もしなかった方が良かったか、と後悔しながらコスモスは溜息をついた。

 修道女のあの言葉はソフィーアに幸福を授けてくれということなんだろうか、と考える。

 自分が起こす怪奇現象が幸福の予兆として受け取られているなら、それもあるだろう。

「後でマザーに相談してみよう。気にするなって言われるとは思うけど……ん?」

 唸っていると花の蜜を吸っていた蝶が、花からこちらへと向かってくる。

 光によって黒い羽が虹色のように見えたりする綺麗な蝶は、まるでコスモスの存在が分かるかのように彼女の隣にとまった。

「綺麗だね」

 カメラを持っていないことを残念に思いながら、コスモスは頬を緩めて蝶を見つめる。

 一時期パソコンの壁紙にしていた美しい蝶のことを思い出していた彼女だが、パソコンという単語に顔色を変えた。

「あ」

 もし仮に、このまま帰るのが遅くなった場合は現実の自分はどうなるのだろうかと考える。

 今が霊体だとすれば肉体は元の世界にあるだろう。

 となれば、連絡のつかない自分を心配した誰かがアパートにやってきて見つけている頃だろうか。

「流石に、無断欠席なら会社から家に電話行きそうだし。だとしたら、お母さんとか来てくれてるはず」

 放置されて肉体が酷いことになっていないと思いたい。

 冷や汗をかきながらコスモスは自分の肉体が無事であるかどうか不安になった。

 パソコンの中に保存してあるデータのことなど忘れてしまうくらいに。

「無事に帰れたとしても、肉体が腐ってたりしたらシャレにならない……」

 どうか無事に帰れますようにと祈るコスモスの隣で、蝶はゆっくりと羽を動かした。




 白い衣に身を包み、今日も彼女は一心に祈りを捧げる。

 何を祈っているのか、何に対して祈っているのか。そこまで強く拘る理由は何なのかと疑問に思っていたコスモスだが、マザーがそれらの答えを教えてくれた。

 この国だけではなく、全国の王族に共通するしきたりがあるのだと。

 そのしきたりとは、王妃になる者と王族の姫は成人の儀を迎えるまでに精霊の加護を得なければいけないというものだ。

 さぞ困難な道のりなのだろうと想像しそうだが、必ず加護は得られるので形式的なものだとのことだった。

 遠い昔に各精霊王と旧き人の王たちの間で、清らかな心身を持つ乙女にその加護を与え国に平穏を齎すという取り決めがなされており、精霊の中でも選ばれたものがしきたりに則って乙女の加護につくというのだ。

 その乙女というのが王妃になる者と、王族の姫というわけである。

 現王妃も精霊の加護を持ち、その力を揮って国のために役立てているらしい。

 王と王妃の間には三人の娘がおり、それぞれ輿入れを済ませているが当然守護精霊とその加護を持っている。

 王弟の娘であるソフィーアも加護を受ける立場なのだが、どうやら彼女だけいつまで経っても精霊の加護を受けられないという。

「はぁ。あんな美少女を精霊が嫌うわけがないでしょうから、不思議ですね」

 幼い頃から祈りを欠かさず、皆に慕われ愛されているソフィーアに何故精霊が来ないのか関係者は首を傾げる。

 ちなみに早い者だと、生まれた時にもう精霊がついてしまうのだそうだ。

「困ってしまうわけよ。姫には落ち度が無いし、今までこんな事一度も無かったから私たちも混乱していてね」

「生まれた時に加護を受けるように見えるんですけどね。強力な加護がつきそうですし」

 聖女と呼ばれるソフィーア姫には、素晴らしい精霊の加護がつくに違いないと成人の儀を心待ちにしている国民が大勢いる。

 他国からも国賓や観光客が来るために、今からその準備をしている者達も少なくないそうだ。

 盛大なお祭りだと教えてくれたマザーに、コスモスも想像しただけでワクワクしてくる。美味しい屋台とか限定のアイテムが並ぶのだろうかと思いながら首を傾げた。

「うーん、それって精霊に直接聞けないんですか?」

「聞いたわよ。聞いて、ますます混乱したの」

「え?」

「近づけないんですって。姫に加護を与えて守護精霊になろうとすると、薄い膜みたいなのに弾かれて加護を受け付けないって言うのよ」

 聞いておいてなんだが、ただの人魂が聞いてしまっていい話なのだろうかとコスモスは困る。

 けれどマザーはそんな彼女を無視するかのように盛大な溜息をついて額に手を当てた。顔の皺が前よりも増えた気がすると言えば怒られそうだが疲労が濃いのは見てわかる。

「ガーベラさんは、それを何とかできないんですか?」

「それがね……もっと厄介な事が分かってどうにもならなくなったの」

 八方手詰まりというやつかと呟くコスモスは、厄介事が厄介事を呼ぶのはよくありますよね、と頷いた。

 強い力を持つマザーでもどうにもならないと言うのならお手上げだろう。

 しかし、このままではソフィーア姫が大変な事になるのは目に見えている。

 何かいい案はないのだろうかと思うコスモスは、じっと自分を見つめるマザーに気づいて首を傾げた。

「ん?」

「厄介な事、聞きたいわよね?」

 そう言われると「いや、いいです」とお断りしたくなるコスモスだが拒否権はなさそうだ。

 これは厄介ごとに巻き込まれるパターンか、と顔を引きつらせながら後ずさりするコスモスは「これから中庭で日向ぼっこしてこないと」と言って扉に向かう。

 そんな様子をにっこりとした笑顔で見ていたマザーは小さく息を吐いた後、哀切に満ちた表情に変えて口を開いた。

「その薄い膜を消し去るのは簡単にできるのだけど、そうすると姫が急激に弱ってしまうのよ。消し去った時はその場で倒れて数日意識が戻らない事もあったわ。だから、少しだけ膜に穴を開けるように一箇所だけ消す方法も試してみたのだけど、それでも今までとは比べ物にならないくらいに体が弱ってしまって結局元に戻したのよ」

「は……はぁ。それは素晴らしい神のご加護ですかね?」

「例えそうだとしても、王家の姫として生まれたからにはしきたりは絶対よ。それが出来ぬ姫が出たとなれば他国から何を言われるかわからない上に、姫の立場も危ういわ」

 強く鋭い光を発する紫の瞳に縫いとめられたかのようにコスモスの体が動かない。背中にある扉を抜けてしまえば部屋から出てしまえるというのに酷く汗ばんで息苦しい。

 目に見えぬ重石が圧し掛かっているような感覚。

「精霊の加護を得られぬ姫は、一生幽閉かしらね。災厄を齎す存在として、この国が脅かされる原因になるかもしれないわ」

 あぁ、怖い。どうしましょう。

 そう呟いて頭を左右に振るマザーを見上げながら、コスモスは沈んでいく体を持ち上げようと必死だ。このままだとぺしゃんこに潰れてしまいそうな気がする。

 例え床をすり抜けたとしても、この目に見えぬ重石はどこまでも追ってくるような気がして怖い。

「私にどうしろって言うんですか」

「……え?」

「わざとらしい反応はやめてください。そして潰れるので早くコレどかしてください」

 床をすり抜けた瞬間に上手く回避できるかと試したコスモスだが、強い反発にあって床をすり抜ける事ができなかった。恐らく机に頬杖を付きながらこちらを見つめてくる老婆の仕業だろう。

「コスモスったら、優しいのね。流石私の娘だわ」

「いつ貴方の娘になったんですか。そもそも、ただの人魂である私に何をしろと? 何もできませんよ?」

「貴方が精霊の代わりをしてちょうだい」

「……」

 人魂が精霊の代わりを務めるなんて馬鹿げている。

 呆れたように溜息をつくコスモスは疲れたようにマザーを見上げた。

「馬鹿なこと言わないでください」

「あら、私は馬鹿だとは思っていないわ」 

 フッ、と消える重圧感にほっと息を吐いてコスモスはフラフラと浮き上がる。随分と体力を消耗して今すぐにでも眠りたい気分だ。

「それにいつまでも騙せるわけじゃないからずっと、なんて言わないわよ。姫の成人の儀が終わるまででいいから」

「だから無理でしょう。精霊と人魂じゃ天と地程の差が……」

「大丈夫よ。大して違いはないし、気づく人はいないわ」

「いやいやいや、教会の責任者が何言ってるんですか」

 一番言っちゃいけない人だろうと声を荒げてもマザーはにこにこと笑うだけ。浮遊霊が精霊の代わりをしてましたなんて見る人が見れば一発でバレるだろうに本気なのかと恐怖した。

 いざとなれば消されるのは自分だけでマザーは上手く逃げる気なんだろう。

 それよりも早く帰り方を教えてくれ、情報をくれ、と不機嫌に声を荒げるコスモスにマザーは悲しそうに目を伏せた。

「残念だけど、今のところ有力な情報はないのよ」

「だからってそんな無責任で恐ろしいことに協力できません」

「ソフィーアが可哀想だと思わない?」

「可哀想だとは思いますけど、偽装したらそれこそ精霊が怒るでしょう? 人魂と精霊を一緒にされるんですよ?」

 侮辱されたと精霊たちが荒ぶればそれこそ大変な事態になるだろう。

 そうすれば結局ソフィーア姫に守護精霊がつかないことがばれてしまう。

「何か問題があれば私を悪霊扱いして責任押し付けて終わりとか考えているんでしょうけど、鬼ですか」

「ちょっと待ちなさいコスモス。私はそこまで言ってないわよ。それに失敗したとしても責任を貴方に押し付ける気なんてないわ」

 けれど、そういう案もあるわねと呟いたマザーにコスモスは顔色を変える。

 余計な事を言ってしまったと悔やむがもう遅い。

「冗談よ。ソフィーア姫に加護をつけられないのは精霊側にしても一大事なのよ」

「そうなんですか? 困るのは姫やその周辺だけのような気がしますけど」

「古来の契約に則っての儀式が遂行できない精霊なんて、精霊の世界でも大問題だわ。厄介なものに目を付けられる前に何とかしないと」

「厄介なもの?」

 形式的なものに過ぎないという儀式一つでここまで大変な事になるのかと驚きながら、ソフィーアにだけ守護精霊がつけられない理由を考える。

 いくら頭をひねってもコスモスの知る情報ではさっぱり分からない。

 誰かに呪いでもかけられたんだろうか、と呟くコスモスの声にマザーの目が一瞬だけ鋭くなる。

「とにかく、貴方はソフィーア姫の守護精霊のフリをしてちょうだい。精霊には話を通してあるから大丈夫よ」

「ああ、それなら……って、拒否権なしで最初から決定済みだったんですか!?」

「ごめんなさいね。頼れるのは貴方しかいなかったのよ。国の命運もかかっているようなものだから」

 だからといって退路を断つのはどうかと思う、と歯軋りをするコスモスだったが可哀想に思うソフィーアの力になってあげたいのも事実。

 何かあれば全ての責任をマザーに押し付けようと彼女は大きく頷いた。

「貴方に関する情報も入手しづらいから、長期滞在になってしまうのを考えると自衛できたほうがいいじゃない」

「自衛と言われても、大抵のものはすり抜けられて攻撃すらすり抜けるような状態でですか?」

「何があるか分からないでしょう? 万が一の場合に備えておくのは当然よ」

「万が一」

 教会にいる限りは安全だと思っていたコスモスは、万が一のことを考えておらず動揺したように視線を落とした。

 自分に害をなすような存在が今のところいなかったので安心していたが、マザーの言う通りそういう事もあるかもしれない。

 無事に帰るためには生き延びなければならないので、対処ができるなら学んでおいて損はないだろうとコスモスは考えた。

「自衛と言っても、人魂の私に何ができるんですかね。気配を消して脅威が去るのを待つとか、逃げて逃げて安全な場所でじっとしているとかしか思い浮かばないんですけど」

「あら、貴方にはアレができるじゃない。精霊のいたずらとも言われているけれど」

「あれはただの怪奇現象じゃないですか」

 感情のままに暴れるだけなので疲労が大きくコスモスとしてはあまりやりたくないものだ。

 自分でも何がどうなるか分からないというのが怖い。

「それは力の制御が上手くできていないだけよ。ちゃんと覚えれば扱えるようになるわ」

「……ただの人魂なのに?」

「ええ、ただの人魂なのによ。それだけの素質はあるんだから、あとは貴方のやる気よね」

 やる気と言われて黙ってしまうコスモスを見つめていたマザーは、ぽつりと呟いた。

「コスモス、貴方は姫もすり抜けていたわね」

「あっ、いや、その……調査の一環というか、誰か私に気づかないかなと。すみませんでした」

 まさか目撃されていたとは知らなかったコスモスは、体を大きく震わせて深く頭を下げた。

 下手に言い訳をし続けるより早く謝罪してしまった方がいいと思ったのだろう。

 てっきり怒られるかと思った彼女だったが、マザーは「調査ね」と苦笑するだけだ。

「何か分かったことがあった?」 

「いえ特には。他の人と違って何をしても無反応だったくらいで。結局、私を認識できるのはマザーしかいないんですよね」

「なるほど。何度も通り抜けしていたのは、反応を確認するためだったのね」

「す、すみませんでした」

 謝罪しながらコスモスはその時のことを思い出す。

 あの時周囲には姫付きの侍女と護衛の神官兵しかおらず、マザーの姿はどこにもなかった。

 自分を認識できるのはマザーだけなので、彼女がいないことを念入りに確認した上で試した行為だったことを思い出して寒気がした。

 カマをかけられていたのか、それとも見えない目で見られていたのか。

「ふふふ。精霊が教えてくれたのよ。コスモスが変な事してるって」

「……精霊?」

「そう精霊。ほら、精霊はどこにでもいるのよ。貴方には見えない?」

 丸くて淡く発光しているものだけど、と言われながらコスモスは近くにあったそれらしいものを掴む。

 中心部分が薄緑に発光している白くふわふわした“何か”

「もしかして……これですか?」

 今まで景色の一部としてしか認識していなかったが、どうやらこの大小さまざまな浮遊物体が“精霊”らしい。

 意思疎通ができないから自分と同類ではないと分かってコスモスが興味を失ったものだ。

「ケサランじゃないのか……」

 その可愛らしいふわふわした見た目に、てっきりケサランパサランの親戚だと勝手に思っていたコスモスは、これが精霊なのかと掴んだものをじっくり見つめる。

 掴まれているソレは暴れたりもせず、彼女の両手の中でゆらゆらと揺れている。薄緑色に発光している中心部分を見ていれば、ゆっくりと点滅しているのが判った。

 温かくて触り心地が良い。

「へぇ、これが精霊!」

「こら、そんな乱暴に扱わないでちょうだい」

 ポンポンとボールのようにリズムをつけて上に投げて遊ぶコスモスを、マザーが窘める。精霊は抵抗するでも反撃するでもなく、されるがままにコスモスの手の上で弾んでいた。

「はーい」

 天井近くまで弾んだ精霊を両手できちんとキャッチしてマザーの机にそっと乗せる。盛大な溜息をついたマザーは間延びしたコスモスの返事に注意する事なく頭を左右に振っていた。

 ころり、と机の上で転がる精霊は呼吸をするように淡く点滅して軽く跳ねる。

 やはりケサランパサランにしか見えないと、コスモスは食い入るようにソレを見つめるのだった。




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