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FINAL MASTER  作者: 飛上
Act. 05.混迷の王都~Laclone~
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第03節

すでにガイナーの背後からは逃げるものたちを狩るべくサーノイドの軍勢が徐々に距離を詰め始めてきていることは誰の目にも明らかなものであるだけに、村人はもちろんのこと、護衛に就く戦士達においてもまた云い難いまでの恐怖感が植え込まれていることも事実である。

それでもこのまま手をこまねいているだけであったとしてもいずれは追撃してくるサーノイドたちによって襲われてしまう。

ガイナーは一抹の希望を携えて歩いてきた道を警戒しつつ小走りに進む。

すでに護衛に就いていた戦士のうち、半数はサーノイドやオーク達の凶刃に倒れ、村人たちを護るのはガイナーとわずかに数人が残るのみという中、状況は徐々に最悪の方向へと進んでいた。


追われる立場にある村人達にはすでに生きていることへの苦痛を味わっているかのような錯覚を起こしてしまうほどに憔悴しきったものが面に色濃く残っている。それでも足が動く限り、村人たちはたどたどしくも進んでいく。

それはまるで死者の魂が冥府へと誘われていくように映っていたのかもしれない。

サーノイドが襲ってくるまでのわずかな時間の間にガイナーは村人から分けてもらったパンを口にしながら、体力の回復に努めた。


「ラクローンへは後どのくらい歩けばいいんだ?」

この付近の土地勘をガイナーが有しているわけではない。最低限の地理観を把握しておく必要もあったために、イースラを抱きかかえながら歩くハ-クに尋ねる。

身体の軽いとはいえ、人一人を抱えたまま歩くハ-クはやや息を荒げながらも、ガイナーの問いに応える。

「…かなり回り道を強いられてしまっているからな。

そうだな、もう少し行けば森を抜けるはずだ。そこから先の崖をぬければあとは海岸線からラクローンへ進んでいけるはずなんだが…」

「森を抜けてしまうのか…」

ハ-クの答えにガイナーはおもわず顎に手を当てながら少し考え込んでしまう。

山道は木々の多く並び立つ地帯から岩肌をさらけ出した不毛な地帯にさしかかろうとしているという。この切り立った断崖にはさまれた道を抜けることが出来ればラクローンへの平坦な道が残るのみとなる。

だがここより先は隠れる場所が限られてくるために、追撃を逃れることがより一層困難なものとなることを意味している。ガイナーの懸念もその部分にあった。

「みんながんばるんだ!!

もうすぐカストさんのところからきっと助けが来る…

それにフィレルたちもこっちに駆けつけてくれる。そうすれば…」

皆を鼓舞するように護衛の戦士の一人が声を荒げる。励まそうと言葉を並べるも自身においても確信というものがあるわけではない。

だが、戦士の言うようにカスト達の助けがないことには誰一人助かることがないということも事実である。

「このままじゃいずれ追いつかれてしまうな…」

その戦士の言葉を自身に取り込んで奮い立たせようという思いで聞いてはいたガイナーであったが、遅々と進む村人達を見てから後ろを振り返りながらこのときばかりは悲壮感を漂わせるばかりであった。

「・・・・・」

そんなガイナーを傍らにいた少女は眉を寄せながらガイナーの表情を伺うように覗き込む。

「!?

大丈夫、何とかなるよ…きっとね。」

エティエルに気付いたガイナーは我ながらまた楽観的なものを通り越して無責任なものではあるという自覚は持ちながらも、傍らに立つ少女に告げる。

いずれにせよ何とかしなければならないことは紛れも無いことであるのだから。


村人達が連なる行列はやがて森を抜け、あちらこちらに岩が散乱したままの断崖に差し掛かろうとしていた。

その向こうにはうっすらとではあるが海岸線が視界に映し出された。

「海が見えた…」

「あと少しで、ラクローンだ!!!」

その言葉に村人達はわずかにでも希望を見出したのだろうか、歩く速度が上がる者も現れる。

今はどんなことになろうとも進むほかはない。誰もが思うところであった。


「・・・・・!!??」

だが、森を抜ける少し手前にあったガイナーは背後からの気配を感じ取ろうとしていた。

「…

追いつかれてしまったな…」

ガイナーは殿に立つ戦士達を呼び止めて体制を整えようと勤める。

心内はもうしばらく先送りにしたいと思う反面、この時が一番戦闘に適した状態であるとも思い始めている自分がいたことに少しばかり苦笑する。この森を抜けてしまうと岩と断崖のみの地形になる。道が狭まるだけに少人数で戦うことも叶うものではあるが、正面から戦う羽目に陥ってしまう。遮蔽物があるこの一帯が奇襲を仕掛けることの叶う最後の場所と考えていた。

「ここで何とか食い止める。それまでに出来るだけ遠くに進んでいてくれよ。」

正直なところ、わずかな人数でサーノイドの軍勢を止める事は不可能に近い。だが、戦うことの出来ない村人達が近くにいるのといないのではやはり、身軽さでいえば全く違ってくる。

「…すまない。無事でいてくれよ…」

「…死なないでね…」

イースラを抱きかかえたままのハ-クはそう告げて先頭集団に追いつくべく足早にこの場をあとにする。

「君もみんなと一緒に…」

ガイナーがそう言う前にエティエルは首を横に振る。

「けどエティエル…」

何度かこの場を離れるように促すもエティエルは頑なだった。

「…ここにいたままでは、君を護れるかがわからないんだ。だから…」


「ぅ…!!!??」

背後にいた殿に就いていた戦士が声にならない声を上げ、ばたりとその場に倒れこむ。それによってガイナーの言葉は遮られてしまった。

「!!!??」

戦士の額には小さな短剣よりも細く短い針のような刃物が突き刺さっていた。

その刃物によって戦士はこの世のものではなくなってしまっていた。

「ぅ…うわぁ!!!」

一瞬の出来事に残りの戦士達の狼狽振りはさらに混乱を招き始めていた。

「…くっ!

もうすぐそこまで来ている!!

ともかく、後ろから目を離すな!!!」

全く気配をつかめぬままの出来事に狼狽してしまいそうな様子の残りの戦士達を纏めようとガイナーは体勢を整えさせ、エティエルを自分の背中に隠すように立つ。

すでに一人が倒れて、こちらに残る人数はガイナーを含め、わずかに7人となっていた。


「…っ!!??」

今度はガイナーめがけて空気を切り裂くような音とともになにかが突っ切ってくる。


カッ!! 

カキィン!!


慌てて剣と鞘で勘を頼りに空を切るように払って飛び掛るものを墜としてみせると、先ほど戦士の命を奪った刃物が転がっていた。

「まずいな…」

ガイナーはこれまでのように近付くものの気配を読み取ろうと意識を集中させるも、周囲には何の気配も感じられずにいる。

これまでのような兵士やオークとは違い、気配を断って動くことが出来る存在がガイナーの前に迫ろうとしているということだけは理解できた。

「みんな、とにかく身を隠すんだ。どこから狙ってくるかわからない!!」


シュッ!!

シュッ!!!


「っ!!?」

再びガイナーに向けて別の方向から飛び込んでくる針に鞘を構えて受け止める。

今のところは相手との距離があるために針を払い落とすことは辛うじてではあるが出来ている。しかし、相手は明らかにこの場へと距離を詰めにかかってきていた。

「エティエル。少しずつここから離れるんだ…」

エティエルに言葉を向けるわずかな間においても見えざる敵は容赦なく針を投じてくるために一瞬でも気の抜けずにいる。

何より背後にエティエルがいる状況でガイナーは完全に矢面に立たなければならなかった。

「・・・・・」

「…

どうすればいい…!?」

エティエルが傍にいる間は逃げるわけにはいかないという使命感は当然のように有しているが、状況は悪化の一途をたどっていく、ガイナーにはいまだにその打開策が見出せず、自問自答を脳裏で繰り返す。

“右からくるわ!!”

「!!??

…え?」

心中に響いてくるような言葉に戸惑いながらもガイナーは言われたほうに意識を向ける。

「…っ!!」

これまで何も存在することのなかった空間に顔を向けたとき、目の前にはタイミングを合わせたかのようにガイナーに向けて切りかかろうと飛び込む人影が現れていた。

咄嗟の動きで剣を前に出して襲い来る刃に剣を交錯させる。


カキィン!!


剣を交錯させた瞬間、人影は速やかに身を翻し、ガイナーの視界から姿を隠す。

「はぁ…はぁ…あぶねぇ…」

ガイナーの腕に身の毛が逆立つようなほどの感じがほど走ってくるのが自覚できる。

あの言葉がなければガイナーは確実に命を落としてしまっていたことだろう。

「…エティエル??」

ガイナーにはその言葉を発した主を見やる。

エティエルは生来自らの口から言葉を発することは出来ずにいる。しかし、これまでの顛末でガイナーだけはエティエルから心に直接とどいてくるような言葉を聞き取れるような気がしていた。

推測でしかなかったことだったが、今回のことで確信を持つようになる。


エティエルの言葉がガイナーにだけは直接届いてくる。


それがなぜなのかは未だに解明されたわけではない。だが、この言葉を持たない少女はガイナーが読み取れない相手の気配を察知することが出来ていた。

「エティエル…奴らの気配がわかるんだね?」

ガイナーの問いにエティエルは小さく頷く。

エティエルの仕草にガイナーも頷き、再び姿の見せぬ敵に向けて剣を向けて意識を集中させる。

しばらくの間、静寂が周囲を包み込む。やがて風が周囲に吹き抜け木々がざわつき始めたとき、ガイナーの心にエティエルの言葉が流れ込んできた。

“再び右から…!!”

エティエルの言葉に今度はためらうことなく小さく剣を右に向け、意識を集中させる。

そこにはガイナーの隙を突こうと襲い掛かる黒い人影が突っ込んで来ようとしている姿が見て取れていた。

「くっ!!!!」

ガイナーは狙い定めるかのごとく黒い人影に向けて剣を振り上げる。


ズシャァァ!!!!!


剣先に重い感触が残ることが柄を握る両手に伝わってくる。

手ごたえは確かにあった。

剣は人影の脇腹を掠めるように斬り裂いていた。

「ぐぅ…」

小さく呻く声がガイナーの耳に届くとともにその黒い人影の姿が映し出される。

ガイナーに斬られた脇腹を左手で押さえながらガイナーと距離をとった位置まで退がり膝をついてうずくまる。全身を黒い装束で身を包み頭にも顔をすっぽりと覆うようなまでの頭巾を着けていたためにどのような表情をしているのか把握できないものの、明らかにこれまでの兵士のように敵意はむき出しにガイナーに向けていた。

「こいつらも、サーノイドか…」

手傷を負ったとはいえ、これまでとかわらぬ敵意と気配にただならぬものがあるという認識がガイナーの中に根強く残されてくる感じがした。

“右から違う影が来る!!”

「右っ…!!?」

視線を向ける先に再び繁みをざわつかせて飛来する物体がガイナーを狙って飛んでくる。

これまで迎撃してきた刃物と同一のものであると認識していたガイナーは上半身を反り返すような体勢をとりながら飛んでくる刃物をかわす。

「やはりまだいたか…」

一体で向かってくるとは考えにくかったが、先ほどの攻撃でガイナーの前には同じような敵が二体以上は存在することを把握する。

“今度は正面から!!”

「正面!!?」

ガイナーが目の前の人影に注意が向けられている隙を狙うように再び針のような刃が空を切って飛び込んでくる。


カッ、カキィン!!!


ガイナーはこれまで常に受け手に回るしか手立てはなかった。だが今はエティエルが位置を示してくれるために今度は後手に回ることなく正面を向いて剣で刃を弾き飛ばすことに成功する。


「…!?」

手裏剣をはじいたことでわずかに隙が生じたと判断したのか、味方の援護を見てすぐに手負いの黒装束の戦士は再び針を手裏剣のように飛ばしながら一気に距離を詰めてくる。

針を弾くことは成功するも、距離を詰めてくる黒装束の戦士はそのまま腰に忍ばせておいた剣を手に取る。

通常の兵士が手にするようなものとは少し異なり、刀身は黒く塗られた細身でそれほど長いものでもない。むしろ手裏剣のように飛ばしてきていた針を大きくさせたようなものという意味合いが強い。

「たあぁぁっっ!!!」


カキィィン!!


「くっ…」

黒装束の戦士の初撃は駆け寄る勢いもあって大振りに薙ぎつけてくるるも、ガイナーも剣を両手に構えたままに剣戟を受け止める。

その場で足を止めながらも、お互いに小さく振りぬくように剣を振るいながらその場で刃を鳴らす。

何合か目の打ち合いを続けた後にタイミングを見計らうように距離をとっていく。

「このっ…」

距離をとった黒装束の戦士に追い討ちを仕掛けようとするも、再びあらぬ方角からの手裏剣にそれを阻まれてしまい、追撃を断念させられてしまう。


「くそっ…やりにくい…」

これまでガイナーが相手にしてきたのはどちらかといえばガイナーに似た性質のタイプの戦闘を行う者が多かった。

だが、目の前に立つ相手はガイナー以上の身軽さを武器に執拗に攻めたてて、相手の疲労を誘うような戦い方を強いてくる。

当然のことながらガイナーの体力も無尽蔵であるはずも無く、腕が剣の重みに耐えられなくなった時が近いうちにやってくる。

何より、向こうは隠れた位置にもう一人存在する。

姿こそ現さないものの、目の前の戦士と同等の存在がいると考えられた。

「…どうしたものかな…」

手早く手負いの戦士を打ち倒して後ろに控える存在に対応したいと逸る気持ちが昂ぶってくる。

だが、そうなればガイナーも無傷ではいられなくなってしまうことがわかっているからこそ、それを自制させる。

向こうは手負いのはずではあるはずなのだが、それを圧してでも対峙してくることにサーノイドの兵士の執着心がうかがえる。


そんなガイナーたちをよそにして森の随所からオークの集団が姿を現し始めているのがガイナーの目にも留まる。


「気をつけろ!!オークだ!!」

「くそっ、行かせるか!!」

それらを迎え撃つべく、身を潜ませていた残りの戦士達も各個で戦闘を開始する。

「バラバラになるな!!

複数で囲む形で一体ずつ倒していくんだ!!」

意識をサーノイドの戦士に向けながらもガイナーも声を上げて指示を送る。


ガイナーの意識が仲間の戦士たちに向けられているその瞬間を狙って再び手負いの戦士が刃を向けてこようと駆け出し始めていた。

「…!?」

正面から襲い来るものにはガイナーは十分に対応が出来る。すぐに突きかかってくる剣を打ち払うべく短く振り下ろす。


ガッ!!


戦士が突き立てる黒塗りの剣をはじき落とすことに成功するが、サーノイドの戦士はそこで終わることは無く、無手になった状態のままガイナーに掴みかかろうと手を伸ばす。

「くっ…」

剣を振り下ろしたままの状態でいたガイナーに戦士の腕を振り払うこともままならずにガイナーは襟首を掴まれてしまう。

「しまっ…!!」

そのまま首に腕を回し、持ち前の身のこなしでガイナーの背中に回りこまれ、羽交い絞めにする形で後ろ手に首をじわりじわりと絞め始めてくる。

「ぅ…ぐぁ…」

首に張り付くように回される腕にガイナーの両腕は剣を持ったままの状態ではあるものの、対応が為せぬままに絞まってくる。

サーノイドの戦士はそのままもう片方の手に腰に着けたままの短剣を取出し、ガイナーに突きたてようとしようとした時だった。

「…くっ!!」


ボコッ!!!


「がっ…」

その声とともに首にかけられていた腕がするりと抜ける。

ガイナーは腕が抜けるのを感じてすぐに振り返り、突然のことでうずくまったままでいたサーノイドの戦士を力の限りに蹴りつけた。


「かはっ…!!!」

その蹴りによって戦士の身体は軽く飛ばされ、近くに立つ大木にぶつかる形で崩れ去る。

ガイナーはようやく呼吸が叶う状態に戻った時、一気に肺に送り込んだ空気の量にわずかにむせた感じで咳き込みながら、目の前に立つ太めの木の枝を手にした少女の姿を見た。

ガイナーが背後を取られたとき、少女は目の前に落ちていた木の枝を拾い上げ、黒装束の戦士の頭部を力の限りに殴打していた。

「はぁ…はぁ…エティエル…助かったよ…」

少女の持つ木の枝を見てガイナーは瞬時に何が起こったのかを理解した。

咄嗟のことに身体を動かした少女はガイナーの無事を見て気が抜けてしまったのか、あとになってから身の震えに襲われ、木の枝を地面に落として身体を抱くように両の腕を掴む。

「エティエル…」

少女の目にはうっすらと涙が浮かぶのをガイナーはみていた。

「・・・・・!!」

エティエルが再びなにかの気配を察知した時にガイナーもまた同じ位置に気配を察していた。

オークの集団の一角がガイナーに向かっても近付き襲い掛かってくる。

「こいつら…」

ガイナーは足元にこぼした剣を拾い上げ、オークを迎え撃つべく駆け出す。

オークは狭い道を塞ぐように横に並びながらガイナーたちに向かってくる。

ガイナーはまず向かって右側のオークに向かって剣を駆け出しながら振り下ろす。

正面からの単調な攻撃であったためにオークは難なく手にしていた木製の盾で剣を受け止めようとする。

ガイナー自身もオークが盾を用いて防いでくるということを十分承知の上でのことである。すかさず盾を構えたオークから狙いを瞬時に変え、もう一体の並走してくるオークに剣の軌道を身体全体で捻って斬りつける。


ズシャァァッッ!!!


もう一体のオークもガイナーの接近に伴って迎撃体勢を有してはいた。

だが、突然標的が自身に変ったことにオークは対応しきれるものではなかった。

気付いた時にはオークは左腕を失ってしまっていた。

「グォォッッ!!!!」

獣のごとき咆哮にも似た声とともに左腕の切り口からは大量に体液が噴出し滴り落ちてゆく。その場にオークはうずくまりながら武器をその場に落として空いた手を傷口に押さえようと手を添えようとする。

その間にもガイナーは始めに狙いをつけていたオークに体当たりを仕掛ける。

ガイナー以上の体重を有したオークは当然ながらガイナーの体当たりを受け止めるが、足を止めさせるには十分なものだった。

「たああぁぁっっ!!!」

足を止めた瞬間、オークは咽元に刃が突き刺さるような感触を覚える。

それがそのオークの最後の感覚だっただろう。

体当たりで双方の足が止まったとき、ガイナーはすぐに剣を持ちかえて一気にオークの首に狙いを定めて突き入れていた。


ドシュゥッ!!!


剣はそれほど深く刺さったわけではなかったものの、オークに致命傷を与えるに十分のものだった。


「みんな、退がるぞ!!」

この場合の退がるは進んでいくということに等しいものではあるが、奇襲を目論んでの森の中での戦闘であったものが、逆に奇襲を仕掛けられてしまったのであっては、この地にとどまることはかえって混乱を招くことになる。

あと少し進めば、なんの遮蔽物も無い地帯へと差し掛かる。

そこは隠れる部分は無い代わりに狭まった道が続くことによって大勢で一気に攻められることは無くなる。

ガイナーの反撃にわずかに足を止めたサーノイド側の軍勢の様子を見計らって、護衛の戦士達は一気に駆け出し始める。

ガイナーもまた生き残る戦士達が退くのを見てから森を離れていった。


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