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FINAL MASTER  作者: 飛上
ACT,01 辺境の禁忌~Taboo~
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第02節

聖堂の扉を開けたときにガイナーの視界には3人の姿が映った。

一人は先ほどガイナーを起こしにやってきたサリアという少女。聖堂の中心に立っていた人物は、頭部は剃髪をしたのか、地肌をさらし、顎には白いひげをたくわえたていた老人。そして、その傍らには少し赤みがかかった茶色の髪の毛と、それと対照的な青い瞳をしたガイナーよりも年配とみてうかがえる青年。

ガイナーは老人のもとに向かうように歩を進め、サリアの隣に立ち止まる

「遅かったじゃない、何をやっていたのよ!?」

サリアが考えていた以上にガイナーが来るのが遅かったせいか、少しいやみっぽくたずねてみる。

「俺だって支度ってものがあるの」

嫌味というのがわかって以上、それ以上の事は言わなかった。それよりも先ほどから気になっていたことを口にした。

「なんでサリアがここにいるんだよ?」

人を起こしにきた上に、なんでそのまま自分の家にいるんだといったような発言に対してすこしムッとなりながらも。

「わたしもジェノア様に呼ばれたからでしょ」

「サリアも?・・・・なんで?」

「だからそれをこれから説明するのじゃ!!」

そのまま口論にまでなりかねない雰囲気があったのか、首尾よく老人が話の中に割って入って二人を制した。

この老人こそがこのメノアの村の長老であり、この聖堂の主であり、そしてガイナーを引き取って育てた、要はガイナーにとっての育ての親となるジェノアその人である。

「二人を呼んだのは他でもない、二人はこの村から西にある洞窟は知っておろう?」

西の洞窟、メノアでは西にある洞窟は一つしかない、この村に住む住人であればそれは当然のことである。二人が頷くのを確認した後に次の言葉を発する。

「実はあの洞窟の奥には古代のころからの封印が施されている。

だがその封印がおそらく解かれてしまうやもしれん」

「!!?」

洞窟の奥に古代よりの封印があるということは初耳だった。洞窟の存在はずっと前からメノアに西にあることは知ってはいたものの、さすがにその奥に何があるかまでは・・・

どうやらサリアは知っているかのようだったが・・

ただ、西の洞窟は長老であるジェノアによって入ることを固く禁じられていたからである。

もちろん、いたずら半分でその洞窟に忍び込もうとした者もいる。

それでも洞窟の最深部まで入り込んだものは誰もいなかったので、知らなくて当然である。

ジェノアは説明をつづける

「だが最近はその洞窟を住処にしようとしている魔物が少なくはない、そこでガイナーとサリアに行ってもらいたいのじゃ」

「ちょ、ちょっとまったじいさん!!」

「ジェノアさまでしょ!!」

サリアの突っ込みもそのままにガイナーはジェノアに食ってかかる。

「俺だけが行くのならわかるけど、何でサリアまで一緒にいかなきゃならないんだよ!?」

サリアは別に自衛団に入っているわけでもないし、魔物相手に戦うようなこともしたことがないはずだ。ましてやその洞窟の奥にある解かれる恐れのある封印があることなどたった今知ったばかりなのだから。

「あ~ら知らないのかしら!?

私はずっと魔法と封印術の勉強をしてきているのだから、私が行かないとガイナーじゃどうしようもないじゃない!?」

魔法の勉強をしている!?

封印術!?

ガイナーからすれば初耳であり聞いたこともない言葉である。サリアはよく聖堂にある書庫によく入り浸ってはなかなか出てこないというような日がつづいたこともあった。

「それに私はガイナーよりもお姉さんなんですからね!

だから、サリアなんか、なんて言ってほしくないわね。どうせ呼ぶのならサリアお姉さんとか言ってほしいわね・・・」

事実サリアはガイナーよりも二つ年上の19歳である。

サリアとしては今まで姉弟同様に育ってきたわけではあるが、やはり年上である以上ガイナーは弟同然なのである。だがガイナーは年上ということを気にすることなく接してくることがよくあるので、サリアはガイナーに対しては必要以上にお姉さんぶる。

ガイナーもよくそのサリアの性格を知っているのでそのまま対抗したように

「じゃぁ・・・おば・・」


バシィ!!!!!


「あ痛っ!!」

言い切る前に、ガイナーの側頭部に文字通り目から火花が出るような衝撃が襲った。一瞬何が起こっているのか理解できていなかったが、サリアの右手にある銀製のロッドを見て何が起こったか理解した。そのまま

「いてーな!!!!何考えてんだよ!!?」

ガイナーのいきなりの怒声にも怯むことなく

「言うに事欠いてなんてこというのよこのバカ!!!!

わたしはそんな風に呼ばれる歳じゃないわよ!!!!」

う~~

む~~~

「二人ともやめないか!

とにかく落ち着くんだ・・」

このままでは取っ組み合いの喧嘩にもなりかねないほどの剣幕でいまにも火蓋が切られるような雰囲気にジェノアの傍らにいたその青い瞳の青年が二人の間に歩を向け、仲裁に勤めた。

「だってケイン、ガイナーってば!!」

ケインと呼ばれた青年は二人の間に割って入って剣幕な雰囲気を抑えようとする。

「ふぅ、とにかくサリアはその手を下ろして。

いきなり手を上げるというのは感心しないよ」

「そうだぜ、少しはしおらしくして見せろってんだ!!」

そのままガイナーに向き

「ガイナーもあまりサリアをからかうんじゃない。それにサリアはお姉さんなんだから、あまりひどいことを言っちゃいけない」

「そうよ。もっと言ってやって」

「サリア」

ケインが制したあと

「ごめんなさいケイン」

先にサリアが折れた。

「おやおや、ケインの前だとしおらしいことで・・」

「あ、あのねぇ・・・」

サリアはかすかに右手を震わしてはいるものの、ケインに言われたばかりである。この場は静まることにした。

「あれ?でも洞窟に行くというのならケインだっているじゃないか?」

ふとした疑問をガイナーは二人に投げかける。

ケインはガイナーが適わないほどの剣の腕前をもつ剣士である。それにとどまらず、弓の腕前すら達人の領域にまで達している。どうせ行くのなら魔物との戦いが起こりうる場所に戦い未経験なサリアが行く以上、ケインと二人で背後を守る形を作れれば、ずっと安全だし、早いはずであるのに・・

その疑問の答えをケインが話し始める。

「それなんだが、実は私はこれからアファへ行くことになったんだ」

「え?」

「今アファは戦士を募っているからね。しばらくここを離れるよ」

「戦士を?」

「うん、アファの西側から魔物の軍団が攻めて来ているらしい、それを迎え討つにしても兵士の数が足りないようだからね、国中から戦士を募っているんだ」

「そこにケインが?」

「ここを戦場にするわけにはいかないと思ったのさ。」

「ここにも来るというのかい!?」

「その可能性があるかもしれないってことだけどね」

二人の表情がにわかに曇りだす。

旅に出かけるということは、これまでに何度もあった。だが、今回はただ旅に出かけるというわけではなかったのだから。

ケインは最初からメノアに生まれ育ったわけではない。ケインの青い瞳が確かな証拠である。

青い瞳を有する種、ファーレルと呼ばれる人種である。

ガイナーが拾われた頃からケインもまたメノアに地にやってきて二人の住むこの場所にともに住むことになっていた。いわばガイナーやサリアにとってはかけがえのない兄のような存在であった。

「だったら俺も連れて行ってくれよ!」

「だめだよ、ガイナーにはまだ早すぎる。それにサリアを誰が護るんだ?」

「・・・・っ!!」

今しがたジェノアに言われていたばかりである。ガイナーには成さねばならないことが出来てしまっていた。

「いつ戻ってくるの?」

サリアの顔からは困惑した表情をかくすことができなかった。

「それはわからない。

だから、二人ともこの村をたのんだよ」

ケインはジェノアに向かって、

「それではジェノア様、私はこれで」

「うむ、道中気をつけるのじゃぞ」

「はい、ありがとうございます」

ケインがガイナーの前を通り抜けようとしたときに

「ケイン、村の外まで送るよ」

「あ、私も」

立ち止まり振り向きざまに

「ありがとう、でも二人ともこれから行かなきゃならないところがあるだろう?

私のことは気にしなくていいよ」

二人の申し出を受け入れぬままにケインは聖堂を後にした。

ケインの足音が消えたときにサリアがガイナーにたずね始める。

「魔物の軍勢って・・・ケイン大丈夫よね?」

魔物のとの戦闘を経験したことがないサリアからすれば当然の疑問である。

だが、軍団と呼ばれるほどの戦闘ともなればガイナーも未経験の領域である以上

「わからない」

サリアを余計に心配させてしまう発言であることは承知しているのだ、ガイナーにも気持ちの整理がついていない。そう言わざるを得なかった。

「ケインのことが心配なのは無理からぬことじゃろうが、二人とも」

ジェノアの言葉に二人は老人のほうに向き直ると

「そうね、今はケインの言うとおり私たちにはやることがあるわ」

「ああ、そうだよな」

「うむ、二人とも心して聞くのじゃ」

二人の沈黙を皮切りにジェノアは二人に語り始めた。

「この村は代々にわたって西の洞窟の奥にあるものを禁忌として封印し続けてきた。その禁忌とはいかなるものなのか、それは何も知らされてはいない。しかしその封印が解けてしまうことは大きな災いとなるということだけが伝聞として遺されておるのじゃ。そして代々にわたって我らの祖先によってその封印を護り続けてきた」

「それほどのものが・・・」

「だけどそんなものがあるなんてここの人たちから一度も聞いたことないぜ」

「禁忌ゆえじゃ。あくまでごく一部の者達にしか知らされることなく事は運ばれておったのじゃからな・・・」

そのままジェノアはサリアに眼を向け言葉を続けた。

「サリアの家系は代々からその封印にかかわってきたのじゃ、今はもはやこの娘しかおらぬが、サリアは十分にその資質を受け継いでおる」

「・・・・・」

気のせいだろうか?一瞬サリアの表情にかげりが生じるのが見て取れた。

「わかったであろうガイナー、お前はサリアを連れて洞窟に向かってもらいたいのじゃ。

サリアも厳しい役目ではあるが行ってくれるな?」

しばらく考えはしたが、二人は是非を言葉に表す

「わかりました」

「わかったよ」

「それでは二人とも、今日のうちに準備を済ませて、明日の朝に出発してくれ」

サリアの表情が気にはなったが、サリアと共に行動を取らねばならない理由は十二分に理解したのであろう。それにケインにはアファにつれて行くのはまだ早いといわれたのである。おそらくガイナーに足りないのは経験だろう、だったら今は言われたことをやろう。そしてすぐにケインに追いついて見せるんだ。と心に決めた。


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