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FINAL MASTER  作者: 飛上
ACT,02 樹海の遺産~Legacy~
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第12節

サーノイドの脅威は拭い切れないとは言うものの、ライティン達にもそれぞれに生活がある。

城壁に囲まれたアファでさえ、日々の糧を得るために百姓達は畑を耕かし、商人たちは物の売買を行い、傭兵や冒険者といったものたちは魔物から身を守るために戦っていた。

アファより東に存在するためか、サーノイドの脅威は薄く、アファよりも人口は少ないものの、アファに劣らぬほどの喧騒に包まれる町があった。

まるでサーノイドが襲ってくるということも忘れるかのように…

エルザ以外のもう一つの港町、エルダーン。

これまではこの町からラクローンへの連絡船が出ていたのだが、今ではその海路は魔物によって塞がれてしまっていた。

今ではさらに東の大陸であるトレイアへの定期便が三日ごとに運行されているのみであった。


その喧騒の中、街の一角に昼の間から賑わう建物があった。

建物の周りには大小さまざまな樽が並べられ、その樽から発せられる独特のアルコールの匂いからそこが酒場であることが容易に見て取れた。

夜になれば仕事を終えた人たちが仕事の疲れをアルコールで包んで一気に咽の奥に流し込むことだろう。

だが酒場は昼間であってもその扉は開かれている。

昼間はレストランとしての運営を行う部分もあるが、夜の仕事を終えてやってくるという者がいるということも挙げられる、何よりもこの世界において酒場というのはさまざまな旅人が訪れては色々な情報を落としていく場でもあった。

事実、昼間の酒場の客を見ればほとんどが遠方からの商人であったり、傭兵といった職業が主であった。

そんな酒場の中カウンターで一際目立った人影があった。

その人影は年齢からすればまだ成人になりきれてないほどの容姿をしていた。背丈は割りと小柄で髪の色は赤く、瞳はライティン特有の茶色をしていた。

旅の者がよく身につける獣の皮をなめした軽装の胸当てに腰には戦闘用の短剣と小さな弓をかたどったものを提げていた。

何より酒場で目立つのはその人影が女性であったことである。

その女性は誰かを待っているのだろう、常に出入り口に顔を向けては注文していた果実酒をちびちびと咽に流し込んでいた。


女性が酒場に入ってからどれくらいたったのか、一際体格の良い男が入ってきて、その女性の前に立ち止まった。

「お前がギルドに依頼して来た者か?」

女性はやってきた男を一目見てから、手にしていた果実酒のはいった木製のジョッキを傾け、その中身を飲み干した後に男に向かって口を開いた。

「随分と遅かったじゃない!!

レディーを待たせるなんて傭兵ギルドさんは一体どういうつもりなのかしら!?」

まるで絡み酒のような態度でやってきた男に悪態をつく。

「約束の時間にはまだ少しあるはずだが、それで、おまえがギルドに依頼してきた者か?」

女性の悪態など意にも介さぬまま男は淡々と質問をくり返す。

「ええ、そうよ」

わずかに不満めいた表情を見せたが、そのまま依頼の内容を告げる。

「依頼というのは私たちの仲間の助勢よ。あなたの他に後何人か来る筈なんだけど…」

「残念だが、ギルドへの依頼が多発していてな、おまえの依頼を受けるのは俺だけだ」

「え~そうなの!!」

当初の予定とは異なることがあったために女性の不満めいた表情は一層深まった。

「断るというのならこの依頼は無かったことにしても構わんのだぞ」

「う~わかったわよ!!」

有無を言わせぬ状態に女性は渋々了承した。

「では交渉成立だな」

「そうね、この際、あなただけでも助かるわ。」

女性にとっては一人でも多くの人手が欲しいところだった。

「さてと、それじゃ、行きましょうか。ええと…」

「ライサークだ」

「ライサークね。私はフィレルよ」

お互いを名乗った後に酒場をあとにして二人はエルダーンの市街を抜けていった。

その先にあるのは幾重にも連なってそびえている山々だった。


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