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FINAL MASTER  作者: 飛上
ACT,01 辺境の禁忌~Taboo~
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第01節 

Act.01 辺境の禁忌 ~Taboo~


混乱が生じる大陸において、いまだ辺境は穏やかなときを過ごしていた。

辺境の島メノアで育った少年ガイナーは長老ジェノアにとある封印を施された洞窟に向かうようにいわれる。

それがガイナーのこれからを運命付けることになるとは、このとき、誰も思うことはなかった・・・


登場人物


ガイナー・・・17歳ライティン


メノアに住む少年。自衛団に所属し、剣の腕を日夜磨いている。


あるとき長老ジェノアに呼ばれて封印の洞窟に向かうことになる。




サリア・・・19歳ライティン


メノアに住む少女。代々、禁忌を封印する術を行う家系であり、自ら魔導師としての修行にも励んでいる。


ガイナーより年上なところからガイナーに対してだけは常にお姐さんぶる。




ジェノア・・・62歳ライティン


メノアの長老。ガイナーの育ての親。ガイナーとサリアを封印の洞窟に向かわせる。




ケイン・・・25歳ファーレル


メノアに住む青年。ガイナーにとっては剣の師匠でもある。サーノイドとの戦いに参加するべく、アファに旅立つ。




カミル・・・推定20歳ファーレル


封印の洞窟の前で倒れていた銀髪の青年。これまでの記憶が失われているが、ガイナー以上の剣の腕前の持ち主。




テナ・・・19歳ライティン


メノアの酒場の看板娘。サリアと同い年のところから、サリア同様、ガイナーを弟扱いする傾向がある。




ライサーク・・・22歳ライティン


「ブラッドアイ」と呼ばれる傭兵。素手での戦いを得手としている。


闇、どこまでも闇が支配し、一寸先も何も映らない。

音というものが存在しているのかも疑問になるほどに静寂を周囲が多い尽くされている、声を張り上げて叫んでみようと試みるも、自らの声すらその耳に聞こえることはない。

どこまでも深い闇、鼓動すら聞こえないほどの沈黙、自分という存在が確認できない。

もはや自らを否定してしまいそうなとき、一筋の光が見え始める。


……


不思議な感覚だ、その光が近づくにつれて、誰かの呼ぶ声が聞こえてきた。もしかすれば、そのような気がするだけかもしれない・・・

しばらくすれば闇が晴れたのか、存在が消滅したのだろうか、周囲を光に包まれていく。


記憶というものがあったのか定かではないが、これ以上はなにも見えなくなり、聞こえなくなっていった・・・


テラン大陸南東部、アファから南方に平原が存在する、その平原の南端より海を越えてすぐのところに一つの島がある。

メノア島と呼ばれるその島は、アファ国南端の港島エルザから船を使って約半日のところにあり、そこには小さいながらも集落が存在していた。

大陸の南部に位置していたため気候は温暖で、一年中春ともいえるほどである。そこでの生活は快適で、大地も肥沃し農作物も一年中いつの時期にかかわらず、作物を実らせることも出来る。その島の人々は辺境ゆえの利便性はないながらも、飢えなどに苦しむことはなく、笑顔が絶えることはないほどであった。

メノアの集落の一番奥地にその集落では最も大きな建造物である聖堂が建てられている。ラウナローアの神の一つである命の女神ティーラを祀る場所でもあると同時に、神官を務める者であり、また集落の長である者の住まいとなっていた。

村長の名はジェノア、すでに60を過ぎた老齢の人物であったが、いまだ生気は衰えず、日々をこれまでの歴史や伝承についての古文書の調査やこの村の自治の総括を執り行なっている。聖堂にはジェノア以外にも二人の男性が生活をともにしていた。一人はすでに働き盛りであろう青年で、もう一人は未だ青年と呼ぶには尚早な感じの残す少年である。

聖堂には村の人々が頻繁に訪れ、村での陳情や、集落内外の治安での相談通うものも少なくはなかった。

この日も聖堂を訪ねる一人の女性の姿があった。濃い目の蜂蜜色をした髪を背中に届く程にまで伸ばし、濃い色の茶色をした瞳を有している、鼻筋もきれいに通っており、口元も凛としたものがうかがえる、しかしまだあどけなさを残す顔立ちである。服装も、ピンク色のセーラーに赤いタイを身に付け、セーラーの色と同様の帽子をかぶっていた。

その服装ゆえに見た目以上に幼く見えるのかもしれないが・・・

彼女は聖堂に入ると、中央から枝分かれされた廊下を左に折れてまっすぐに伸びた廊下を進んでいた。

建物は中央に聖堂を設置し、左右に住まいとしての部屋を用意してある。廊下の突き当たりにあるドアの前に立つとそのドアをノックした。

しかし、そのノックからはなんの返しも生じることはなかった。

少女は再度ノックを繰り返したが、先ほどと同様だった。


やがて一呼吸おいたのちにドアに向かって呼びかける。

「ガイナー、起きているの?」

言葉と同時にドアを今一度ノックしてみて返答を待つことしばしの間、ドアの向こうからは三度目のノックすら何事もなかったかのような沈黙を彼女に返す。彼女はまた一呼吸したあとに先ほどよりもさらに大きな声でドア一枚向こうにいる者に声をかける。

「ガイナー、いい加減に起きないと・・」

今度はドアを叩く勢いでのノックをしてはみたものの何度やっても結果は同じでしかなかった。

「もう・・・ガイナー入るわよ」

仕方なしといった風な面持ちを見せながらも彼女はドアノブに手をかけ軋む音を立てながらその扉を開ける。ドアを開けた先に見えたものは簡素にした部屋に小さな机とベッドがあるだけだった。ベッドを見る限り、そのシーツの膨らみからしてそこにガイナーと呼ばれ続けている部屋の主が横たわっていることが見て取れる。ベッドにはこの部屋にある唯一の窓から陽射しが直撃していていた。そのためか身体はすっぽりとシーツに包まった状態でベッドの主がどのような人物なのかは特定できない。

「ガイナー、早く起きなさい!」

彼女はベッドに近づくとその膨れたシーツを払いのけるといままで何の返答もなかった部屋の主の姿を晒す。

部屋の主はいまだに夢の中だった。完全に寝ぐせになってしまってはいるが、男性にしては少し長めの、女性にしては短すぎるほどの長さの黒髪に中肉中背のまだ青年としてはなりきれていない少年の姿がベッドに横たわっていた。

少年を起こしに来た少女は、取り上げたシーツを汚さないようにたたんで少年の足元に置くと部屋の主の身体を揺さぶって起こそうと試みた。

「うう・・・」

シーツを取り払いのけたことが功を奏した。窓から射す陽射しをまともに顔面に浴びることになった少年は眩しさから小さな唸り声を上げてやがて声のするほうに重い瞼を開ける

「・・・なんだ・・・サリアじゃないか・・こんなに早く何の用だよ!?」

未だ微睡みの中を漂っていた最中を無理やりに引き戻された故か、少し不機嫌な面持ちのまま、恨めしそうにつぶやくが、サリアと呼ばれた女性はその呟きが終わる前に

「何が早くよ!もうとっくに昼近くになっているわよ!

 まったく!いつまで寝ているつもりよ!?」

声を荒げた後にそっと口調を戻し

「ジェノア様がガイナーを呼んでいるわ、すぐに聖堂に来なさいって」

「??じいさんが??」

「ジェノア様でしょ!!」

「何だっていいよ、しかし、なんだろうな!?」

「それはわからないけど・・・とにかく、先に行っているから、早く着替えて来なさいよ」

わざわざの労力に何も報われないような表情のままサリアと呼ばれた少女はそのまま部屋を後にする。

「ふぁ~あ」

サリアが部屋を後にするや否や押さえ切れなかった欠伸を一つかき、ボサボサのままの髪の毛を一掻きする。

「・・・っと、早く用意するか」

寝間着のままで村人の出入りがある聖堂に向かうわけにもいかず、ベッドから文字通り飛び起きると、寝巻着を脱ぎ捨て、机に引っ掛けたままだった服をはおり、ベッドの下に脱ぎ捨ててあったブーツを履いてからすこし爪先をたたく。椅子にかけてあったままのタオルを手に取るとそのまま部屋を後にすると、裏口からすぐにある水場まで足を運び、水がめに手を入れ、水を一すくいまだ眠気の残る顔にかける。

バシャ・・・

もう一すくい

バシャ・・・

そして寝ぐせになってしまった髪にも水をかけタオルで乱暴に顔と髪の毛を拭った。

ようやく眠気も覚めたのか瞳に輝きが戻ったかのような凛とした表情を見せて

「さて、行きますか・・」

一度自室に戻りタオルを元の場所なのか椅子の背もたれに掛け、ようやく寝ぐせの取れた真っ黒な髪の毛を手櫛で一掻き梳いてから、机に立てかけていた一振りの剣を左手に取って部屋を後にした。

メノアの長老の家を住まいとする一人の少年、名をガイナーという。

石炭を溶かしたかのようなすこし収まりが悪い真っ黒な髪、髪の毛と同様の色の瞳をしたいまだ幼さの残る少年の姿をしている。左手に持った剣の鞘はどこにでもあるかのような剣ではあるが、その柄を見る限り、随分と使い込まれたものであることが伺える。

ガイナーはジェノアの親族というわけではなく、ガイナーがまだ赤子同然の姿でいたころにメノアの村の外に一人で放置されていたという。いつになっても誰も引き取りに来ないのを不思議に思ったジェノアはガイナーを一度自分の住まいに引き取ることにした。

ジェノアはガイナーの親の情報をいろいろ探してはみたが、メノアの島、さらにアファ国全土にまで調べてみたものの、一度もガイナーの親と名乗る者がジェノアの前に現れることがなかった。

ガイナーはジェノアに引き取られて以来、ずっとメノアの聖堂でジェノアと寝食をともにしてきた。

あれから17年たった今、ガイナーは村から魔物の襲撃を防ぐ自衛団の仲間に加わり、日々剣の鍛錬を欠かさずにいた。その甲斐あってか、今となってはガイナーに剣で適う者はもはや一人しかいなくなったくらいである。



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