表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/130

小話《きな臭い話》

怪盗コレクトの元に、何者かが現れて……。


 夜の闇を、白い影が舞い踊る。

 ビルからビルへ、華麗に飛び移るその影は、彼の怪盗コレクトだった。

 やがてかれは、とあるビルの屋上に身体を止める。

「やれやれ、今夜は少々歯ごたえのないショータイムだったな」

 手の平に握られた宝石を見つめ、コレクトは一人呟く。

 青白い光を放つそれは、闇の中にあって少しも輝きを損なわない。

「……美しい。まさに「女神の涙」の名に相応しい」

 しばし堪能した後、隠れ家に戻ろうとしたその時だった。


「流石は怪盗コレクト殿。噂に違わぬ、見事な手際ですな」

「お褒め預かり恐悦至極だ。何処の誰かは知らぬがね」

 コレクトは振り向きもせず、声の主に答える。

「これは失礼を。申し遅れました、私はブラック。コードネームですがご容赦を」

「……悪の組織、かな」

「お分かりになりますか?」

「匂いでね。あまり好ましくない匂いがするよ」

「これは手厳しい」

 くぐもった笑い声を出すブラック。

 かなり失礼なコレクトの物言いにも、全く気分を害した様子は無いようだ。

「それで、私に何か用かな? ここが君達の場所なら、直ぐに去るつもりだが」

「実はコレクト殿に、少々お伺いしたい事がありまして」

「私から情報を得るには、相応の対価が必要だよ?」

 コレクトはここに来て、初めて後ろを振り返る。

 背後に立っていたのは、黒スーツにサングラスの男だった。

 四十代半ばだろうか、充分に鍛えられているのが物腰から伝わってくる。

「勿論存じております。ささやかですが、これをご用意しました」

 ブラックは布から宝石を取り出して見せる。

「悪くないが、少し困ったな。それに見合う情報を私が持っているかどうか」

「幾つか質問にお答え頂ければ結構です」

「ふむ……まあいいだろう。それで、質問とは?」

「単刀直入に伺います。この人物を知っていますか?」

 ブラックは懐から一枚の写真を取りだし、コレクトに投げる。

 コレクトは写真を確認して、僅かに表情を変えた。

「…………知っているよ」

「その人物と直接会ったことはありますか?」

「…………あるね」

「では最後に。その人物は――」

「…………その通りだ。だが何故、君はそれを知っている?」

「情報の提供には対価が必要、ですよね」

「その宝石、持って帰りたまえ」

「ならば答えましょう。私は、いや私達はその人の事をよく知っているのです」

 男はニヤリと笑い、こう続けた。

「何故なら、その人は私達の計画に欠かせない……実験体なのですから」

 


超短編です。

物語の骨組みが、これを切っ掛けに少しずつ見えてくるかと思います。


平凡な日常によぎる不穏な影。

一体ハピネスはどの様な陰謀に巻き込まれるのか……。

と煽った所で、次からはまた日常話に戻ります。

ちょっとずつストーリーを進めて行ければと思っております。


次回もまたお付き合い頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ