怪盗と勝負しよう(2)
事務所に集められた、ハピネスの精鋭達。
そんな彼らに、千景は怪盗と対決することを告げるのだが……。
時刻は午後六時。
ハピネス事務所には、千景が緊急招集を掛けた面々が集まっていた。
「怪盗コレクトって、あの有名な?」
「そうです。世間を騒がす怪盗、それが今回の相手です」
奈美の言葉を千景は肯定した。
「今回の依頼は、彼の怪盗から「悪魔の心臓」を守ることです」
「特殊な形をしたぁ、大型のルビーねぇ」
もう少しまともな名前は無かったのだろうか。
「これより私達は美術館に移動。対象の警護にまわります」
「そんなの警察の仕事だろう。吾輩達の出る舞台とは思えんが」
「警察からの依頼です。非公式ではありますが」
「……ひょっとして、美園さんからですか?」
柚子の問いかけに頷いて千景は答える。
「美樹ちゃんかぁ。それなら気持ちも分かるわぁ」
「あの~、それって誰ですか?」
「ハル君と奈美、それにドクターは知りませんね。そこの警察署長です」
「美園美樹ちゃん。キャリア組のエリートさんよぉ」
それは凄い。
「ただ、あの怪盗が出てきてから、あまり状況は良くないと聞いてます」
「自分の所轄で、過去に二度犯行を許しています。次しくじれば……」
千景は右手で首の前を斬ってみせる。
「????」
「クビってジェスチャーだよ。まあ実際クビにならなくても、責任は取らされるだろうな」
「何で?」
「責任者は、責任を取るためにいるからです」
静かに告げる千景。
ハピネスの責任者として、何か思うところがあるのだろうか。
「とにかく、今回のヤマは彼女にとって、最後の汚名返上のチャンスです」
「知らない仲じゃないしぃ、助けてあげたいわねぇ」
「えっと、知り合いなんですか?」
「私の古い友人です。二年前に赴任してからは、色々とやり取りもありまして」
交友関係広いですね。
「それを抜きにしても、正式な依頼として受けた以上、私達も全力で挑みます」
千景の言葉に頷く一同。
断るならそもそもこの場に来ていない。
「予告は今晩十一時。十時に現地集合の約束です」
「集合まで後三時間半ですか……」
「各員はそれぞれ準備をして下さい。出し惜しみは無しです」
ギラッとハル以外の目が輝く。
「ふむ、なら超電磁砲やレーザーの使用は?」
「勿論許可します」
をい。
「劇薬、毒薬の使用も」
「グッドです。即効性のあるものを頼みます」
をいをい。
「実弾は?」
「断る理由がありません。サーチ&デストロイでいきましょう」
をいをいをい。
「えっと……本気出しても?」
「前情報で怪盗コレクトは男と判明してます。貴方の力を見せて下さい」
待てぇぇぇぇぇい。
「ちょっと、冷静になって下さい。色々突っ込みどころが多すぎて……」
「何処かおかしな点が?」
「明らかにオーバーキルですって」
「こういった悪党はしぶといと相場が決まってます。やり過ぎで丁度良いでしょう」
「度を超してますよ。警察だって警備につくんでしょ? 現行犯じゃないですか」
「ああ、それは安心して下さい。ちゃんと黙認する約束ですから」
一欠片も安心できない。
頼むよ警察~。
「そもそも何を他人事の様な顔をしてるんです。貴方も殺るんですよ」
字が、字がおかしい。
殺る気に満ちあふれてますよ。
「えっ? 俺は人間止めてないというか、そんなスキルないです」
「無ければ作ればいい。今からハル君には、徹底的に私が暗殺術を伝授します」
使えるんですか?
「普通なら無理でしょうが、貴方のモノマネなら充分実用に耐えるレベルまで達するでしょう」
「達したくない、達したくないですぅぅぅ」
「さあ始めますよ。みんなは準備を整えて置いて下さい。九時にここを出ます」
「「イエス・マム!!」」
駄目だ……みんな壊れてる……。
悲鳴を上げながら、ハルは千景に引きずられていくのだった。
久しぶりにこうした作戦会議を書いた気がします。
今回も非常に短い話ですが、後半が凄まじい長さになったので、
またも中途半端なところでカットしました。
読み苦しくて、申し訳ありません。
次はいよいよ、怪盗との対決です。
過激な準備をしているハピネスの運命は如何に。
次回もまた、お付き合い頂ければ幸いです。