小話《紫音と千景》
紫音と千景のちょっとした会話。
今回本当に短いです。
話と話の繋ぎ、と思ってください。
幽霊退治の翌日。
紫音はハピネス事務所の千景を尋ねた。
「少し良いか?」
「あら、怪我はもう良いんですか?」
「問題ない。柚子殿の治療も的確だったのでな」
あの後事務所に戻り、紫音は柚子に手当をしてもらった。
外傷は打撲と数カ所の擦り傷。一応頭の検査もしたが、異常は無かった。
今は絆創膏と湿布をしているが、傷も残らないだろう。
「それは一安心です。いきなり傷物にしたとあれば、老人達が煩いですから」
「厄介払いした連中に何も言わせるつもりはない」
「……それで、何の用でしょうか?」
話題を変えるように、千景は切り出す。
「聞きたいことがある。……ハルだ」
「ハル?」
思わず千景は目を見開く。
紫音が自分以外の人を呼び捨てにした事に、少なからぬ驚きがあった。
「む、ああ。その……友達になったんだ。あの二人と」
「そうでしたか」
千景は優しく微笑みかける。
紫音をわざわざ自分の元に呼び寄せたのは、普通の生活を送らせるため。
そうして少しずつ普通の子供のようになれば良いと考えていた。
時間がかかると思っていたが、僅か一日で友達が出来た。
これは嬉しい誤算だ。
「それで、ハル君の何が聞きたいんです?」
「ハルは何者だ?」
「……何か少し前に同じフレーズを聞いた気がしますね。普通の男の子ですよ」
「普通の人は悪霊退治などできん。例え多少霊感があったとしても、な」
「貴方のお札を使ったのでしょ? 誰でも使えると言ってましたよ」
依頼の報告は受けていた。
お札の力を使った、何も問題は無いはずだが。
「浄化の札はそうだが、あの札は違う。使用には霊的な力と訓練が必要なのだ」
「彼に霊的な力はありますか?」
「無い……と思う」
「随分不確かな言い方ですね」
「潜在的に力が眠ってる場合もある。可能性は否定できない」
「なら、本人に聞いても無駄ですかね」
「自覚していない確率の方が高いからな。まあ聞くのも手だが」
ふむ、と千景はアゴに手を当てて考える。
別にハルに力があってもなくても、さほど問題ではない。
ただ自分の駒……もとい会社の所員の事は出来る限り知っておきたい。
「次の週末、貴方を交えてハル君とお話してみましょう」
「随分先だな?」
「貴方、明日から中学校でしょうが」
「……あっ」
結城紫音。大人びているが、まだ中学一年生。
義務教育は大切です。
あまりに短い話ですいません。
本当は次の話とくっついて居たのですが、少し長くなっていたので、
凄い中途半端な所で切りました。
次はいよいよハルのお話。
今回紫音が抱いた疑問が解決されると良いのですが……。
次回もまた、お付き合い頂ければ幸いです。