新たな仲間加わります(1)
高校生になった奈美が、正式にメンバーに加わった。
新たな仲間を加え意気上がるハピネス。
そんな彼らに、千景は何やら紹介したい人物がいるようで……。
季節は春。
新たな生活へと旅立ちの季節。
それは、出会いと別れを意味する。
ハピネスもそれは例外ではない。
「と言うわけで、正式にアルバイトになりました早瀬奈美です。よろしくお願いします」
「「よろしく~」」
ぺこりとお辞儀をした奈美に、ハピネスの面々が歓迎の声を掛けた。
「……正式なアルバイトじゃなかったんですね」
「流石に中学生を雇う勇気はありませんよ」
言われてみれば、奈美が依頼を受けた所をみた事がない。
精々ハルとの出会いの時位だろう。
「今までは非公式にぃ、ちょっとだけ依頼をやって貰ってたけどぉ」
「これからはしっかり働いて貰います。ただでさえ人手不足なのですから」
出会いがあれば、当然別れもある。
ハピネスのバイトも結構な数が、退職してしまった。
進学や就職、寿退社とそれ自体はお目出度いことなのだが……。
「早急に人材の確保をしなくては……まあ、毎年恒例ですけどね」
「ハルちゃんと奈美ちゃんは、末永く頑張って欲しいわぁ」
ウインクをするローズに、ハルと奈美は苦笑を浮かべて頷くしかなかった。
「では当面の方針としては……」
「バイトの募集を掛けつつ、依頼を頑張って捌くと言うことでぇ」
「「異議な~し」」
妙なテンションだ。
「じゃあみんなぁ、早速仕事に取りかかって……」
「あ、ちょっと待って下さい」
待ったを掛けたのは千景だった。
「実は皆さんに紹介したい子がいるのです」
「紹介?」
「少し私事になりますが、丁度良い機会ですから。……入ってらっしゃい」
千景が声を掛けると、事務所のドアが開かれる。
そして姿を見せたのは、一人の少女だった。
見た目は十代前半、柚子と同じ位だろうか。
青い髪の利発そうな少女だ。
「えっと千景さん、この子は?」
戸惑うように尋ねる奈美。
他の所員も同じように疑問の視線を千景に向ける。
「紹介します。この子は私の姪で、結城紫音と言います」
「姪御さん……ですか?」
ハルの言葉に千景は頷くと、歩み寄ってきた少女を自分の前に立たせる。
「さあ、自己紹介なさい」
「うむ。初めましてだな。私の名は結城紫音だ。よろしく頼むぞ」
何とも偉そうな挨拶だった。
幼い見た目とのギャップに、ハル達はすっかり面食らってしまった。
「紫音、そのしゃべり方は止めなさいと言ったはずですが?」
「仕方なかろう。この年までずっとこれで来たのだから」
「全く……みんな驚いているじゃないですか」
「む、済まない。これは癖みたいな物でな、ご容赦願いたい」
頭を下げ謝罪する紫音。
あまりに子供らしくない態度だ。
「まあ良いでしょう。ここにいる間、私がしっかり矯正してあげます」
「お手柔らかに頼むぞ、千景」
ニヤリと笑う紫音。
その様子を見て、ハル達は視線で会話を交わす。
(ねえ、ひょっとして……)
(まさか。幾ら千景さんでも、まだ子供じゃないか)
(だな。流石に働かせるのは無理があると言うものだ)
(でも、千景さんですよ?)
(ある意味非常識の塊だものぉ。あの子を働かせる可能性もぉ……)
((あり得るっ!))
この間数秒。
ハピネスの所員達の意思は見事に統一された。
「ああ、それはご心配なく。この子はハピネスで働かせるつもりはありませんよ」
((何故分かるっ!?))
「皆さん顔に出てますから。考えてること位分かりますよ」
((嘘だっ!!))
「L5患者みたいに言わないで下さい」
((…………気にしたら負けですか?))
「ですね」
全員が悟った。
余計なことを考えるのはよそうと。
「この子は今年から中学に進学しまして、私の家に居候することになったんです」
「家と事務所が同じ建家故、会うこともあろう。その時はよろしく頼む」
「あの~千景さん。その子は何歳でしょうか?」
ハルが挙手をして尋ねる。
「今年で確か十三だと思いますが……何か気になる事でも?」
「御仁は私の話し方が歳不相応だと言いたいのだろう」
いえ違います。
外見と年齢が合わない人がいるので、少し臆病になっているんです。
「いや、それだけ分かれば充分です」
「気持ちは分かるぞ。そこに年齢詐称疑惑の小娘がいるからな」
「頭だけで無く、視力にも問題があるようですね?」
何故か火花を散らす蒼井と柚子。
どうもこの二人は相性が悪いらしい。
「とにかく、紫音ちゃんはハピネスの所員では無いんですね?」
「ええ。基本的には」
「例外がある、と?」
「この子は少し特殊な力がありましてね。場合によっては力を借りるつもりです」
千景の説明に頷く紫音。
「若輩にして非才な身だが、その時は尽力させて貰う」
深々と一礼する紫音につられ、ハル達も思わずお辞儀を返す。
すっかりペースを握られている気がした。
「では、これにて解散とします。今日はご苦労様でした」
千景が締めて、ハピネスの所員達は各々仕事へと戻っていった。
「ねえハル。今日は何か依頼受けるの?」
「ん~そうだな」
ハルは少し考える。
今日は土曜日で、明日も大学はお休み。
連休を楽しむのもいいし、今日仕事をして明日ゆっくり休むのも悪くない。
懐具合を計算して、結論を出す。
「手頃なのを受けようかな。春は飲み会とかで出費が多いから」
「そっか。じゃあ私も何かやってみようかな」
「初めは慣れる意味でも、簡単なのやった方が良いぞ」
「えへへ、こうやって依頼を選ぶのも楽しいね」
嬉しそうに笑顔を見せる奈美。
心底楽しんでいるようだ。
「ふんふふ~ん、どれにしようかな♪」
「さて、俺も選ぶとするか」
奈美の横で、ハルが掲示板の依頼を選ぼうとすると、
「二人とも、ちょっと良いですか?」
千景に呼ばれた。
「何ですか千景さん?」
「少し特殊な依頼が来てまして、出来れば二人にお願いしたいんですが」
「…………」
怪しい。
千景がこういう言い方をするときは、大抵ろくな事にならない。
「報酬も良いですし、難しい仕事ではありません。どうですか?」
「ねえハル、ご指名だよ。受けようよ」
「……こう言う時は焦ったら負けだ。まずは話を聞こう」
ハルは視線で千景に説明を促す。
「二人にお願いしたいのは、幽霊退治のお手伝いです」
千景の言葉は、ハルの予想の斜め上を行く物だった。
最後のメンバー、紫音の登場です。
果たしてどの様な活躍を見せてくれるのでしょうか。
次も引き続き、紫音メインの話です。
彼女の力とはいったい何なのか?
次回もまた、お付き合い頂ければ幸いです。