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聖夜の出来事

サンタクロースは実在する!?

奈美に告げられた衝撃的な事実。

そして事態は急展開を見せる。


 サンタクロース。

 聖夜に突如として現れ、独自にセレクトしたよい子にプレゼントを配る、謎の人物。

 赤を基調とした服に、白い髭。

 トナカイに引かせたそりで、空を自由自在に駆ける。

 ほとんど伝説となっている人物。

 それ故、殆どの人は彼を空想上の存在だと信じている。

 信じているのは、まだ純粋な子供くらいだろう。

 だが、疑っているのもまた子供だけだ。

 大人達は、サンタが実在する事を知っているのだから。



 さて、今日は十二月二十五日。

 つまりはクリスマスだ。

 恋人同士や家族で楽しく過ごす、喜ばしい日。

 が、その一方で、一年で一番熱く燃え上がる日でもあるのだ。



 ハピネス事務所。

 クリスマスの夜だと言うのに、主要メンバーが集結していた。

 その目的は、

「今年こそ、サンタクロースと決着を着けます」

 と言う事だ。

「全員持ち場に着いてください。剛彦、他の動きはどうなっていますか?」

「既に主要各国は動き出してるわねぇ。米国はステルス小隊で索敵を始めてるわよぉ」

「欧州の方も、衛星経由で探知を開始している模様です」

「……ドクター、こちらは?」

「ふん、準備完了だ。三十分後に発進出来るぞ」

「結構です。盗聴とハッキングを怠りなく、レーダーの監視も続けなさい」

「「了解!!」」

 まるで戦争中の軍司令部みたいな空気が、事務所中に広がっていた。


 そんな中、事態に着いていけない奈美が、ポカンとした表情で立ち尽くす。

「ん、どうかしたか?」

 手が空いたハルが、奈美に声を掛ける。

「あのさ……みんな何をやってるのかな?」

「見て分かるだろ。サンタクロースの捜索だよ」

 ハルは何を今更、と言った顔で平然と答える。

「本気で言ってるの?」

「何がだ?」

「だから、サンタクロースって想像上の存在で、実在しないでしょ!」

 叫ぶ奈美に、事務所中に視線が一斉に集まる。

「……お前、知らなかったのか?」

「何よ」

「サンタクロースは実在するぞ」

「……はぁ?」

 素っ頓狂な声を挙げる奈美。

 おかしい。

 どう考えてもおかしい。

 サンタが居ないなんて、今時小学生でも知っている。

 なのに……。

「だって……みんなサンタは居ないって……」

「うふふぅ、駄目よハルちゃん」

 ショックを受けた奈美の肩に手を置いて、ローズは窘めるように言う。

「奈美ちゃんはまだ高校生よぉ。知らなくても仕方ないじゃない」

「あ、そっか。ごめん奈美。秋乃は知ってるからつい……」

「何なのよ……」

 申し訳なさそうに頭を下げるハルに、奈美はすっかり混乱して涙目になる。

「ん~話しちゃっても良いかしらねぇ」

「……構わないでしょう」

「なら奈美ちゃん。ちょっとお話しましょうかぁ」

 ローズは微笑みを浮かべながら、奈美をソファーへと誘導した。


「実はねぇ、サンタクロースの存在はぁ、昔から確認されてるのよぉ」

「嘘……」

「残念ながら本当よぉ。そしてぇ、それは大人だけの秘密にされてるのぉ」

「どうしてですか?」

 奈美の言葉にローズは一瞬躊躇したが、

「サンタクロースの裏の顔がぁ、子供達にとって残酷なものだからよぉ」

 覚悟を決めた顔で答えた。

「裏の……顔?」

「サンタはよい子にプレゼントを配る。じゃあ、悪い子にはぁ?」

「それは……プレゼントを配らない?」

「違うわぁ。悪い子にはぁ…………罰が与えられるのぉ」

 ローズの顔は、苦々しく歪んだ。

「この世は等価交換の原則で成り立っているわぁ。何かを得るためにはぁ、それと同等の何かを捨てなければならないのぉ」

「それが……何の関係があるんですか」

「よい子に配られるプレゼント……それをサンタはどうやって調達してると思う?」

「え……」

 ローズの問いかけに、奈美は答えられない。

 サンタが存在しないと思っていたのだから、そんなこと考えもしなかった。

「サンタは人外の存在、プレゼントは不思議な力で作られているぅ」

「…………」

「でも等価交換は人外と言えども存在するぅ。ならその不思議な力の代償はぁ……」

「まさか……」

「悪い子のぉ…………魂、つまりは命よぉ」

 ローズの言葉に、今度こそ奈美は完全に絶句した。


「それが判明したのはぁ、もう百年以上前のことぉ。それ以来、大人は子供達に事実を知られることなくぅ、サンタクロースと戦い続けてきたのぉ」

「そんな……」

「去年はぁ、世界中で千を越える子供の命が奪われたわぁ」

「で、でも、それがサンタの仕業だって分からないじゃ無いですか!」

「……サンタに魂を奪われた子供にはぁ、共通してある刻印が胸に刻まれるのぉ」

「刻印?」

「アザだと思ってくれて良いわぁ」

「どんな、アザだったんですか?」

「英語で一言だけぇ。『メリークリスマス』と刻まれていたわぁ」

 二人の間に、無言の時が流れた。

「だから私達大人は戦うのぉ。これ以上、悲しい犠牲を増やさない為にもぉ」

「どうして……どうして子供には本当の事を言わないんですか!?」

「知らない幸せもあるわぁ。貴方、この話を子供に聞かせられるぅ?」

「そ、それは……そうですけど」

「この戦いはぁ、大人の戦いよぉ。本来なら奈美ちゃんは不参加の予定だったんだけどぉ」

 ローズは苦笑を浮かべて奈美を見る。

 元々、今日奈美は事務所に呼ばれていなかった。

 ただ、ハルに着いてきただけだ。

 ハルが止めなかったのは、さっきも言っていたとおり奈美が子供だと認識していなかったから。

「お話は終わりよぉ。さぁ、奈美ちゃんは家に帰りなさい」

「……嫌です」

 優しく諭すローズに、奈美はキッパリ拒絶した。

「ここまで聞かされて、はいそうですかって帰れません。私も戦います!」

「……良いのぉ?」

「私だって、ハピネスの一員です。仲間はずれは嫌ですから」

 ローズはチラリと千景に視線を送る。

「構わないでしょう。知った以上、止める理由がありませんので」

「そうねぇ。じゃあ、協力して貰うわね♪」

「はいっ!!」

 元気良く返事をして、奈美もサンタクロースとの戦いに加わるのだった。




「所長、日本海に配備されているイージス艦がサンタを補則」

「データをリアルタイムでとり続けなさい。政府の対応は?」

「航空自衛隊が迎撃に…………駄目です、全て撃墜されました!!」

 鈴木の報告に、事務所がざわめく。

「サンタは不規則に軌道を変えて移動中。目的地は予測できません!」

「撹乱のつもりですか……」

「欧州各国はぁ、既に犠牲が出てるわねぇ。日本を回ってぇ、最後にアメリカかしらぁ」

「航空自衛隊より第二波、第三波が出撃しました!」

「無駄だ。奴の前では機動力、火力共に玩具同然。時間稼ぎにもならん」

 蒼井の言葉通り、数分後には撃墜の報告が入った。

「そんなに……そんなにサンタは強いの……」

「あれは……ある種の神と言える存在だからな」

 呆然と呟く奈美に答えたのは、紫音だった。

「千景よ、私の準備は出来て居るぞ」

「吾輩の方も問題ない」

「……では、出撃するとしましょう。鈴木、後は頼みます」

「了解しました。どうか、ご武運を」

 事務所員全員に敬礼で送られ、千景は事務所を後にした。

 ローズ、紫音、蒼井達もそれに続く。

「俺も行きます。役に立てるとは思えませんが、上手く行けばモノマネ出来るかも」

「私も!」

 ハルと奈美も、千景達に続く。


 一行が向かったのは、一階のガレージの更に下。

 今まで隠されていた地下格納庫だった。

 そこに、一機の飛行機が出撃の時を待ちわびていた。

「ドクター、行けますね?」

「当然だ。さあ、早く乗り込め」

 蒼井は操縦席に入り、飛行機を起動させる。

 飛行機は旅客機と言うよりも、輸送機の様な構造をしていた。

 ハル達は後部のハッチから飛行機に乗り込む。

「では行くぞ。吹き飛ばされないように何かに捕まっていろ!」

 エンジン音が徐々に大きくなり、やがて、

「対サンタクロース専用飛行艇『グッバイメリークリスマス』発進!!!」

 物凄い急加速で、地下の滑走路を抜けて大空へと舞い上がった。



「ドクター、サンタクロースの位置情報を送ります」

「……確認したぞ」

「このままいけば、およそ百二十秒後に接触します」

「おい、貴様等。聞いての通りだ。今の内に覚悟を決めておけよ」

 ハル達が居るカーゴに、操縦席の蒼井から声が掛けられる。

「……では、作戦の確認をしておきましょう」

「私達は飛行艇がサンタと併走している間にぃ、サンタのソリに飛び移るわぁ」

「その後、白兵戦にてサンタと決着を着けます」

 とんでも無いことをさらりと言ってのける。

 だが、今更騒ぐつもりもない。

 全員が覚悟を決めて、ここに居るのだから。

「誰かがやられても、落下しても気にしないように。目的はただ一つだけです」

 頷く一同。

 もはや言葉はいらなかった。

「……見えたぞ。これよりサンタに接近する。全員衝撃に備えろ!!」

 蒼井の声が聞こえた瞬間、飛行艇に激しい揺れが訪れた。

「な、何?」

「サンタの迎撃です。ここはドクターの腕を信じるしかありません」

「集中をきらしちゃだめよぉ。私達の出番はこの後なんだからぁ」

 激しい揺れと、何かが飛行艇にぶつかる音。

 外の様子が分からない為、それは大きな恐怖だ。

 それでもハル達は揺るがない。

 そして、

「ぐ……よし、併走したぞ。ハッチを開けるから、どうにか飛び移れ!!」

 苦しそうな蒼井の声と共に、カーゴのハッチが開かれた。

 途端、凄まじい風圧がハル達を襲う。

 身動きすらままならない状況の中、

「私から行きます。それではみんな、武運を」

 千景が先陣を切って空へと身を投じた。

「次は私が行くわねぇ。じゃあみんなぁ、また後でねぇ♪」

 ローズがそれに続く。

「……紫音、行くぞ」

「ああ、頼む」

 身体の小さい紫音には、風圧は天敵。

 ハルは紫音を抱き上げると、一緒になって空へと飛び込んだ。

 そして、

「…………行くわよ、奈美」

 最後に残った奈美も、頬を叩いてから空へと身を躍らせた。



 サンタのソリは、ハル達全員が乗っても充分すぎる程大きかった。

 ソリの後方に降り立ったハル達の視線は、一番前に座る赤い服の男に向けられている。

「……やれやれ、招かれざる客だな」

 男はため息混じりに立ち上がり、ハル達へと向き直った。

 赤い服、白い髭、まさしく伝え聞くサンタクロースそのもの。

 ただ一つ違うのは、太っているのではなく、ローズ以上に鍛えられた鋼の肉体だった。

「あれが……本物のサンタクロース」

「どう、千景ちゃん」

「……相打ちならば御の字、と言った所でしょうか」

 千景にいつもの余裕はなく、頬を伝う汗がサンタの強さを物語る。

「それで、何の用だ?」

「サンタクロース。貴方に、消えて貰います」

「ふん、痴れ者が」

 サンタはコキコキと間接を鳴らして、ニヤリと笑う。

 その姿からは、子供に夢を配る聖人など微塵も想像できない。

 ただ一人の、鬼だった。

「……ローズ、援護を。初手で決着を着けます」

「OK」

「……行きます!」

 見事な瞬歩で、サンタとの間合いを詰める千景。

 同時にローズも走りながら、マシンガンでサンタを牽制する。

 サンタの目の前に来た千景は、

秘技朧ひぎおぼろ

 まるで消えたかのような速さで、サンタの後ろに回り込む。

 そのままサンタの首を鉄扇で落とそうとするのだが、

「温いわ!!」

 サンタに腕を掴まれ、

「ぬぅん!!!」

「……無念」

 そのままソリの外へと放り投げられてしまった。

 米粒のように小さくなる千景を、ハル達は呆然と見つめる。

「筋は悪くないが……儂の相手など百年早かった様だな」

「サンタクロォォォォスゥゥゥ。差し違えて、その命を貰うわぁぁぁ!!!!」

「こわっぱがぁぁ。身の程をしれい!」

 マシンガンを乱射しながら突進するローズ。

 だがサンタは、銃弾を平然と受けながらローズの腹に拳を打ち込む。

 そして、うずくまるローズをソリの外へと蹴落とした。

「弱い、弱すぎる。こんな腕で儂に挑もうなど、笑い話にもならん」

 仁王立ちするサンタに、ハル達は言葉を失う。

 最強のツートップが、成す統べなく倒れた。

 信じられない、信じたくない現実を受け入れられなかったのだ。


「どうする、ハル」

「どのみち逃げ場は無いんだ。だったら、前に進むだけだよ」

「……同感だ」

 紫音は札を構えて、サンタと対峙する。

「西方の守護神……激しき浄化の雷にて……我が敵を殲滅しろ!!」

「行くぞぉぉぉ!!」

 紫音から発せられた、雷の奔流がサンタを飲み込む。

「効かぬわぁぁ!!」

「まだまだ!!」

 追撃とばかりに、ハルは瞬歩で間合いを詰めると、

「一緒に落ちろぉぉ!!」

 サンタの腹にしがみついて、そのままソリの外へとダイブしようとする。

 だが、

「落ちるのは、お主だけだ」

 サンタに軽く振り解かれ、ハルはソリの外へと落下していった。

「そ、そんな……ハル……」

「……奈美よ。後は……頼んだぞ」

「え?」

「中央の守護神よ……我が命を対価に……全てに滅びを!!」

 まるで夜の闇のような黒い光が、サンタに向かって放たれる。

 しかし、サンタは軽くそれを避ける。

「ま、まだだ!」

 光を横に薙ぎ払う紫音。

 サンタはそれも回避するが、光にかすったソリは一瞬で消滅した。

「滅びの術か。若いのに大したものだが……」

 初めてサンタが賞賛の言葉を口にする。

「だが、当たらなければ無駄だ」

「……ここまでか」

 奈美の隣に居た紫音は、力尽きたかの様にうつ伏せに倒れた。

 そのまま紫音は風圧に逆らえずに、ソリの遙か後方へと吹き飛ばされた。

「命を削る禁断の術……だが無駄死にだったな」

「みんな……」

「さて、残るはお前だけだ」

「……みんな、私に力を貸して」

 奈美の呟きに答えるように、うっすらと奈美の全身に光が溢れる。

「ば、馬鹿な……その力は……」

「私は一人じゃないわ。みんなと一緒に……あんたを倒す!」

「良いだろう。こい、小娘!!」

「うわぁぁぁ!!!」

 突進する奈美。

 迎え撃つサンタ。

 今ここに、長い戦いに終止符が打たれる。






「……て夢を見たの」

「へぇ、そうかそうか。それは面白そうな夢だな」

「えっと……怒ってる?」

「い~や、全然。パーティーが始まってるのに、爆睡してたお前を起こしにアパートまで寒空の中往復させられた事なんて、ちっとも怒ってないぞ」

 にこやかに笑うハルだが、その目は欠片も笑っていなかった。

「その……何というか……ごめんなさい」

「全くお前は。あれだけ電話したのに、ちっとも起きやしない」

「だって……ハピネスのクリスマスパーティーが楽しみで、昨日寝れなかったんだもん」

「子供かお前は」

 呆れたようにハルは言う。

「まあ良いよ。まだパーティーも始まったばかりだし」

「北風を貸し切ってるんだよね」

「ああ。いつもの面々は全員揃ってるぞ」

「折角のクリスマスなのに、みんな一緒に過ごす人がいないんだね」

「……お前、それ絶対に言うなよ」

 間違いなく修羅場になるから。

「で、結局その夢の結末はどうなったんだ?」

「それがさ、丁度決着を着けるタイミングでハルが起こしたから、分からないのよ」

「……ちくしょう、微妙に気になってる自分が悔しい」

 夢の話とは言え、なかなか凝った設定だった。

 せめて結末まで見てから起きて欲しかったものだ。

「でもさ、やっぱりサンタクロースは居ないんだよね」

「そりゃ分からないよ」

「え?」

「今まで誰も見たことが無いってだけだろ。なら、居る可能性は否定できないさ」

 悪魔の証明と言うものがある。

 それが居ない、と証明することは、居る証明に比べて極めて困難。現実的に不可能に近いとされている。

 屁理屈と言われてしまえばそれまでだが。

「まあ、居るかもしれないと思ってた方が、夢があって良いと思うけどな」

「……そう、だよね。あ、雪だわ」

 チラチラと夜の闇に白い粒が舞い降りる。

 寒いと思っていたが、どうやら雪が降り出したらしい。

「ホワイトクリスマスか。悪くないな」

「そうね…………あれ?」

「ん、どうした?」

「ハル……あそこ……」

 口をぱくぱくとさせて、奈美が空の一点を指差す。

 ハルが視線をそちらに向けると、

「…………嘘、だろ」

 きらきらと光を纏った何かが空を飛んでいた。

 いや、ここは誤魔化さずに言おう。

 あれは間違いなく、

「「さ、サンタクロースだぁ!!?」」

 話題のその人だった。

 ハル達の叫びが聞こえたのか、サンタと思われる人物は笑顔で手を振る。

「ま、マジでか……」

「サンタさ~ん」

 呆然と立ち尽くすハルを余所に、奈美は心底嬉しそうに手をふり返す。

 時間にして、ほんの数十秒の出来事。

 だが、確かに彼は存在していたのだ。

「ねえねえハル、見た、見たよね?」

「……ああ」

「凄い凄い、私サンタクロース見ちゃった♪」

 大はしゃぎの奈美。

 一方のハルは、頭の整理が追いつかず呆然と空を見続けている。

「これはみんなに自慢しなきゃ…………はっくしょん」

「風邪か?」

「ううん。ただちょっと寒くて」

 慌てて家を出てきたからか、奈美はマフラーも手袋も着けていなかった。

 さぶさぶ、と赤くなった手を擦り合わせて息を吐きかける。

 その様子を見て、ハルは小さくため息をつくと、

「……ほら」

 奈美の隣に立って、長いマフラーで奈美と自分の首を繋ぐ。

「ハル?」

「手袋は……悪いが半分こだ」

 左手の手袋を外して、奈美に手渡す。

 そして、奈美の右手と自分の左手をギュッと握る。

「これで少しはマシだろ。向こうに行けば暖かいから」

「…………」

「……両方寄越せとか言わないよな?」

「うん……ありがとね」

 奈美は微笑むと、ハルと手を繋いで歩き出した。


「折角サンタを見たのに、プレゼントを貰い損ねたな」

「……私は貰ったよ」

「何を貰ったんだ?」

「えへへ、内緒」

 不思議そうなハルに、奈美は幸せそうな笑顔で答える。


(ホワイトクリスマスに、ハルと手を繋いで歩く……最高のプレゼントをありがとうね)

 奈美はサンタクロースへ、心の中で感謝を伝えるのだった。



まず最初に、すいません。

クリスマスに合わせて投稿しようとしたのですが、色々あって間に合いませんでした。予約投稿にしておけば良かった……。

イブでテンション上がって、勢いだけで書きました。

無茶苦茶な話ですが、どうかご勘弁を。



次回もまたお付き合い頂ければ幸いです。

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