隔離地域報告書:第一次大規模脱走報告書
防衛省・統合幕僚監部 事後調査報告書
【管理番号:2026-OPS-SEC01】
【秘匿区分:最重要機密(閲覧制限:特A)】
【作成者:中部方面総監部付・畠中健一】
1. 発生状況
2026年2月10日 03:00。
真田太陽による「扉」の封鎖から約1ヶ月後。大阪全域を覆う磁気嵐(魔素飽和状態)が一時的に減衰した隙を突き、封鎖ライン(現・アイアンカーテン建設予定地)の数カ所から推定数千の変異生物が流出した。
2. 敵勢力の分析(初期観測)
流出した個体は、既存の生物が「魔素」により急速変異したものと推測される。
ゾンビ型変異体: 隔離地域で消えた遺体が魔素により再起動したもの。痛みを感じず、損壊しても行動を停止しない。
変異狼: 野犬が大型化。時速80kmで走行し、自衛隊の軽装甲機動車を横転させる筋力を持つ。
飛行型魔虫: 巨大化したカラスや昆虫。上空からの奇襲により、地上部隊の視界を遮断。
3. 戦闘経過と混乱
自衛隊は国道171号線および1号線に最終防衛線を構築。
しかし、隊員たちの精神状態は極めて不安定であった。射殺した「化け物」が、数日前まで行方不明者リストに載っていた市民であるという事実が、現場の士気を著しく低下させた。
特記事項: 当時、民間の回収屋であったカイトが、混乱する現場に無許可で介入。自衛隊が躊躇する「ゾンビ化した元市民」を無感情に処理し続け、結果的に数百名の隊員を救出。これが彼と畠中の「奇妙な協力関係」の始まりとなった。
4. 損害評価
自衛隊: 殉職者215名。車両、重火器の損失多数。
民間人: 壁を越えた変異体により、北摂・京阪エリアで推定800名が死亡。
結論: 通常の軍事訓練を受けた兵士では「異界の生物」に精神的・戦術的に対応不可能。魔素に耐性を持つ専門職(後の回収屋)の育成が急務である。
5. 処置および隠蔽
本件は「震災に伴う大規模火災および土砂崩れ、ならびに集団パニックによる暴動」として報道管制を敷く。
流出した個体はすべて処分済みだが、死体の一部はサフミ女史の研究施設(極秘)へと移送。
【追記:畠中による調書】
初めて化け物を目にした隊員たちは、引き金が引けなかった。
だが、あのガキ――カイトだけは違った。
彼は泣きながら、それでも確実に化け物の眉間を撃ち抜いていた。「所長に頼まれたから」という、たったそれだけの理由で。
あの日、私は確信した。これから来る時代に、正義や良心は邪魔だ。必要なのは、あのガキのような「呪い」を背負った戦士と、それを利用する非情な管理体制だ。
とはいえ、本件で隔離地域の消えた遺体問題が解決した。黒ローブは非常に狡猾な輩と見える。




