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加護値0と断罪された俺、実は神の評価外でした 〜追放された王国が崩壊するまで〜  作者: 黒羽レイ


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第9話 壊れた神殿

遺跡の内部は、外よりも静かだった。


荒野の風音が嘘のように遮断され、

足音だけが、石床に乾いた響きを返す。


壁は崩れ、天井の一部は落ちている。

だが、構造そのものは保たれていた。


「……かなり古いな」


王国の建築様式とは明らかに違う。

装飾は少なく、直線的。

だが、どこか“過剰に整いすぎている”。


――人のために作られた場所じゃない。


そんな感覚があった。


奥へ進むにつれ、

空気が、さらに変わっていく。


重くなる、というより――

濃くなる。


息が詰まるほどではない。

だが、存在感がある。


やがて、広間に出た。


中央に、

巨大な像が倒れている。


頭部が欠け、

胴体には深い亀裂。

両腕は、砕けていた。


神像。


そうとしか言いようがない。


だが。


「……違うな」


俺は、無意識にそう呟いていた。


神殿で見た像とは、根本的に違う。


祈りを受ける姿勢ではない。

威厳を誇示する造形でもない。


――“見ている”。


立っていた頃のこの像は、

人を見下ろすでも、

守るでもなく、

ただ、同じ高さで見つめていた。


「……なるほど」


近づく。


石の表面に、

細かい文様が刻まれている。


文字ではない。

だが、意味がある。


触れた瞬間。


「――来たか」


声がした。


耳ではない。

頭の奥に、直接響く声。


俺は、反射的に身構えた。


「誰だ」


返答は、すぐには来なかった。


像の亀裂から、

微かな光が漏れ始める。


青白い、

だが温度を感じない光。


「名を問う必要はない」


声は、静かだった。


「この姿は、既に壊れている」


「……なら、何だ」


「記録だ」


その言葉に、

俺は息を止めた。


記録。


「お前が触れたことで、

残っていた断片が起動した」


像の光が、わずかに強まる。


「……お前は、測定されなかった」


それは、

断定だった。


「加護値0、ではない。

測定不能でもない」


「なら、何だ」


一拍、間。


「――評価外だ」


その言葉は、

不思議な重さを持っていた。


評価外。


測れない、とは違う。


測る必要がない。

あるいは――

測る側にいる。


「この世界は、

管理されている」


像の声は続く。


「人を、数値で区分し、

役割を割り当て、

過不足を排除する仕組み」


俺の脳裏に、

神殿の水晶が浮かぶ。


「加護とは、

祝福ではない」


「……枷か」


無意識に、言葉が出た。


像は、

一瞬だけ、沈黙した。


「……理解が早いな」


その声音に、

かすかな“感情”が混じった気がした。


「加護は制限だ。

人を一定範囲に留めるための」


「では、俺は?」


問いかける。


像の光が、揺らいだ。


「お前は――」


そこで、

像の声が途切れた。


広間全体が、

微かに軋む。


「……時間がない」


像は、

言葉を選ぶように、続ける。


「完全な説明は、

今はできない」


「だが、一つだけ、

覚えておけ」


光が、

俺に集中する。


「お前は、

この世界に“不要”だったのではない」


「……?」


「想定されていなかった」


その言葉が、

胸に落ちた。


不要ではない。

無価値でもない。


――想定外。


「だから、水晶は反応しない。

魔物は逆らえない。

環境は拒まない」


「お前は、

この管理世界の“外側”だ」


像の光が、急速に弱まる。


「……待て」


「いずれ、

理解する時が来る」


「その時、

選べ」


「――修正するか、

壊すか」


最後の言葉と同時に、

光が消えた。


静寂。


遺跡は、

ただの廃墟に戻っていた。


俺は、

しばらくその場を動けなかった。


評価外。

想定外。


だから、

裁けない。


だから、

従わせられない。


「……ふざけた話だ」


小さく呟く。


王国は、

俺を無価値と切り捨てた。


だが、

そもそも“評価する資格”がなかった。


俺は、

神像から手を離した。


「修正か……破壊か」


まだ、決めるつもりはない。


だが、

一つだけ確かなことがある。


この世界は、

嘘を前提に成り立っている。


そして。


その嘘を、

俺だけが――

無視できる。


俺は、

遺跡を後にした。


荒野の空は、

相変わらず静かだ。


だが、

もう以前と同じには見えなかった。


世界が、

薄く、歪んでいる。


その歪みの“外”に、

俺が立っている。


それだけは、

はっきりしていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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