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加護値0と断罪された俺、実は神の評価外でした 〜追放された王国が崩壊するまで〜  作者: 黒羽レイ


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第7話 死なない理由

目を覚ましたとき、空はまだ薄暗かった。


夜明け前。

荒野の空気は冷たく、吐く息が白い。


だが――生きている。


それも、驚くほど普通に。


「……本当に、何もなかったな」


俺は上体を起こし、周囲を確認した。


火は、ほぼ燃え尽きている。

外套は無事。

荷物も、荒らされた形跡はない。


昨夜、魔物が現れたのは確かだ。

だが、襲われるどころか、逃げていった。


「偶然……じゃないよな」


そう呟き、立ち上がる。


身体に違和感はない。

痛みも、痺れも、重さもない。


――あまりにも、普通だ。


だが、考えてみればおかしい。


俺は昨日まで、

「加護値0」「無価値」「追放者」だった。


そんな人間が、

魔物領の縁で一晩を越えて、

無傷で朝を迎える?


普通なら、

死体になっていても不思議じゃない。


「……考えても仕方ないか」


そう自分に言い聞かせ、

残ったパンを口に入れる。


朝食を終え、

荒野を進む。


日が昇るにつれ、

風が強くなってきた。


灰色の砂が舞い、

視界が揺れる。


歩きにくい。

だが、体はよく動く。


不意に――

足元の地面が崩れた。


「っ――!」


反射的に体勢を立て直そうとするが、

間に合わない。


斜面を、転がり落ちた。


岩に肩を打ち、

背中を強く叩きつける。


息が詰まる。


「……ぐっ……!」


ようやく止まったとき、

視界がぐらついた。


痛みが、遅れてやってくる。


肩。

背中。

脚。


間違いなく、

無事では済まない落ち方だった。


「……やったな……」


俺は歯を食いしばり、

体を起こそうとする。


だが――


「……?」


立てる。


普通に。


確かに、痛みはある。

だが、致命的ではない。


いや、それ以前に。


「血が……出てない?」


服をめくる。


擦り傷はある。

だが、深い裂傷はない。


岩に打ち付けたはずの肩も、

腫れはあるが、骨が折れた感触はない。


「……おかしい」


確実に、

俺は今、

“死んでもおかしくない”目に遭った。


それなのに。


歩ける。

呼吸も乱れていない。


「……待て」


俺は、背中に手を回した。


さっきまで、

確かにズキズキと痛んでいた場所。


――痛みが、薄れている。


「は?」


冗談だろ。


まだ、数分しか経っていない。

自然治癒にしては、早すぎる。


俺は、その場に座り込んだ。


呼吸を整え、

自分の体に意識を集中させる。


心臓の鼓動。

血の流れ。

筋肉の感覚。


……整っている。


まるで、

最初から“そうなる前提”だったかのように。


「……加護?」


そう考え、

すぐに否定する。


水晶は反応しなかった。

神殿の測定では、俺は無価値だ。


だが。


「じゃあ、これは何だ」


俺は、両手を見つめる。


傷だらけで、

何の力も持たない手。


だが、

今の現象を説明できるものが、

他に見当たらない。


立ち上がり、

再び歩き出す。


すると――


背後から、気配。


反射的に振り向く。


今度は、

昨日よりも大きな魔物だった。


二足歩行。

岩のような皮膚。

棍棒を持っている。


中位魔物――

この荒野でも、

単独で遭遇すれば危険な存在。


距離は、近い。


逃げる暇はない。


「……来るか」


俺は、身構えた。


武器はない。

だが、逃げ場もない。


魔物が、唸り声を上げる。


一歩。


また一歩。


そして――

棍棒を振り上げた。


「――っ!」


直撃。


避けきれなかった。


肩口に、

重い衝撃。


骨が砕けた――

そう思った瞬間。


世界が、揺れた。


吹き飛ばされ、

地面に叩きつけられる。


痛みが走る。

確かに、今度は――


「……死んだか?」


そう思った。


だが。


数秒後、

俺は――

起き上がっていた。


「……は?」


自分でも、声が出た。


肩を触る。


痛みはある。

だが、動く。


折れていない。


魔物は、俺を見て――

完全に動きを止めていた。


赤い目が、見開かれている。


「……?」


俺が一歩、踏み出す。


すると――


魔物は、

棍棒を取り落とした。


震えている。


唸り声が、

恐怖に変わったのが、

はっきり分かった。


次の瞬間。


魔物は、

背を向けて逃げた。


全力で。


昨日の狼と、同じだ。


俺は、その場に立ち尽くした。


肩の痛みは、

既に、ほとんど消えている。


「……死なない理由」


小さく、呟く。


分からない。

だが、一つだけ確信できる。


俺は、

この世界の“前提”から外れている。


加護値0。


それは、

無価値ではなかった。


“測定できない”というだけだ。


俺は、荒野の空を見上げた。


昨日と同じ空。


だが、

見え方が、少し変わった。


「……なるほどな」


理解は、まだ遠い。


だが、

恐怖は消えていた。


この世界で、

俺が生き残れない理由は――

どこにもない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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