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加護値0と断罪された俺、実は神の評価外でした 〜追放された王国が崩壊するまで〜  作者: 黒羽レイ


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44/44

第44話(最終話・エピローグ) 風景になる前に

季節が、ひとつ巡った。


空白地は、

相変わらず地図に載らない。


だが、

噂話としては

もう珍しくもなかった。


「数字を測られない場所」

「決めてくれない集落」

「楽ではないが、静かな土地」


評価は、

人によって違う。


それでよかった。


畑は、

以前より少し広がっている。


水路は、

ところどころ歪だ。


効率は良くない。

完成度も高くない。


それでも、

誰も直そうとはしない。


「今は、

これでいい」


そう言えるようになった。


焚き火は、

今日も小さい。


強くもなく、

弱すぎもしない。


誰かが薪を足し、

誰かが灰をならす。


特別な役割はない。


ただ、

消えない。


旅人が立ち寄り、

聞くことがある。


「……ここは、

誰が作ったんですか」


答えは、

まちまちだ。


「通りすがりだって」

「名前は、知らない」

「覚えるほどの人じゃない」


誰も、

困らない。


王国では、

数字が使われ続けている。


教会では、

加護が語られている。


世界は、

何も変わっていない。


それでいい。


ただ、

少しだけ扱いが変わった。


「絶対」

という言葉が、

減った。


空白地を、

真似しようとした場所もあった。


だが、

どこも同じにはならなかった。


誰かが立ち、

誰かが決め、

誰かが疲れた。


それもまた、

自然な結果だった。


丘の向こう。


一人の男が、

立ち止まる。


振り返らない。


もう、

確かめる必要がないからだ。


焚き火が燃えているかどうかを

気にしなくていい。


それは、

自分の役目ではない。


空白地は、

誰のものでもない。


だから、

残った。


名前を持たず、

正しさを掲げず、

答えを渡さず。


それでも、

選び続ける人がいる。


それだけで、

十分だった。


世界は、

今日も続いている。


静かに。

大きな音もなく。


物語は、

ここで終わる。


だが、

風景は続く。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


この作品は、

「勝つ話」でも

「復讐する話」でも

「正しさを証明する話」でもありません。


“決められなかった人間が、決めないまま世界を通り過ぎる話”でした。


主人公は、

誰かを救いません。

世界を変えません。

新しい制度も、教義も残しません。


ただ、

「答えを出さない」という選択を、

最後まで引き受けただけです。


多くの世界では、

決める人が強く、

決めない人は無責任とされます。


けれど現実では、

答えがないまま進まなければならない場面の方が多い。

そのとき私たちは、

誰かに決めてほしくなる。

正しいと言ってほしくなる。

責任を預けたくなる。


この物語で描きたかったのは、

その誘惑に抗うことの難しさと、

それでもなお「自分で選び続ける」という姿勢です。


空白地は理想郷ではありません。

効率も悪く、失敗も多い。

真似しようとすれば、たぶん上手くいかない。


だからこそ、

名前を残さず、

英雄も作らず、

正解も語られませんでした。


残ったのは、

誰かが選び、

誰かが迷い、

それでも続いていったという痕跡だけです。


主人公が去ったあとも、

世界は変わらず回り続けます。

数字も、制度も、裁定も消えません。


ただ、

「それだけではないかもしれない」という

小さな余白が、どこかに残った。


それで十分だと、

この物語は思っています。


もし読み終えたあとに、


正しさを誰かに預けていたこと


決められない自分を責めていたこと


何も残さない選択を、弱さだと思っていたこと


そんなものに、ほんの少しでも引っかかりを覚えたなら、

この物語は役目を果たせたのだと思います。


答えは、渡しません。

でも、考える時間だけは置いていきます。


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

またどこかの通り道で、別の物語としてお会いできたら幸いです。

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