第43話 崩れずに、離れる
会合は、静かに終わった。
怒鳴り声はない。
拍手もない。
ただ、
結論が出なかった。
代表の男は、最後まで立っていた。
「……制度にするなら、
責任を引き受ける者が
必要になる」
「だが、
それを俺一人に
背負わせるのは違う」
誰も、
異を唱えなかった。
異を唱えれば、
代わりに名乗る必要がある。
それを、
誰も望まなかった。
翌日から、
人の動きが変わった。
掲示板の前で、
立ち止まる者が減る。
相談所は、
開いているが
訪れる人は少ない。
「……もう、
相談する意味が
分からない」
そう呟く声が、
小さく落ちる。
集落を離れる者は、
少しずつ増えた。
集団ではない。
一人、また一人。
「……悪くはなかった」
そう言って、
去っていく。
恨みも、
怒りもない。
だが――
確信もない。
代表の男は、
引き留めなかった。
「……行くなら、
気をつけろ」
それだけ言う。
止めれば、
正しさになる。
彼は、
それを望まなかった。
相談役の中にも、
離れる者がいた。
「……支えるつもりが、
導いてしまった」
「それが、
間違いだとは
言えない」
「でも、
続けられない」
そう言って、
荷をまとめる。
数日後。
第三の集落は、
半分ほどの規模になった。
制度は、
正式には作られなかった。
代表職も、
解かれた。
残ったのは、
簡単な生活と
最低限の協力だけ。
それは、
空白地に近いが、同じではない。
理由は、
はっきりしていた。
ここには、
「支えようとした記憶」が
残っている。
それは、
消せない。
空白地。
焚き火の前で、
ユグが言う。
「……終わった、
って感じですね」
「終わったんじゃない」
俺は、
静かに答える。
「落ち着いただけだ」
「爆発しなかった」
「壊れなかった」
「それは、
悪くない」
ユグは、
少し考えてから
頷いた。
夜。
俺は、
一人で空を見上げる。
星は、
相変わらず
数えられない。
第三の集落は、
滅びなかった。
失敗もしなかった。
ただ、
大きくなれなかった。
それは、
この世界では
一つの勝利だ。
「……通りすがりで
いられたな」
小さく呟く。
関わりすぎなかった。
だが、
無関係でもなかった。
それで、
いい。
翌朝。
街道の向こうに、
新しい足音が聞こえた。
数ではない。
速さでもない。
迷いのない歩き方。
俺は、
その方向を見る。
次に来るのは、
助けを求める者ではない。
否定する者でもない。
理解した上で、
別の選択を持ってくる者だ。
物語は、
まだ続けられる。
だが、
ここで一度
区切ることもできる。
焚き火の火を、
少しだけ整えた。
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