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加護値0と断罪された俺、実は神の評価外でした 〜追放された王国が崩壊するまで〜  作者: 黒羽レイ


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第42話 限界の先に立つ者

代表に選ばれた男は、眠れていなかった。


夜明け前。

まだ人の動きが少ない時間。


彼は、集落の中央に立っていた。


地図。

配給表。

作業割り当て。


どれも、彼が最終確認したものだ。


「……間違ってはいない」


何度も、そう自分に言い聞かせる。


だが、

確信はない。


最初の異変は、昼前だった。


配給を受け取った男が、

顔を曇らせる。


「……少なくないか」


配給係は、困ったように答える。


「代表の判断です」


その一言で、会話は終わる。


誰も、責めない。


だが、

視線が残る。


午後。


相談役の一人が、

代表のもとを訪れた。


「……この割り振りですが」


「畑と水路の人手が、

少し足りません」


代表は、地図を見る。


「……では、

こちらを減らそう」


即断。


「その場合、

修理が遅れます」


代表は、

一瞬だけ眉をひそめる。


「……仕方ない」


その言葉は、

軽くはない。


だが、

繰り返される。


夕方。


代表のもとに、

人が集まり始める。


「……この判断、

本当に必要でしたか」


「他に、

やり方は」


責める声ではない。

問いだ。


だが、

数が増える。


代表は、

一つ一つ答える。


「今は、

これが最善だ」


「状況が、

そうだった」


「誰かを

優先したわけじゃない」


言葉は、

正しい。


だが、

疲労が滲む。


夜。


代表は、

一人で焚き火を見ていた。


「……誰かに、

代わってもらえたら」


その呟きは、

すぐに打ち消される。


「いや……

引き受けたのは、

自分だ」


誰も、強制していない。


自分で、

名乗った。


それが、

逃げ場を塞ぐ。


数日後。


小さな事故が起きた。


修理が遅れた水路が、

一部崩れた。


被害は、

軽微。


だが、

皆が知っている。


「……判断の結果だ」


誰かが、

そう言った。


責める調子ではない。


だが、

責任の矢印が、

はっきりと向いた。


代表は、

その場に立ち尽くす。


「……俺が、

決めた」


その言葉は、

初めてはっきりと口にされた。


夜更け。


代表は、

相談役たちを集めた。


「……限界だ」


沈黙。


誰も、

否定しない。


「善意だけじゃ、

足りない」


「決める以上、

正しさが必要になる」


「正しさが必要なら、

反対者が生まれる」


彼は、

静かに言葉を続ける。


「……俺は、

支えたかっただけだ」


「誰かの代わりに、

選びたくなかった」


「だが、

そうはいかなかった」


相談役の一人が、

小さく頷いた。


「……分かっていました」


「だから、

誰も名乗らなかった」


代表は、

苦く笑った。


その頃、空白地。


焚き火のそばで、

ユグが言う。


「……向こう、

大変そうですね」


「そうだな」


俺は、

それ以上何も言わない。


「……助けに行かないんですか」


「行かない」


即答だった。


「助けると、

代わりに背負うことになる」


「それは、

彼の選択を

奪う」


ユグは、

静かに頷いた。


第三の集落では、

次の会合が開かれていた。


代表は、

立ち上がる。


「……俺は、

引き受けきれなかった」


その言葉は、

重い。


誰も、

否定しない。


善意は、

限界に達した。


次に選ばれるのは、

制度か、分裂か。


どちらも、

もう後戻りはできない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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