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加護値0と断罪された俺、実は神の評価外でした 〜追放された王国が崩壊するまで〜  作者: 黒羽レイ


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第37話 選択を預ける人々

第三の集落は、賑わっていた。


人の出入りが多い。

相談所の前には、

いつも誰かが並んでいる。


「……これで、

間違いないですよね」


若い男が、

相談役に問いかける。


「ええ」


穏やかな笑顔。


「その選択は、

多くの人が選んでいます」


「失敗の例も、

少ない」


その言葉に、

男は安堵の息を吐いた。


「……じゃあ、

それで」


相談役は、

書板に印を付ける。


誰も命令していない。

だが、

選択は既に終わっている。


別の場所。


一人の女が、

荷を前に立ち尽くしていた。


「……迷ってる?」


声をかけられ、

女は小さく頷く。


「どちらを選んでも、

後悔しそうで」


「大丈夫」


相談役は、

落ち着いた声で言う。


「私たちが、

責任を分けます」


「一人で、

背負わなくていい」


女は、

涙ぐみながら笑った。


「……助かります」


その瞬間、

重さは女から離れた。


だが、

選択も一緒に離れた。


集落の掲示板には、

新しい紙が貼られていた。


推奨行動一覧


作物の選択。

仕事の割り振り。

移動の判断。


「必須ではありません」

そう書かれている。


だが、

多くの人が従う。


従う理由は、

単純だ。


失敗したくないから。


空白地。


噂は、

すぐに届いた。


「……あっちは、

楽そうですね」


誰かが、

ぽつりと言う。


「選択肢、

絞ってくれるらしい」


「相談役が、

一緒に考えてくれるって」


ユグが、

少し困った顔をする。


「……行きたい人、

いるかもしれませんね」


「行けばいい」


俺は、即答する。


「それも、

選択だ」


「……止めないんですね」


「止めたら、

正解になる」


俺は、

焚き火を見つめる。


「ここは、

正解を出さない場所だ」


第三の集落では、

小さな変化が起きていた。


相談役の顔が、

覚えられる。


「あの人に聞けば、

間違いない」


「前も、

助けてもらった」


助言は、

少しずつ強くなる。


「この選択は、

避けた方がいい」


「こちらが、

安全です」


否定ではない。

命令でもない。


だが、

流れは生まれる。


流れに逆らう者は、

自然と減っていく。


夜。


相談所の奥で、

相談役同士が話していた。


「……最近、

判断を委ねる人が増えました」


「いいことだ」


「混乱が減る」


「責任も、

分散される」


「……でも」


一人が、

小さく声を落とす。


「失敗した時、

誰の責任になります?」


沈黙。


やがて、

年長の相談役が答える。


「……皆で、

背負う」


その言葉は、

優しい。


だが――

曖昧だ。


空白地の夜は、

静かだった。


焚き火の前で、

ユグが言う。


「……あっちは、

悪いことしてないですよね」


「していない」


俺は、

正直に答える。


「だから、

厄介だ」


「支えることで、

選択を軽くしている」


「だが――」


少し間を置く。


「選択が軽くなりすぎると、

人は、

それを自分のものだと

思わなくなる」


星を見上げる。


「依存は、

善意から始まる」


「悪意より、

ずっと静かに」


俺は、

深く息を吐いた。


次に起きるのは、

争いでも、崩壊でもない。


責任の所在が、

消える。


それは、

世界を壊すには

十分すぎる歪みだ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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