表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
加護値0と断罪された俺、実は神の評価外でした 〜追放された王国が崩壊するまで〜  作者: 黒羽レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/42

第36話 もう一つの理想

噂は、静かに広がっていた。


王国でもなく、

空白地でもない。


第三の場所。


「自由を、

支援する集落」


そう呼ばれているらしい。


その集落は、

街道沿いにあった。


立地がいい。

人が集まりやすい。


看板も、

旗もある。


そこには、

はっきりとした言葉が書かれていた。


「選択を、一人に背負わせない」


通りがかった旅人は、

足を止める。


「……いい言葉だな」


そう呟き、

中に入っていく。


集落の中は、

整っていた。


簡易な規則。

共有の掲示板。

相談役の詰め所。


「迷ったら、

ここに来てください」


「選択の手助けをします」


穏やかな声。


強制はない。

命令もない。


だが、

“頼っていい”空気がある。


「……ここなら、

大丈夫そうだ」


そう思わせる何かがあった。


空白地にも、

噂は届いていた。


「……新しい集落、

知ってます?」


ユグが、

焚き火のそばで言う。


「聞いた」


「自由を、

支援するらしい」


「……どう思います?」


俺は、

すぐには答えない。


「……間違ってはいない」


しばらくして、

そう言った。


ユグが、

驚いた顔をする。


「え?」


「自由は、

重い」


「それを一人で背負えない人が、

いるのも事実だ」


「支える仕組み自体は、

悪くない」


だが――

言葉を続ける。


「問題は、

支える側が

何を持っているかだ」


数日後。


その集落から、

一人の使者が来た。


身なりは整い、

言葉遣いも丁寧。


「お話を、

伺えればと」


拒む理由はない。


焚き火の前で、

向かい合う。


「我々は、

自由を否定していません」


使者は、

静かに言った。


「ただ、

迷う人を放置しないだけです」


「選択は、

誰にとっても負担になります」


「だから、

支援が必要だと考えました」


「……支援とは」


俺が問う。


「経験者による助言」

「失敗時のフォロー」

「責任の分散」


一見、

非の打ち所がない。


「……空白地は、

厳しい」


使者は、

率直に言った。


「考えることを、

すべて個人に委ねる」


「それは、

強い人間にしか耐えられない」


ユグが、

息を呑む。


だが、

俺は否定しない。


「その通りだ」


使者は、

少し安堵したように頷く。


「だから――」


「違う」


俺は、

静かに言葉を切る。


「耐えられない者がいることと、

代わりに決めることは、

別だ」


使者の表情が、

わずかに硬くなる。


「我々は、

代わりに決めません」


「導くだけです」


「……導く、か」


俺は、

焚き火を見る。


「導きは、

責任を持つ」


「責任は、

正しさを必要とする」


「正しさは、

必ず序列を生む」


使者は、

反論しかけ――

口を閉じた。


「……あなたは、

何も決めない」


「何も背負わない」


「それは、

無責任では?」


その言葉は、

静かだが鋭い。


周囲が、

息を潜める。


俺は、

少しだけ考え――

答えた。


「背負わないんじゃない」


「背負わせない」


「間違える自由を、

奪わない」


沈黙。


使者は、

深く頭を下げた。


「……理解は、

できません」


「だが、

尊重します」


去り際、

一言だけ残す。


「それでも、

我々の方が

人は集まるでしょう」


俺は、

頷いた。


「だろうな」


夜。


焚き火の火が、

静かに揺れる。


「……負け、

じゃないですか」


ユグが、

小さく言う。


俺は、

首を横に振る。


「勝負してない」


「だが――」


空を見上げる。


「摩擦は、

生まれる」


理想が二つ並べば、

人は比べる。


比べれば、

どちらかに寄る。


それでも、

俺は動かない。


次に起きるのは、

争いではない。


依存だ。


そしてそれは、

見過ごせない形で

現れることになる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ