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加護値0と断罪された俺、実は神の評価外でした 〜追放された王国が崩壊するまで〜  作者: 黒羽レイ


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第30話 線を引く言葉

翌朝、焚き火の周りに集まる人数が増えていた。


誰かが呼んだわけではない。

だが、昨日の出来事は、確実に広がっている。


反・加護派が来たこと。

追い返されたこと。

そして――

**「ここには、条件があるらしい」**という噂。


俺は、焚き火の前に立った。


高台でもなければ、

中央でもない。


ただ、

人の視線が自然と集まる位置。


それが、すでに気に入らなかった。


「……集めるつもりはなかった」


最初に、そう言った。


誰も、笑わない。


「だが、

聞きたい者がいるなら、

言う」


一拍、置く。


「ここは、

救う場所じゃない」


「正しくなる場所でもない」


「王国より、

上等な場所でもない」


ざわりと、空気が揺れた。


期待を持って来た者ほど、

表情が硬くなる。


「ここで許されるのは、

一つだけだ」


俺は、ゆっくりと言葉を選ぶ。


「自分で選ぶこと」


誰かが、息を呑んだ。


「誰かに従うな」


「俺にも、

この場所にも」


「正しさを、

預けるな」


焚き火の音だけが響く。


「ここに残る条件を、

はっきりさせる」


「一つ」


指を一本立てる。


「他人を裁かない」


「数字であれ、

思想であれ」


「正しい、間違っている――

それを理由に

人を排除するな」


何人かが、視線を落とした。


「二つ」


指をもう一本。


「判断を放棄しない」


「考えずに従う者は、

ここに向いていない」


「迷うなら、

立ち止まれ」


「答えを欲しがるなら、

去れ」


空気が、少し張りつめる。


「三つ」


最後の指。


「ここを、

理想郷だと思うな」


はっきりと言い切った。


「ここは、

未完成だ」


「間違える」


「壊れる可能性もある」


「それでも、

選び続ける場所だ」


沈黙。


誰も、すぐには口を開かなかった。


やがて、

若い男が恐る恐る聞いた。


「……守れなかったら、

どうなるんですか」


俺は、

一瞬だけ目を閉じる。


「出ていってもらう」


ざわっと、声が漏れる。


だが、

それは怒号ではない。


理解しようとする音だ。


「罰は与えない」


「責めもしない」


「ただ、

ここには残れない」


それだけだ。


集まりは、

静かに解散した。


怒る者はいない。

だが、

数人はその日のうちに

荷をまとめた。


「……あっさりですね」


ユグが、ぽつりと呟く。


「縛ってないからな」


俺は答える。


「期待も、

保証も、

与えていない」


「だから、

去るのも自由だ」


夕方。


残った人間たちは、

少しだけ静かだった。


だが、

動きは変わらない。


畑を耕す。

水を引く。

火を守る。


誰かが命じなくても、

やるべきことは残る。


「……減りましたけど」


ユグが言う。


「楽になった」


即答だった。


人が多ければいいわけじゃない。


「考える人間が、

いればいい」


夜。


焚き火の火は、

少し小さくなった。


だが、

揺れは安定している。


誰かが、

小さく言った。


「……ここ、

厳しいですね」


俺は、少しだけ笑った。


「優しくはない」


「だが、

嘘はつかない」


空を見上げる。


星は、

今日も数えられない。


順位も、

評価もない。


だが、

確かにそこにある。


「……これでいい」


通りすがりでいるために、

線を引いた。


象徴にならないために、

拒む言葉を選んだ。


だが――

線を引いたということは、

越えようとする者も現れる。


次に来るのは、

「理解しない敵」ではない。


理解した上で、

踏み越えようとする者だ。


俺は、

焚き火の火を整えながら、

その気配を感じていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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