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加護値0と断罪された俺、実は神の評価外でした 〜追放された王国が崩壊するまで〜  作者: 黒羽レイ


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第28話 無価値の、その先で

数年が過ぎた。


王国は、まだ存在している。


城は立ち、

王は玉座に座り、

教会も祈りを続けている。


だが、

かつてのような確信は、

どこにもなかった。


加護測定は残っている。

数字も、記録も、儀式も。


だがそれは、

「絶対」ではなくなった。


「参考値」

「目安」

「傾向」


そんな言葉が、

公式文書に混じるようになった。


数値が高くても、

任されない役割がある。


数値が低くても、

外されない仕事がある。


誰も、声高には言わない。

だが、誰もが理解していた。


――数字は、世界を説明しきれない。


教会は、

教義を少しずつ書き換えた。


加護とは祝福ではなく、

「可能性の一側面」である、と。


責任を、

水晶に押し付けることが

できなくなったからだ。


北西。


王国の地図に載らない土地。


空白地と呼ばれていた場所は、

相変わらず、

特別な名前を持たなかった。


畑は耕され、

水は引かれ、

人は生きている。


役職も、

階級も、

加護値もない。


必要があれば動き、

向いていなければ代わる。


それだけの、

当たり前。


だが――

変化は、確かに起きていた。


「……最近、

人の来方が変わったな」


焚き火のそばで、

誰かがそう言った。


「前は、

行き場がない人ばっかりだったけど」


「今は……

期待して来る人が多い」


別の誰かが頷く。


「ここに来れば、

正しくなれるって顔してる」


その言葉に、

俺は炎から目を離さなかった。


期待。


それは、

数字よりも厄介なものだ。


ある日、

外から来た一団がいた。


彼らは、

王国を捨てたわけではない。


怒っているわけでも、

追放されたわけでもない。


ただ、

強い言葉を持っていた。


「加護は、

人を縛るための嘘だ」


「数字を信じる者は、

支配されている」


「加護を持つ者こそ、

問題なんだ」


――反・加護派。


彼らは、

王国を憎んでいた。


同時に、

空白地を

理想郷のように語っていた。


「ここは、

正しい場所だ」


「間違った世界から、

解放された土地だ」


その言葉を聞いたとき、

胸の奥に

冷たいものが落ちた。


「……違う」


小さく、呟く。


ここは、

正しさを証明する場所じゃない。


ましてや、

誰かを裁く場所でもない。


だが、

言葉は一人歩きする。


選べる場所は、

やがて

「選ばねばならない場所」に

変わってしまう。


夜。


焚き火のそばに、

一人の若者が座った。


目は真剣で、

声には期待が滲んでいる。


「……ここでは、

何を信じればいいんですか」


その問いは、

以前なら出なかった。


俺は、

少しだけ考えた。


そして答える。


「それを、

決め始めたら――」


焚き火の炎が、

一瞬大きく揺れた。


「ここは、

終わる」


若者は、

戸惑った顔をした。


「……じゃあ、

何も信じないんですか」


「違う」


俺は首を振る。


「自分で決めろ」


「誰かに預けるな」


「ここは、

答えを与える場所じゃない」


沈黙。


その言葉が、

重く落ちる。


若者は、

しばらく考え――

やがて、立ち上がった。


「……考えます」


そう言って、

焚き火から離れていく。


引き留める者はいない。


夜空を見上げる。


星は、

変わらずそこにある。


数えられず、

順位もつかない。


「……選ばせた結果、

選ばない者も生まれたか」


世界は、

単純にはならない。


管理を捨てれば、

自由だけが残るわけじゃない。


自由は、

時に暴力になる。


俺は、

静かに息を吐いた。


「……まだ、

終われないな」


通りすがりでいるには、

ここは少しだけ、

目立ちすぎた。


次は、

関わらないために

線を引く番だ。


支配しないために。

象徴にならないために。


選べる世界を、

壊さないために。


俺は、

焚き火の輪に戻る。


通りすがりのまま。


だが――

もう一度だけ、

足を止める覚悟で。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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これからもどうぞよろしくお願いします!

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