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加護値0と断罪された俺、実は神の評価外でした 〜追放された王国が崩壊するまで〜  作者: 黒羽レイ


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第20話 数字を持たない評価

朝、拠点に流れる空気が、少し変わっていた。


悪い意味ではない。

ただ、

“慣れ”が生まれ始めている。


人は、慣れると楽をしたくなる。

役割が固定されると、

それに甘えたくなる。


「……境目だな」


俺は、そう感じていた。


水場では、

昨日“水を見る人”になった年配の男が、

黙々と作業している。


火の管理をしている二人も、

息が合ってきた。


問題は、

周囲の見回りだ。


誰がやるか、

曖昧なままだった。


「……誰か、

周り見てきます?」


若い男が、

遠慮がちに言う。


「昨日、

俺やったから……」


別の男が、

言葉を濁す。


責任の押し付け合い、

というほどではない。


だが、

空白が生まれかけている。


俺は、

焚き火のそばから立ち上がった。


「……昨日、

一番早く異変に気づいたのは誰だ?」


皆が、

顔を見合わせる。


やがて、

一人の女が手を挙げた。


「……私です」


「音に、

ちょっと敏感で」


「……そうか」


それだけ言う。


「……じゃあ」


ユグが、

自然に続けた。


「見回りは、

この人中心で回そう」


「一人じゃなくて、

交代で」


女は、

少し戸惑ったあと、

小さく頷いた。


「……分かりました」


誰も、

加護値を聞かない。


剣の腕も、

魔法適性も、

関係ない。


事実だけが、評価になる。


俺は、

その流れを見て、

静かに納得していた。


これなら、

崩れにくい。


昼。


簡単な食事をしながら、

話題は自然と

“外の世界”に移る。


「……王国じゃ、

また測定が厳しくなってるらしい」


「加護が低いと、

仕事も減らされるって」


誰かが言う。


「……ここ、

数字ないのに」


ユグが、

ぽつりと呟いた。


「不安じゃないですか?」


「……評価、

されないって」


一瞬、

場が静まる。


俺は、

その言葉を否定しなかった。


代わりに、

問い返す。


「……昨日、

誰が一番助かった?」


皆が、

少し考える。


「……水の人」


「火を見てた二人」


「見回りの人も」


意見が、

重なる。


「……それが、

評価だ」


俺は、

そう言った。


「点数じゃない。

順位でもない」


「記憶に残るかどうかだ」


ユグが、

目を見開く。


「……忘れられなければ、

いい?」


「そうだ」


俺は、

頷いた。


「忘れられない行動をした人間は、

自然と、

次も頼られる」


「それが、

ここでの評価だ」


誰かが、

小さく息を吐いた。


「……楽、ですね」


その言葉に、

俺は少しだけ、笑った。


「楽じゃない」


「だが、

正直だ」


午後。


遠くに、

また人影が見えた。


今回は、

明らかに“様子見”だ。


近づいては来ない。


だが、

見ている。


「……噂、

広がってますね」


誰かが言う。


「“数字を聞かれない場所”」


その言葉に、

俺は内心で頷いた。


王国にとって、

それは危険な噂だ。


加護値社会の前提を、

根本から否定する。


「……いずれ、

測りに来る」


そう言うと、

皆が俺を見る。


「怖いですか?」


女が、

率直に聞いた。


「……怖い」


俺は、

正直に答えた。


「だが、

逃げない」


「数字を持たない評価は、

説明できない」


「説明できないものは、

否定される」


「それでも――」


焚き火を見る。


揺れる炎。


「ここで、

確かに生きている」


「それだけは、

消せない」


夕方。


拠点に戻ってきた見回り役が、

小さく報告する。


「……少し離れた丘に、

人が三人」


「観察してるだけ」


誰も、

慌てなかった。


武器を取る者もいない。


「……どうする?」


誰かが聞く。


俺は、

肩をすくめた。


「何もしない」


「見たいなら、

見させておけ」


「ここは、

隠す場所じゃない」


数字を持たない評価は、

隠れられない。


だが、

誤魔化す必要もない。


夜。


焚き火の周りに、

自然と人が集まる。


今日の出来事を、

それぞれが話す。


笑い声。


小さな不満。


だが、

誰も“格付け”しない。


俺は、

少し離れた場所で、

その様子を見ていた。


「……これが、

王国に見えたら」


恐怖だろう。


数字がない。

序列がない。

それでも、

秩序がある。


それは、

管理者にとって、

最も理解できない形だ。


そして。


理解できないものは、

必ず――

排除しに来る。


だが。


「……その時が来たら」


俺は、

静かに目を閉じた。


逃げない。


壊しもしない。


ただ、

ここに在り続ける。


それが、

最大の否定になる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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