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加護値0と断罪された俺、実は神の評価外でした 〜追放された王国が崩壊するまで〜  作者: 黒羽レイ


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第19話 最初の役割

朝、焚き火の周りに集まった人数は、十一人だった。


増え方は、急ではない。

だが、確実だ。


誰も大声を出さず、

誰も指示を待たない。


それなのに、

皆が何となく、

同じ方向を向いている。


「……水、

少し濁ってきましたね」


若い男が、

そう言った。


確かに、

昨日広げた水場は、

人が増えた分、

使われ方も変わっている。


「掘り直すか」


誰かが言う。


「いや、

石を足した方がいい」


別の誰かが返す。


自然と、

意見が出る。


だが――

まとまらない。


俺は、

少し離れたところで、

その様子を見ていた。


口を出すつもりはない。


だが、

放っておくつもりもない。


「……誰が、

水を見てた?」


俺がそう聞くと、

皆の動きが止まった。


一瞬、

戸惑い。


やがて、

年配の男が手を挙げる。


「昨日から、

俺が見てた」


「川沿いの仕事、

昔やってたから」


「……そうか」


俺は、

それだけ言った。


命令ではない。

指名でもない。


事実の確認だ。


「……じゃあ」


ユグが、

ゆっくりと口を開いた。


「水のことは、

この人に聞いた方がいい」


その言葉に、

皆が頷く。


誰かが決めたわけじゃない。


納得しただけだ。


年配の男は、

少し驚いたような顔をしてから、

照れたように笑った。


「……任せていいのか?」


「お願いします」


若い女が、

そう言った。


それだけで、

役割は決まった。


水を見る人。


評価も、

順位も、

報酬もない。


ただ、

必要だから。


「……次は、

火かな」


誰かが言う。


今度は、

自然と視線が集まる。


昨夜、

一番火の管理が上手かった女。


彼女は、

小さく首を振った。


「……得意なだけで、

責任って言われると、

ちょっと」


「……じゃあ」


別の男が言う。


「一人でやらなくていい。

二人で見よう」


「交代で」


彼女は、

少し考えてから、

頷いた。


「……それなら」


火を見る人。

二人。


決まった。


俺は、

そのやり取りを見て、

胸の奥が静かに熱くなるのを感じた。


これだ。


これが、

数字に縛られない役割。


強いから。

加護があるから。

偉いから。


そうじゃない。


「今、

必要だから」


それだけだ。


昼前。


作業が始まる。


水場の調整。

寝床の補強。

周囲の見回り。


誰も、

「自分は低ランクだから」

とは言わない。


言う必要がない。


役割は、

固定されない。


疲れたら交代する。

得意な者が前に出る。


「……楽ですね」


ユグが、

小声で言った。


「今まで、

何をするにも、

“向いてるか”

“加護が合ってるか”

って言われてた」


「……ここでは?」


俺が聞く。


「……やってみて、

駄目だったら、

次を探せばいい」


「それだけで、

いいんですよね」


俺は、

頷いた。


「それだけだ」


午後。


遠くで、

鳥が鳴いた。


魔物の声ではない。


小さな変化だが、

ここでは大きい。


「……生き物、

戻ってきてますね」


誰かが言う。


「……ああ」


俺は、

それを感じていた。


この場所は、

“安全だから”

人が集まっているんじゃない。


人が、

自然に振る舞えるから

集まっている。


だから、

世界も、

それを邪魔しない。


夕方。


焚き火の周りに、

皆が集まる。


今日の作業の話。

小さな失敗。

笑い声。


誰も、

上を見ない。


下も見ない。


ただ、

同じ高さにいる。


俺は、

その輪から少し離れて座り、

空を見上げた。


星が、

一つ、二つ。


「……始まったな」


小さく、

そう呟く。


これは、

集落でも、

組織でもない。


だが、

確かに――

世界の外側で動き始めたものだ。


そして、

王国が最も恐れるのは、

こういう“説明できない変化”だ。


数字で測れないもの。

序列を作れないもの。


それが、

静かに、

ここで育ち始めている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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