第13話 無価値の意味
朝日は、荒野を等しく照らしていた。
灰色の地面も、砕けた岩も、
追放者である俺も――
区別なく。
「……皮肉なものだな」
王国では、
人の価値は数字で決まる。
だが、
この荒野では、
そんなものは一切関係ない。
生きられるか。
死ぬか。
ただ、それだけだ。
俺は歩きながら、
「無価値」という言葉について考えていた。
無価値。
役に立たない。
不要。
排除すべき存在。
王国と教会は、
そう定義した。
だが。
「……本当にそうか?」
無価値とは、
何かの役に立たないことか?
それとも――
誰かの都合に合わないことか?
俺は、
足を止めた。
荒野の一角に、
枯れた木が立っている。
実を結ばない。
木材にもならない。
陰も作らない。
王国の基準なら、
即座に伐採対象だろう。
だが。
その根元には、
小さな草が生えていた。
風を防ぎ、
砂を止め、
わずかな水分を残す。
枯れ木は、
“役に立たない”わけじゃない。
ただ、
評価基準が違うだけだ。
「……そういうことか」
無価値とは、
価値がないのではない。
測る側にとって、
扱えないというだけ。
加護値。
数字。
それは、
価値の証明ではない。
価値を、
限定するための枠だ。
「0」
それは、
最低値ではない。
範囲外。
外側。
空白。
俺は、
そう定義し直した。
無価値=空白。
空白は、
何にもなれる。
同時に、
何にも縛られない。
だから――
危険なのだ。
管理できないから。
従わせられないから。
「……怖かったんだろうな」
王も。
教会も。
父も。
俺という存在が。
自分たちの“正しさ”が、
通用しない相手。
だから、
切り捨てた。
理解できないものを、
なかったことにする。
それが、
この世界の安定方法だ。
だが。
俺は、
その安定を壊す存在になった。
意図せず。
最初から。
「……だからといって」
拳を、
ぎゅっと握る。
「俺が、
誰かの敵になる理由はない」
復讐ではない。
憎しみでもない。
だが、
放置もしない。
無価値と断罪されたまま、
何も変わらない世界を、
黙って見過ごす気はない。
「……選ぶ必要があるな」
修正か。
破壊か。
その前に、
やることがある。
俺は、
荒野の先に見える
薄い煙に目を向けた。
村だ。
辺境の、
小さな集落。
王国の地図では、
ほとんど空白扱いの場所。
「……まずは、
人のいる場所だ」
世界を変える前に、
人を知る必要がある。
数字に縛られない人間が、
どう生きているのか。
加護を持たない者たちが、
どんな扱いを受けているのか。
俺は、
村へ向かって歩き出した。
背後で、
風が吹く。
だが、
もう寒くはなかった。
無価値。
その言葉は、
俺の中で、完全に意味を失っていた。
今の俺にとって、
それは――
最も自由な位置を示す言葉だった。
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