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2話ーどうしても消えない希死念慮

友達も出来て、みんな優しくしてくれるし、前の世界よりも良い生活が送れている。

だから、前の世界に戻りたいとは思わないが私はあの時、死ぬために電車に飛び込んだのだ。

だから、私は生きることについては、もう、飽きていたのであった。

だけど、そんなこと。

誰にも言えなかった。

今の私は電車は引き取ってくれたあの人に迷惑が掛かるから、生命は水に帰るべきと言う思想から、次点で水のあるところで死のうと水に入ろうとするが、どうしても、溺れる前に息が苦しくなって、水面に顔を出してしまい死にきれないのであった。

最後の最後で生存本能が働いてしまう自分に嫌気がさしていた。



次の日も何事もなかったように、学校で過ごした後、農業用水路へと寄り道をした。

靴を脱いで農業用水へ足を付けようとしたときだった。

学校でたまに話すようになった、姫野陽子と十島加奈子が来て声を掛けられた。

「そこで何をしているの…?由利さん…?」

私は「あんまりにも暑いから、水浴びをしようかと…」と嘘を言い取り繕う。

姫野陽子は「逆に寒くない?今年は冷夏だし…」と言う。

十島加奈子は「もしかして、死のうとしていた?私たち、心配になっちゃったので思わずついてきたの」と言う。

姫野陽子は「それは言わない約束だったでしょ?」と十島加奈子に言う。

私は二人のやりとりを見て笑ってしまった。

姫野陽子は私が歩道に置いた鞄を拾い上げて、私に靴を履くように促した。

十島加奈子は言う。「近くに夕日が綺麗な公園があるの?見に行かない?」

姫野陽子は言う。「その情報、聞いたことないわ?ね?由利さんも一緒に行きましょう?」

私は促されるまま、その公園へと来てしまった。

その公園は小高い丘に在って、たしかに夕日が綺麗な公園だった。

姫野陽子は言う。「なんで、あんな所にいたの?」

私はごまかそうと「あそこでの水浴びが趣味で…」と言う。

姫野陽子は「学校のプールにすら、入らない由利さんが水浴びが趣味な訳ないでしょ?本当は死のうとしていたのでしょ?悩みがあるなら、私たちに言って欲しいわ…」

私が言うかどうかを迷っていると、十島加奈子が「陽子は由利の事を本気で心配しているのよ…、学級委員の役割と言うより、すごく個人的にね…。由利さんいつも明るく振る舞うけれど…、どこか悩みを抱えている感じがするって言ってね?陽子の直感は大体当たるから…」と言う。

私は仕方ないので「こんな事を言って信じて貰えないかもしれないけれど…、前にいた世界で一回。死ぬために電車に電車に飛び込んで、気付いたらこっちの世界に居たの。だから、生きている。ということに、悩んでいて…。それで何とかこの生を終わらせるために、用水路に寄り道していたの」と正直に話した。

姫野陽子は笑顔で言う。「あの用水路で私は一回、死にかけたのよね。そんなに死にたいなら、一回、死んでみたら?」

十島加奈子は「陽子、せっかく、打ち明けてくれたのに、そんなひどいこと言わないの」と言う。

姫野陽子は「ごめんなさい…、そういう悩みだとは思わなかったから…」と冷静さを取り戻したようだった。

私は「もしかして、あの用水に錘をつけて沈めてくれるの?」と言う。

姫野陽子は「自殺幇助で人生を棒に振りたくはないわ…」と言う。

十島加奈子は言う。「下手したら、殺人罪に問われるかもしれないからねぇ」

私が残念そうな顔をしているのを見抜いたのか、「せっかく、話す友達が増えたのに、居なくなったら、寂しいでしょ?一人、欠けるとあなたが思っている以上に、友達は悲しむのよ?」と姫野陽子は言った。


その一件以来、十島加奈子と姫野陽子は事あるごとに、私をつけて寄り道をしてないかを、確認するようになった。

私は、姫野陽子に聞く。「なんで、私にそんなに死なれたくないの?」

姫野陽子は「うーん、友達だから?」と答える。

私は内心、(前の世界でも友達だと思っていた人に裏切られ、恋人にも裏切られて、それもあって余計に死のうとしたのよね…。)と思っていた。

その時、姫野陽子は言う。「そう言えば、こっちの世界でラジオは聞いた?」

私は「別に興味無いし、聞いていない」と答えた。

姫野陽子は「この世界って言うか、こっちの世界には二つのラジオがあって、一つは魔法で暗号化されたラジオ。主に魔法界っていう魔法を使う人たちが暮らす世界で域内の通信や、こっちの通称一般界への富裕層向けプロパガンダ放送もそれでやっているわ。もう一つは魔法で暗号化されていない、普通のラジオ。どっちも番組内容としては面白いから、聞いてみると良いよ」と言う。

私は前の世界ではちょっとラジオを聞いていたので「それって、AMとかFMとかはあるの?」と聞いていた。

姫野陽子は「FMは暗号化にスゴく魔力を使うので、超巨大魔法石が必要で、魔法界でも断念したらしいの。だから、中波のMWか短波のSW。そのあたりのAMラジオだと魔法で暗号化された局もあれば、そうでない局もある。だけど、魔法界の暗号化ラジオの重鎮、魔法界の声放送も、深夜だけは魔法で暗号化されたラジオを放送しているけれど、魔法で暗号化されたラジオ局は、そう遠くない将来には無くなってしまうの。なくなる前に聞いてみない?」と私にぐいと迫る。

私は圧に負けて、「わかったわ…、今度、一緒に」と言ってしまう。

姫野陽子は「やった!!」と今までに無い笑顔を見せた。


そして、次の日の夜10:00。

私は姫野陽子にビルの屋上へと呼び出された。

姫野陽子は持ってきた自前のラジオを見せてくれた。

私が初めてこっちの世界に来たときに見た窓辺に置いてあったラジオのようなアンテナの付いたラジオにしては大きい謎のモノは、魔法ラジオというものだったらしい。

姫野陽子は言う。「もう、このラジオ。一般界にあった唯一の修理工房が無くなってしまったの。だから、もう誰も直せないの。魔法界では直せると思うかもしれないけど、魔法界ではもっと直せないの。技術的知見が一般界との戦争で焼けた上に、技術者も多くが戦死したわ。それで、直せる技術者がもう、どこにもいないの」

私は、アレがそんな希少なラジオだったとは思いもしなかった。

暗号化放送の開始時刻、11:00になった。

そして、姫野陽子は魔法暗号化ラジオ受信モードにした上で短波へとスイッチを切り替えて、魔法界の声放送へと周波数を合わしてくれた。


姫野陽子はその状態で魔法復号モードをオフにした。

すると、たちまちラジオはザーッという雑音しか発しなくなった。

姫野陽子は再び魔法復号モードをオンにする。

すると、そこそこクリアに声が聞こえる。

私はこっちの世界での親の代わりである、

東嗣治から魔法はモノに込めて有効活用する方法がある。

それが魔法石だ。と聞いていた。

私は姫野陽子に訊く。「魔法ラジオって魔法石が入っているの?」

姫野陽子は言う。「なんで知っているの?」

私は「父から、私に魔法の素質があるって気づいてから、色々と魔法について教育をしてくれて…、宝石に弱い魔法なら入れた事があるの」と言う。

姫野陽子は「そうなんだ…。魔法と科学は近しい存在らしく、小さいサイズの石は多くの魔法をため込みにくいらしいの。なので魔法ラジオの魔法石は大きければ大きいほど良い。小さいサイズの石の多く魔法を込めようとすると、割れたり不安定化するらしいの」

私はストラップにした小さな宝石を姫野陽子に渡して言う。

「これあげる。お守りの魔法が入っているの」

姫野陽子は言う。

「ありがとう。お礼に今度、一緒に一般界にある魔法界向けのプロパガンダ放送をしていた放送設備のアンテナの廃墟を見に行かない?大きなルビーの魔法石が据えられているの、由利さんに一度見せたいの」

後ろから声が聞こえて「陽子が見たいだけでしょ?」

振り返ると。十島加奈子がいた。

十島加奈子は言う。「二人とも、遅くに抜け出して親たちが心配をしているから、帰りますよ?」

私たちは各々迎えに来た両親の車に乗って帰ることになった。

その前にエレベーターの中で姫野陽子が言っていた。

「魔法界では最初魔法石はダイヤモンドだったの。ルビーより性能が良かったから、魔法耐性も魔法保持力もダイヤモンドの方が一枚上手だったの。だけど、ルビーの方が多く取れて、安価に魔法石を作るなら、ルビーだったの。だから、巨大ルビー魔法石は妥協の産物だったの。最も一般界の技術者達はダイヤモンドに魔法を込める為の知見が無かったのと、ルビー魔法石も色々なモノに使われて信頼性を得たっていう点も、一般界側が巨大ルビー魔法石を送信機に使ったっていう理由だけど、魔法界の声放送は昔に作った巨大ダイヤモンド魔法石を未だに使っているらしいから、いつか見られるものならば見てみたいの」

そう、熱く語ってくれた。

私には、あそこまで熱くなれる趣味があるのはうらやましいと感じた。


その後、学校に行くと姫野陽子は私に積極的にラジオの話をしてくれるようになった。

私は放課後、十島加奈子に学校裏手の人気無いところに呼び出された。

十島加奈子は言う。「由利さんって魔法が使えるの?」

私は「少しだけ…、私もまだまだ勉強中で父ほどは上手く使いこなせないけれど…」

十島加奈子は「前の世界でも魔法は使えたの?」と訊いてきた。

私は「前の世界には魔法というモノが一般的ではなくて、少なくとも私の周りではね。その上、私も普通の人間だったから、魔法は使えなかったわ」と答えた。

十島加奈子は「そうなのね…」と言う。

私は「だから、今こうして私は父に教わりながら魔法の腕を磨いているの。父には魔法は人を助けてこそ、魔法だ。と言われているから」と言った。

その後、十島加奈子は姫野陽子に呼び出されて、私に「ごめんね…」と言って、その前から立ち去った。


私はこっそり十島加奈子の後をつけた。

姫野陽子は言う。「由利さんはね。私も心配しているけど、あんまりここで根掘り葉掘り聞かないであげて?」

十島加奈子は「何故よ。疑問に思ったことを本人に訊いて何が悪いの?」と言う。

姫野陽子は「この学校であった事件を覚えていないの?」

十島加奈子は「魔法至上主義者の学生の事件だっけ?あまり覚えていないわ」と言う。

姫野陽子は「そういう事もあって、魔法の印象がこの学校ではすごく悪いの。だから、魔法については学校では訊かない。わかった?」と言う。

十島加奈子はふてくされた感じで「わかった…」と言う。

姫野陽子は私に気づいて「由利さん」と声を掛ける。

私は「はい」と答えて、隠れていた場所から出た。

そして、姫野陽子は念を押すように「さっきの話、聞いていたと思うけれど、この学校は過去の事件の所為で魔法に対する印象が悪いから、魔法の話は学校ではNGだから。気をつけて」と言う。

私は「わかりました…」と答えた。

姫野陽子は「私的には、話してわかる由利ちゃんのような子とは、もっと仲良くしたいわ」とボソリと呟いた。

次の日から私はドキドキしながら、学校へ行くが、姫野陽子も十島加奈子もいつも通り接してくれたおかげで、何事も無さそうだった。

他の子は気づいていなさそう、というか、私から話しかける事も無ければ、話し掛けられることも稀であったから、ほぼ問題は無かった。

私は帰り道、再び、農業用水路へと足を運んでいた。

後ろから声が聞こえた。「デジャヴね…」

後ろには姫野陽子と十島加奈子がいた。

私は「私の存在が学校で浮いている気がしてね」と言う。

姫野陽子は「死にたいのかもしれないけれど、せっかくこっちへ流れる事が出来たのだから、せめて生きて…。」

私は「でも…」と言う。

姫野陽子は「私は、あなたに生きていて欲しい。私のためにも生きて」と言う。

十島加奈子は少し、はにかみながら、「まるでプロポーズね」と言う。

私は靴を脱いで、用水路に足を入れようとする。

姫野陽子は私の手を引き、強引に引き上げる。

私は「何をするの!?」と抗議をする。

姫野陽子は私に靴を履くように促し、私の手を引いて、また何処かへと向けて歩き出した。

そこは喫茶店だった。

十島加奈子は言う。「本当は寄り道はダメなんだけどねぇ、でも由利ちゃんが死んでしまいそうだったから、今回は私も見なかったことにするわ」

姫野陽子は「ここの魔王山ケーキはおいしいから、一回食べてみて?」と言い、ウェイトレスのお姉さんに姫野陽子は魔王山ケーキを三つ頼んだ。

私は訊ねる。「魔王山ケーキって何のケーキ?」

姫野陽子は言う。「魔法界にある神話時代、魔王が住んだという伝説のある山でね?それをモチーフにしたケーキだよ」

ウェイトレスのお姉さんは魔王山ケーキを三つをお盆に入れて持ってきた。

私はそれ見て、驚いた。

それはまるでモンブランであったからである。

私は言う。「これは紅芋のモンブラン…」

姫野陽子は「モンブランって何?向こうの世界にあるケーキ?」と言う。

私は「部分的にはそうなの」と答える。

十島加奈子は引っかかったようで「部分的にって何?」と聞いてきた。

私は「私の居た世界のモンブランはケーキでもあるのですが、そのケーキは、スイスという外国の山をモチーフにしたケーキで…」

姫野陽子は「そうだったのね。一般界だとこういう感じのケーキは魔王山ケーキという名前で売っているわ、まさか、異世界ではモンブランって名前だったなんてカルチャーショックだわ…。でも、モンブランって響き。かっこいいわね」と言って、目を輝かせて私の方を見た。

十島加奈子は言う。「向こうの世界でも地理とかに詳しかったの?」

私は「少しだけ…」と答えた。

姫野陽子は言う。「こういうときに、少しっていう子は、絶対に結構詳しいの。私、知ってるんだから」

十島加奈子も「そうね、時には謙遜も大切だけど…、由利ちゃんにはもっと自分の好きなことをさらけ出して欲しいの」と言う。

私はこの世界の電車や車の見た目が古めかしくて、自分の好みであったが、それを言うか、迷っていたら、姫野陽子が「何か、考えている?ちょっと言ってみてよ」と言う。

私は転移したときに連れてきたスマートフォンを出して、画像を見せる。

そして私は言う。「向こうの世界の車と電車だけど、こういう見た目でこっちの世界の車は見た目がレトロで私が好きな世界なの。車名とか結構違うけれど、でも私はこっちの方が好きなの」

姫野陽子は「すごく未来的な見た目ね。こういう車が出たら、飛ぶように売れそうだから、この画像は、誰にも見せないようにした方がいいわ」と言う。

十島加奈子も「そうね。この世界では、こういう車は魅力的に見えるわ…。私もこういう車に乗りたいって感じてしまったわ」と言った。

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